湘南ベルマーレ:RIZAPは非中核事業として整理。どこかのタイミングで売却か?

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湘南ベルマーレ子会社化当初の構想

そもそもRIZAPグループは湘南ベルマーレを子会社してどのようにしていこうとしたのか。Yahooによる「湘南のRIZAP資金10億円の使い方」という記事にてわかりやすく説明してくれています。
RIZAPグループは半年間でベルマーレをどのように変えたのか。あるいは、これから変えていこうとしているのか。
 瀬戸社長は、4月の段階で、今後の3年間で10億円以上を投資すると明言。その上で2020年までに[1]J1、天皇杯、YBCルヴァンカップのいずれかのタイトルを獲得する[2]スタジアムの収容率をナンバーワンにする――約束をベルマーレ側と交わしている。
 今回のルヴァンカップ初制覇は[1]を2年前倒しにする形で成就させたことになるが、10億円の一部が使われたわけではない。
まずは、所属選手の平均年棒を最低でもJ1の平均よりも上げることだ。
 もうひとつの使途は、ベルマーレのアイデンティティーとして死守してきた育成組織のさらなる発展だ。
なお、会社側も決算説明会資料で以下のように説明しています。
(出所:全て2018年3月期決算説明会資料)
結構壮大な話です。夢がありますね。
この大風呂敷の確認ポイントはいくつもありますが、財務諸表関連に絞って検証したく、①10億円の投資と②平均年俸を最低でもJ1の平均よりも上げること、を確認してみます。他にも最新テクノロジーが使われているのかとか、ファンサービスが拡大しているのかとか、新スタジアムがどうとか、スタジアム収容率がどうとか、いっぱいツッコミどころがあるのですが、そこに絞ります。

RIZAPグループは湘南ベルマーレに10億円の投資を行ったのか?

記事にも決算説明会でも謳われた10億円の投資について確認するため、資本金の数字を見てみましょう。
RAZAPグループ連結財務諸表資本の部推移まとめ
(出所:有価証券報告書から筆者作成)
資本金及び資本準備金等については、RIZAPが子会社化した2019年3月期に資本金が51百万円、資本準備金が50百万円増えました。これがRIZAPが湘南ベルマーレを子会社化した際に増えたものと思われます(
それ以外に貸借対照表上では湘南ベルマーレに投資が行われた形跡は確認できません。
また、クラブに対する資金供給として、出資ではない方法もないではありません。例えば2020年12期及び2021年12月期のヴィッセル神戸はそれぞれ、5,131百万円、3,138百万円の営業赤字を計上しています。しかし、特別利益でそれぞれ5,250百万円、3,300百万円を計上しています。広告収入以外の何かしらの形で楽天から資金を受けたとみられます。Wikipediaで確認する限り、RIZAPは湘南ベルマーレに2018シーズンから鎖骨スポンサーとして広告を掲出している模様です。鎖骨スポンサーの料金は、例えば川崎フロンターレで1000万円としていますから、両チームのクラブの状況を比較しても多くともそれくらいでしょう。ということは、RIZAPから湘南ベルマーレへの資金供給は今期含めても5,000万円もいっていないくらいです。

所属選手の平均年棒を最低でもJ1の平均よりも上げることはできたのか?

もう一つは「所属選手の平均年棒を最低でもJ1の平均よりも上げること」としています。Jリーグクラブの損益計算書の「チーム人件費」は「①選手報酬(基本給)、②選手報酬(成果給)、③監督・スタッフ報酬、④移籍金償却費、⑤支度金、⑥その他(雑給、福利厚生)※ユース、女子チーム含める」とされていることから、正確な一人あたり平均年俸を割り出すことはできませんが、一応湘南ベルマーレの人件費総額の推移を見ています。
湘南ベルマーレ人件費推移
RIZAP子会社化後の2018シーズンからチーム人件費は大きく上昇しています。ひょっとしたらRAIZAPグループの打ち出した方針の反映ではないかもしれません(2018シーズンのチーム人件費はRIZAPグループ子会社化の前に当期人件費は設定されていたはずなので異なる可能性はあります)。
J1チーム過去3シーズン人件費推移
一方、他のクラブとの比較ではJ1下位、しかもボトム3に留まっています。総合的に推察すると、人件費総額がボトム3にある状況では、クラブの人員数をよっぽど少なくしない限り所属選手の平均年棒がJ1の平均に達することはないでしょう。
なお、RIZAPによる子会社後のルヴァンカップ優勝はRIZAPによる施策とは別の要因による優勝でしょう(あれから杉岡選手の活躍がなかなかみられないのが残念です)。
以上より、私が調べる限りではRIZAPによる子会社化による明確な効果は見て取れません。
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湘南ベルマーレの位置付けは「ヘルスケア・美容セグメント事業」から「インベストメント事業」へ

それでは、RIZAPグループが一応正常運転になりかけている中で、湘南ベルマーレとの関わりはどうなって行くのか。
有価証券報告書の開示内容がそれを示唆しているとみられます。
下図は2019年3月期と2021年3月期のセグメントの説明図の比較です。
RIZAPグループ有価証券報告書における2019年3月期と2021年3月期のセグメントの説明の比較
(出所:有価証券報告書を筆者が加工)
2021年3月期に湘南ベルマーレはヘルスケア・美容セグメントからインベストメントセグメントに移動しました。
これはどういうことかというと、まずRIZAPグループは事業の仕切り直しを行い、①ヘルスケア・美容、②ライフスタイル、③プラットフォームの3セグメントから①ヘルスケア・美容、②ライフスタイル、③インベストセグメントに変更しました。それでは、唯一変更によって生まれたそのインベストメントセグメントとは何かということですが、決算説明会にて個人株主からの質問があり、以下の通り質疑がなされました。
司会:続いても、個人株主さまからのご質問を読み上げさせていただきます。
インベスト事業とはどういう事業なのでしょうか、インベストメント事業に分類されている夢展望、堀田丸正、SD エンターテイメントの 3 社は、今後どのような方向性でグループ内にとどめるのかを伺いたいです。というご質問をいただいております。
瀬戸社長、お願いいたします。
瀬戸:ありがとうございます。インベストメント事業としては、くくりとして小売、ライフスタイルのところは小売を中心としたライフスタイルが中心ですが、ある意味それ以外のセグメント、われわれが今後シナジーを含めて、どう実現していくかというところを今現在検証中というか、そういった領域にはなります。
個別の価値を、夢展望ではアパレル、堀田丸正も糸から素材から、アパレルの素材から作っている会社です。撚糸というところです。SD エンターテイメントは幼児の教育であったり、そういった保育事業を行っている会社でございます。
こちらも一つ一つ、今期、改革、収益構造の改善も今現在行っておりますし、またその中で新しい価値創出というのは、今期お見せできてくると思いますので、そこは今期しっかりとお見せしたい
と。ただ、これももちろんですけれども、やはり踏み込んで撤退から、含めて、店舗も閉めるであったり、事業をやめるとかそういったことも含めて、しっかりと検証はしていきたいと考えております。
ありがとうございました。
このぼんやりしたインベストメント事業セグメントに、湘南ベルマーレは2021年度に整理されました。
今後、2022年3月期決算説明会では、8月中旬に中期経営計画が発表されると説明がありました。中期経営計画資料において、湘南ベルマーレの整理されたインベストメント事業セグメントの方針が示されるはずですので、注目したいところです。
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売却先の考え方

前回の投稿では、三栄建築設計が改めて湘南ベルマーレ株を買い取る可能性にも触れましたが、あくまでも他に買い取り手がいない緊急時に限るという見解です。そうでなければそもそもRIZAPに売却しません。一定の財政状況の回復により少なくとも寿命が長引いた経営状況を踏まえ、RIZAPグループは時間をかけながら湘南ベルマーレの売却先を探っていくものと考えます。
ただし、今のご時世でJリーグクラブを買収することは一種の娯楽に近いものがあります。そうした余裕がある企業は恐らく限定されます。
結局は泡銭が手元に残りやすく、BtoCに訴求効果を見込むネット関連に落ち着くのではないかと推察しています。

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