躍進の「水戸ちゃん」決算でもチーム力を見せつける

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当初は散々だった「水戸ちゃん」

水戸ホーリーホックは2000年にJ2に参入し、1部への昇格もなく、3部への降格もなく、19年に渡ってJ2を戦い続けています。このため、J2サポーターの間では「水戸ちゃん」と親しみを込めて呼ばれています。 今や、J2へ昇降格したチームは「まず水戸さんに挨拶に行け」と言われるくらいの門番と認識されています。

当初の水戸は、チームとして非常に厳しい状況でした。 その内容については、「“輝かしくない”水戸ホーリーホックが、3年連続黒字となった「3つのきっかけ」」に以下の通り説明されています。

Jリーグに昇格した00年当時、水戸はホームタウンにJリーグ基準のスタジアムを持っていない状態だった。さらに経営においても責任企業が支えているわけではなく、初代社長の故・石山徹氏の個人の財産で支えられて運営されている状態だった。明確な基準で審査されてライセンスが発行される今ならば、間違いなくJリーグに上がることはなかっただろう。しかし、当時は「Jリーグの仲間を増やしていこう」という風潮があった。周囲から後押しされてJリーグ参入を認められることとなったのだが、それからが苦しみの連続だった。
「市民クラブ」と謳いながらも水戸市に活動拠点を持たないため、ホームタウンと密接な関係を築くことができず、スタンドは毎試合閑古鳥が鳴く始末。それゆえにスポンサーも増えず、さらに08年には宮田裕司社長(当時)の飲酒運転が発覚したことによってスポンサー離れも進み、経営難に拍車がかかった。かつてともに経営に苦しみ、リーグ下位に低迷していたヴァンフォーレ甲府やサガン鳥栖といったチームが経営を立て直して羽ばたいていった一方、水戸はいつまでも「失敗」の烙印を消せないまま、希望を抱けない状況が続いていた。

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入場者数の推移

こんな状況であった水戸ホーリーホックが一つ一つ努力を積み上げ、報われようとしていることが開示情報でもわかります。

 

まず、入場者数ですが、J2参入の最初の2000年の入場者数は2,021人と、J2平均人数6,095人の1/3の水準です。そして、2007年に底打ちし、上昇基調を辿り始めます。 「この年に何があったのかな?」とWikipediaで調べると、監督の交代と社長の交代がありました。2008年3月31日に社長の宮田裕司氏が、前年8月のクラブスタッフとの親睦会での飲酒運転が発覚し辞任することとなり、沼田邦郎氏が社長に就任しました(現任)。監督は前田監督から木山監督にバトンタッチされるわけですが、この社長交代が水戸ホーリーホックにとってのターニングポイントになったのだと思います。

なお、この年の大きなイベントとしては、ホーリー君の手術が行われたとのこと。Wikipediaによると以下の通り。

マスコットであるホーリーくんの入院及び手術(ホーリーくんの着ぐるみのリニューアル)をするための費用として、11月下旬から12月上旬にかけてサポーター有志からの募金とホーム最終戦で行われたチャリティーオークションで100万円以上の入院・手術費用が集まった。ホーリーくんの着ぐるみは2008年シーズン開始当初から頭が割れたり、しっぽがちぎれそうになったりしており、怪我(破損)した部分を包帯で巻き、なんとか試合会場やイベント会場に来ていた。また、試合やイベント会場でも、痛々しい姿を指摘する子どもたちの声もあった。着ぐるみの耐用年数は約2年と言われており、Jリーグの多くのチームは数体予備を用意しているが、予備が無く、チーム財政も厳しいため、今回の募金活動が行われた。

苦しい台所事情が伺えますここから入場者数は増加を続けるわけですが、立派なのは震災のあった2011年の平均入場者数は7%減少したものの、2012年は19%増加したことです。茨城県は震災の影響も大きかった地域ですが、素晴らしいです。

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損益計算書と貸借対照表

損益計算書と貸借対照表を見てみます。まず、貸借対照表の2008年1月期末から2011年1月期末ですが、債務超過でした。 しかしながら、2012年1月期は広告料の増加による144百万円の大幅黒字、及び水戸市からの出資により、債務超過を脱出します。広告料の増加はテイクアンドギブニーズが新スポンサーとしてユニフォームに広告を入れているので、この寄与が大きいと見ています。

営業収益に関しては、2008年以降(JリーグのHPに開示されているのは2008年からでしたのでそれ以前は確認していません)、東日本大震災のあった2012年1月期を除いて増収を続けます。沼田社長の手腕によるものでしょう。

2015年1月期の赤字は広告料の減収によるもの。テイクアンドギブニーズからの広告出稿が終わったためと推察されます。一方で試合関連経費が増加しているので、コストのマネジメントとバランスが取れなかったための赤字だと思われます。但し、その背景は開示情報からわかりませんので、一概に悪いかどうかはなんとも言えませんが、翌期以降も営業収益を伸ばし大きな赤字を見せていないところをみると特段の問題はないものと思います。

2018年1月期の赤字については若干の広告料の減収とトップチームの運営費が増加したことによるものです。但し、金額としては軽微です。 このような結果、経営規模を大きくすることができ、人件費も増加することができています。2012年1月期(それ以前の人件費数値が同じ物差しか不明であるため)の人件費が152百万円であったものが、2018年1月期は275百万円と1.8倍となりました。これで、当然ながら有力選手の獲得もしやすくなります。

アツマーレ

2018年1月、クラブハウスと練習場の機能を備えた「アツマーレ」が完成しました。それまではクラブハウスと練習場が離れていたこと、そして大雨降ってしまうとそれまでのホーリーピッチ」という水戸市内の那珂川河川敷にある専用練習場は使えなくなっていました。 しかしながら、このアツマーレによって双方が解決します。このアツマーレは全国的に注目を浴びているのですが、廃校となった校舎を活用していることがポイントです。旧七会中学校の校舎を約3億2800万円かけて改修しました。この施設は、水戸ホーリーホックのクラブハウスや天然芝グラウンド2面の練習場だけでなく、城里町役場の支所、公民館も併設しています。 施設内のトレーニングジムは城里町民であれば無料で使用ができ、またバーベキュー場もあるということで、町の中の憩いの場となります。また、ホーリーホックは今年の新入団選手の発表もアツマーレで行ったそうで、フル活用されている模様です。

若手の成長の場として評価される水戸

2019年シーズン、水戸はJ2リーグ7位と惜しくもプレーオフ進出を逃しました。しかしながら、これまで概ね2桁順位でしたので、着々と力をつけていることは間違いありません。そしてアツマーレの完成で、充実したインフラを備えるようになりました。この結果、期待の若手が水戸でプレーするようになりました。昨年はアンダー世代の日本代表の小川航基選手(2020年は磐田にレンタルバック)や大宮の期待の若手黒川淳史選手(2020年は大宮にレンタルバック)がプレーしました。若手選手が成長できるチームとして現在評価されていることが分かります。また、そしてドイツでプレーする浅野選手の弟、浅野雄也選手はサンフレッチェに、レンタルで神戸から来ていた宮大樹選手は鳥栖に移籍し、出世を果たしています(今年の選手はあまり知りません。ごめんなさい)。出場機会を求める高卒、大卒選手が最初のステップとしてホーリーホックを選択することもあるでしょう。

専用スタジアム構想

更に、チームは新たなサッカー専用スタジアムの建設をする構想があるようです。スタジアムは教育、福祉、防災拠点などの機能を持ち、1.5から2万人の収容人数の計画であるとのことです。今後もさらなる発展が見込めます。
実際、水戸ホーリーホックののホームタウンである5市、3町、1村を足すと人口72万人です。 熊本市、相模原市、岡山市などの政令指定都市と同レベルの人口があります。まだまだポテンシャルがあるはずです。

期待

なお、個人的な思いとしてはファンショップをまず改善して欲しいと思っています。水戸に行った機会があるのですが、駅前のビルにアントラーズのファンショップがあるものの、ホーリーホックのファンショップは駅から10分近く歩いたところにあるスポーツショップの一角にひっそりグッズ販売スペースがあるだけでした。このあたりもある意味ポテンシャルでしょう。

今後の水戸に引き続き注目したいところです。あと、本間選手、応援しています。

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