コンサドーレ札幌における選手による報酬1億円返納についての考察

報酬1億円返納のインパクトを考える

コンサドーレ札幌の選手一同が、現在のコロナウイルス感染拡大による公式戦の中断を受けて、報酬の一部合わせて約1億円を返納するという申し出があったと報道されています。 コンサドーレは野々村現社長就任後、チームの成績とチームの財務体質をすばらしく向上させています。

野々村社長が就任して、J2とJ1を行ったり来たりしていたチームは2018年には4位、2019年にはルヴァンカップでファイナルに進出しました。営業収益は野々村社長就任の2014年1月期は1,328百万円から、2019年1月期には2,988百万円まで成長させました。

そのコンサドーレ札幌におけるこの1億円のインパクトを吟味してみたいと思います。

2019年1月期決算

成長著しいコンサドーレですが、最も新しい2019年1月期の当期利益は165百万円の赤字でした。 一番の要因は人件費率です。2017年1月期 37%、2018年1月期 45%と上昇し続けていたのが2019年1月期には50%となりました。一般的にサッカーチームの場合、50%程度が人件費と言われることもありますが、それまでの札幌の人件費率は30%〜40%でしたので、チームの収益構造が追いついていなかったものと思われます。

では、どうして人件費率が50%となったかというと、ここ数年はチームが強くなったので、勝利給などのボーナスが嵩んだのだとみられます。これほどボーナスを出すほどの結果を出すとは想定しておらず、結果、当初予算を超過したのではないかと推察します。 これは選手が悪いのではなく、その分営業が稼いでくれば良いのですが、選手に投資をしつつ、急成長を見せるチームの中では有り得ることだと思います。


今回、コロナの問題の財務的インパクトを考えるにあたって、2つの視点があると思います。 1つは今年度1年見通した決算はどうなるのか。大赤字になるのか。もう一つが、現時点で給料などの支払いをするお金が手元にあるのか、です。

今年度の損益に関する考察

今年度1年見通した決算はどうなるのか。2020年1月期仮シナリオ

まず、直近の2019年1月期の損益計算書をみると大きな165百万円の赤字を計上しています。 野々村社長就任の2014年1月期から2018年1月期まで1度も赤字を計上していないため、2020年度はここ数年の好成績により、その165百万円を埋めるまでの売上が見込めることを前提としてベースシナリオを設定します(要はこの赤字は特殊なものとして、利益トントンベースを通常として検討したいということ)。

コロナ影響シナリオ

この前提は、例えばGWに再開予定かつ期間の1/3をアウェー観客なし、そしてホーム観客を定員の半分とした(Jリーグの当初方針)イメージでのシナリオです。

この結果、ベースシナリオにおいて、コロナの影響で「想定」欄に記載した前提での営業収益減少が発生する一方、コスト削減はせずこのままの金額のコストが発生した、と考えると以下のようになります。

最終的に当期利益は4億円の赤字と試算しました。
当たり前ですが、この赤字額はどう仮定するかによります。ひょっとすると更にDAZNマネーが原資となるJリーグ配分金は減るかもしれません。その他収入がもっと減ることもあるでしょう。他にもいくらでもシナリオはあり得ます。


若干これでもこの想定ではストレスを控え目にみている理解ですが、色々考えるとキリがないのでこの4億円の赤字を基準に考えると、選手人件費1億円のコスト削減が出来るのであればそれなりのインパクトのあるサポートと見えます。現実的には、会社はこの想定と異なり、この赤字を埋めるためのコスト削減に取組むでしょう。

必要に応じて増資(コンサドーレの決算書を見ると、「対処すべき課題」に財務内容改善が記載されています)をすることも検討することになるでしょう。

資金繰りの考察

野々村社長の就任以降、札幌の営業収益は成長を続けました。その一方で、増加した営業収益を選手やその他投資にそのお金を投じており、内部的な留保は蓄積できていません。しかし、2018年1月期、及び2019年1月期の増資により確保した資金で強化した財務により、赤字によるキャッシュ流失を凌げるかがカギとなるでしょう。

貸借対照表では現金がいくらあるかは開示されていませんが、2019年1月末には、流動資産が16億円あります。上場していて詳細な財務諸表を確認できるマンチェスターユナイテッドの貸借対照表を見ると、概ね流動資産の80%程度が現金でした。これを参考に流動資産から札幌の現金の額を想定すると、1,632百万円×80%で約13億円の現金が手元にあると計算できます。しかしながら、一番新しい開示情報をもとに考えていますが、これは1年以上前の話なので、現実は違う数字でしょう。 とはいえ、近年の札幌の財務諸表と昨年の成績を見る限り、びっくりするような資金流出はないとみられるので、手元に10億円はあってもおかしくないかもしれません。そこに仮に流動負債629百万円を差し引いたとしても(実際は5年以内に返済するものを示しているので、かなり保守的な計算です)、4億円の赤字を補って概ねフラット。つまり、仮にコストの削減をしなくても1年であれば4億円の赤字に耐え、問題なく凌げるのではと思っています。

但し、この計算には当然誤差というか違うところもあるでしょうし、固定負債の返済資金もあるでしょうから、そういう点では1億円という金額の人件費削減は選手にも受け入れやすい幅であり、チームにも貢献できるいい線の数字であるとは思います。

なお、2018年1月期、と2019年1月期の第三者割当増資は、石屋製菓やダイヤモンドヘッド社などによるものです。札幌サポーターはいっぱい白い恋人を買って援護射撃ですね。

この結果、今回のサラリー1億円減額の申し出に対し、野々村社長はすぐに申し出を受けるのではなく「申し出を承諾するかどうかは今後検討する」としているのでしょう。

最後に

ヨーロッパでも選手の給与カットがテーマになっており、「給与がなぜ、いつも削減のターゲットになるのか」という批判もあります。

これは、①コストとしての比率が大きく、最もインパクトがあること、②サッカーチームの収益構造上、選手の人件費が変動費という前提になっているからです。

この前提に立つからこそ、選手の給与が高いことの根拠にもなりますし、選手の給与カットに矛先が向くのは、やむを得ないと思います(もちろん契約は契約ですが、どの経営者も目が向くことは自明の理だということです)。

いずれにせよ、このコロナ禍により一つのチームも潰れないことを願います。

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