FCバルセロナが試算したコロナ禍の影響

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FCバルセロナアニュアルレポート

アニュアルレポートというものがあります。これは、年次報告書のことで、企業がいわゆるディスクロージャー(情報公開)の観点から、任意で発行している株主や金融機関などの関係先に年度末に配布する、経営内容についての総合的な情報を掲載した冊子を指します。
大企業においては一般的な開示資料ですが、欧州クラブではこのアニュアルレポートを発行しているクラブが結構あります。バルセロナもそのうちの一つです。
このレポートの一部で、コロナ禍がどのように財務的に影響したのかを取りまとめていますので、ご紹介させていただきます。
スペインでは、2020年3月14日に緊急事態宣言が発令され、各種プロスポーツは活動停止となりました。そして、2020年6月11日に再開しました。
しかしながら、再開したリーグは無観客試合。入場料、グッズ販売は落ち込みました。そして、初めて知りましたが、FCバルセロナはバスケットボールチームを所有しており、ユーロリーグバスケットボールが中止になったため、関連する損失が発生しました。そんな状況を踏まえた上での話として以下、進めさせて頂きます。
早速、最新の数値である2020年の損益をみてみましょう
FCバルセロナ 2020年9月期 損益計算書とコロナの影響まとめ

収入

売上(収入)は1,112億円で、前期比19%減となりました。ちなみに、1,112億円はJリーグとの比較でいうと、神戸の10倍くらいです。
当年度は、リーガ及びチャンピオンズリーグのスケジュール延期により、通常では会計年度内に終了するはずの大会が一部、翌会計年度(20/21シーズン)に計上されることとなりました。
入場料収入については、210億円となりました。コロナ禍がなかった場合との比較では、88億円の減収(29%)です。主にシーズンチケットの払い戻し、その他チケット販売収入、そして博物館、ホスピタリティ分野、イベントでの収入がなかったことが要因です。
放映権等の収入は323億円となり、影響額は46億円で通常の想定と比べ12%の減収となりました。本収入については、個人的には日本でDAZNと発生したように、コロナ禍を理由とした契約条件変更等を想定していましたが、減った理由は翌期に持ち越しということのようです。
販売等の商業収入は386億円となりました。コロナ禍による影響額は94億円と20%の減収です。コロナ禍前に交渉していた契約がなくなってしまったこと、及びファンショップでの販売機会逸失が要因です。
その他については、シーズン終了後に予定していた選手の移籍ができなかったためです。

支出

支出については、ありとあらゆる費用の削減に取り組んだようです。選手とは年俸カットの合意、スタッフについては、一時解雇などに取り組みました。しかしながら、選手人件費は約827億円と、コロナ禍がなかった場合と比べ6%の減少、その他人件費については、約66億円と同3%減少となりました。その他、ソシオ費用、リーガへのテレビ放映費用、維持管理、クリーニング費用、旅費など、ありとあらゆるコスト削減に取り組んだものの、支出全体としては、約1,242億円と、当初コロナがなかった場合の見通しと比べ、7%減少にとどまりました。

2020/6期末の財務状況

2020/6期末の貸借対照表をみてみます。
2020/6期 FCバルセロナ貸借対照表(単位:百万円)
記事等で、バルセロナの負債による財務状況の危機が話題になっていたので、2020/6期末のFCバルセロナの貸借対照表をみてみます。
最も重要なポイントとして、財務状況が悪い企業でも、最悪、支払の現金さえあれば生き残れます。しかしながら、このいわゆる資金繰りの状況は外部の人間にはわかりません。このため、開示された情報をまとめると上図の通りなのですが、印象としては①資金調達の期間のバランスは悪くはない、②財務状況は脆弱、というところでしょうか。
①については、選手の無形資産を流動資産としてみなした場合、固定長期適合率は210%で問題ありません。これは、長期で支払を要する資産の入手のために、借り換え等の必要性があって、かつ必ずしも最後の支払まで賄えるかわからない流動負債を原資としていないということです。②財務状況が脆弱というのは、自己資本比率が2%であるということです。ちなみに最新の2019シーズン末のJ1の平均自己資本比率は35%2%という水準は、20億円の赤字を出したサガン鳥栖と同じ水準です。
今期は127億円の赤字を出しましたが、今シーズンに46億円の赤字を出すと、債務超過になります。

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