2022カタールワールドカップ KPMGがまとめたお金・選手・クラブ・代表に関わる各種データ

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選手・クラブ等の経済的な視点からカタール・ワールドカップを振り返る

KPMGが2022年11月に「A WORLD CUP OF FIRSTS」というレポートをまとめておりまして、そこからデータを拝借して内容を紹介させていただきます。当該レポートはワールドカップ開催前に書かれたものなので、終了後の今になって、それらのデータが成績にどう連携しているのかという答え合わせが出来ます。

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準備期間は大幅減、リカバリー期間も大幅減

今回のワールドカップは、ワールドカップが欧州のクラブシーズンの真っ只中に開催されるという異例なタイミングとなりました。他のワールドカップとカタール・ワールドカップ を比較すると、準備日数や回復日数が大幅に減少しました。例えば、カタール・ワールドカップより前の大会のプレミアリーグ後の平均準備日数やリカバリー日数はそれぞれ32日と37日でした。これに対し、今回の大会について、ワールドカップ前の最後のプレミアリーグの試合は、ワールドカップのキックオフの7日前に行われました。そして、プレミアリーグの再開はW杯の決勝戦からわずか8日後です。それぞれ1/4以下です。

図にしてみると、そのイメージがよく分かります。

ワールドカップ準備期間・リカバリー期間(プレミアリーグ基準)

(出所:KPMG)
左側の青い帯がプレミアリーグを終えてからのワールドカップまでの準備日数、右側の緑の帯がワールドカップを終えてからの最初のプレミアリーグの試合までの日数です。
FIFAのお偉いからカタールでワールドカップを開催することは間違いだったと開催前にコメントが報じられたりもしましたが、選手への負担という観点で注目されて良いポイントだと思います。
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ランキングから世代交代をみる

KPMGは選手の世代交代を選手の市場価値(サラリー)とインスタグラムのフォロワーでランキングを比較しています。これは、市場価値→新世代選手の評価、インスタグラムフォロワー数→旧世代の選手の評価として比較しています。
まず、新世代のほうの市場価値ランキングからです。
カタール・ワールドカップ出場選手市場価値ランキング
(出所:KPMG資料を当ブログ加工)
エムバペがトップなのはわかりますが、約300億円ですか。すごいです。これが本当の価値なのか、はたまたバブルなのか、のちの歴史が証明するでしょう。なお、巨大なファンを誇るカリスマ(インスタフォロワー数)が、市場価値のランキングに入っていないのは、そのほとんどが年齢によるものとKPMGは記しています。
カタール・ワールドカップ出場選手インスタグラム・フォロワー数ランキング
(出所:KPMG資料を当ブログ加工)
旧世代のランキングと位置付けられるインスタフォロワー数です。リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドは、Instagramのフォロワーそれぞれ5億人、4億人ととんでもないです。市場価値のランキングと両方のリストに存在する唯一の選手は、推定市場価値が最も高く(2億2300万ユーロ)、Instagramのフォロワー数が7300万人を超えるエムバペです。

国別選手の市場価値ランキング

カタール・ワールドカップ出場国市場価値合計ランキング
(出所:KPMG資料を当ブログ加工)
代表チームの市場価値の合計でみると、イングランドが14億ユーロ(約1,860億円)で、この指標を含む国の中でトップであることがわかります。これは、現世界チャンピオンであるフランスよりも1億ユーロ(約130億円)多い金額です。大会の優勝候補と目されているブラジルは3位で、その他10億ユーロの(1,300億円)大台に乗ったのはポルトガルだけです。2010年代のFIFAワールドカップを2度制したスペインとドイツが、それぞれ9億8400万ユーロ(約1,280億円)、9億6200万ユーロ(約1,250億円)で僅差で続いています。ヨーロッパのクラブが多数を占めています。10チームのうち、7チームが欧州のクラブで、他の大陸から選出されたのは南米からの3チームでした。KPMGの見解では、欧州のクラブが「有利」という書き振りですが、欧州内も含め各国の物価も大きく手伝っている気がします。
カタール・ワールドカップ出場国成績
(出所:テレビ東京サイト)
上表はカタール・ワールドカップの成績です。トップ10にクロアチア、モロッコ、日本、セネガルが入っているところを見ると、給料の額だけでワールドカップ結果に直結するとは言えません。しかしながら、ボトム10に市場価値上位のチームは入っていませんので、成績との相関関係はその程度であればありそうです。

選手を派遣しているリーグ

ヨーロッパのトップクラブの優位性は、プレーするリーグで分類するとより顕著になります。ワールドカップ登録メンバー831人のうち、5大リーグのクラブは418人を派遣しており、全体の50%強を占めています。
カタール・ワールドカップ5大リーグとそれ以外のリーグの派遣選手数
(出所:KPMG)
カタール・ワールドカップ5大リーグ出場国別派遣選手数
(出所:KPMG)
さらにエリートクラブに焦点を絞るとUEFAチャンピオンズリーグのベスト16に勝ち残ったクラブは は151人を派遣しており、これはワールドカップ総数の18%にあたります。KPMGはこの数値を5大リーグの大きな影響力として記しています。とはいえ、個人的な印象としては、5大リーグでプレーする選手は多くの国から集まっていることを考えると、「多いな」という肌感覚はありません。特に今の欧州でプレーしてなんぼの日本代表をみている素人の私にとっては、「5大リーグでプレーしない選手の比率は50%にも及ぶ」という結果に、コップの中に「半分しか」残っていないのか、「半分も」残っているのかの議論なのだとは思います。
選手の市場価値でみてみると、5大リーグを合わせて120億ユーロ(約1兆8,000億円)以上になります。

派遣している選手の数

カタール・ワールドカップクラブ別派遣選手数ランキング
(出所:KPMG資料を当ブログ加工)
FIFAワールドカップに最も多くの選手(17名)を派遣しているのは、ドイツ王者のバイエルン・ミュンヘンです。しかし、派遣選手の市場価値合計「では、マンチェスター・シティFCが世界一の座を占めています。
大きく分けると、①バイエルンやPSGのような各国の王様クラブ、②世界から有力選手が集まるイングランド勢、③中東の有力クラブ、です。③については、大きな区分けで言うと①にも入ります。
今回のワールドカップでは、サウジアラビアがアルゼンチンを倒すという番狂わせがあったものの、結果だけ見ると一つのクラブを軸に据えて代表を戦うことが必ずしも大きなアドバンテージになるかは微妙な感じです。それを活かせるかどうかはチーム次第なのでしょう。

選手の平均年齢

カタール・ワールドカップ出場国別平均年齢及び選手別国際試合出場数合計
出場国別の選手の平均年齢(横軸)と国際試合出場回数(縦軸)をみてみましょう。横軸が年齢、縦軸が国際試合出場数です。国際試合出場回数1位はカタールです。一方で平均年齢が最も高いのはイランです。これだけみるとイランは世代交代があるかもしれません。最も若いのがガーナ。アメリカ、エクアドル、スペインも若いです。今回のワールドカップでスペインが世代交代の影響を受けたという説は確かに頷けます。モロッコは両方とも数字は少なく、年齢も経験も浅いチームと言えるでしょう。
日本は相対的に年齢が高めですが、比較的国際試合出場数が少ないです。韓国とほとんど同じです。

欠場選手

カタール・ワールドカップ非出場選手市場価値ランキング
(出所:KPMG資料を当ブログ加工)
カタール・ワールドカップ非出場選手市インスタグラムフォロワー数ランキング
(出所:KPMG資料を当ブログ加工)
最後に今般のワールドカップに出場できなかった選手の市場価値トップ10とインスタフォロワー数トップ10です。
この中には、出場国でありながらも怪我等で選出から漏れた選手も含まれます。今回ワールドカップが各国リーグのシーズン中に開催されることはさておき、基本的にはこうした選手はよくあるケースである気もするのですが、ハーランドやイタリアなど出場を逃した国の選手に想いを馳せてしまいます。

最後に

以上のデータをワールドカップの成績と照らし合わせ、答え合わせをすると正直なところ「なんともいえない」というのが私の所感です。確かに選手が多くのお金をもらっているチームは下位に沈まないものの、ベスト16以上になるとそれは関係ないといえそうです。

また、KPMGはインスタグラムのフォロワー数を次の世代の選手としての期待感としての物差しとして採用していますが、私の年齢の問題なのかインスタグラムのフォロワー数にどれだけの意味を見出せるのか、私にはまだしっくり来ていません。昨今のクラブ経営の一つの物差しになっているので頭の片隅に置いておいても良いと思います。とはいえ、いずれはインスタグラム以外のプラットフォームがとって変わることでしょう。

今の時点で私としてはここから大きな示唆を受け止め整理することは出来ていないものの、引き続きこうした記録を積み上げながら考えることを楽しみたいと思います。

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