Jリーグチームのオーナーシップ移転

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ここ数年、Jリーグチームのオーナーシップの移転が相次いでいます。
考えてみたことを纏めさせてもらいました。
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近年のJリーグチームのオーナーシップの移転

近年、J1、J2で発生したオーナーシップの移転は、以下の通りです。
チーム 時期  イベント
ヴィッセル神戸 2014年12月 楽天が経営権取得
湘南ベルマーレ 2018年4月 ライザップが経営権取得
町田ゼルビア 2018年10月 サイバーエージェントが経営権を取得
東京ヴェルディ1969 2018年12月 アカツキが経営権を取得
鹿島アントラーズ 2019年7月 メルカリが経営権を取得
ネット関連企業の参入が相次いでいます。特段経営難でもないオリジナル10の鹿島までが譲渡されるのは驚きました。
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プロ野球の親会社の業種としての変遷

球団のオーナーシップの移転という意味では、歴史の点において一日の長がある野球の例を見てみたいと思います。
下表は、プロ野球球団の親会社の変遷です。概ね12球団体制が整った1960年から30年刻みで業種を表しました。
1960年 1990年 2020年
オーナー会社 球団数 オーナー会社 球団数 オーナー会社 球団数
鉄道 ※国鉄含む 6 鉄道 3 食品製造 3
新聞 ※大毎含む 3 食品製造 3 通信・ネット 3
映画 1 新聞 2 新聞 2
漁業 1 漁業 1 鉄道 2
市民球団 1 市民球団 1 市民球団 1
小売 1 金融 1
金融 1

1960年から1990年

1960年から1990年は、鉄道会社が6から3に減り(国鉄、阪急、南海が譲渡)、映画会社もなくなりました(映画会社は大毎も含めると2球団が無くなったと見なすこともできる)。元々、鉄道会社が球団を持ったのは、野球観戦を通じて鉄道利用を促したみったというのがあります。しかしながら、球団自体が赤字なので、支えきれないという判断から譲渡しました。映画に関しても1990年であればまだシネコンもなく、ビデオに押されていた時代です。

1990年から2020年

ここで目立つのはやはり通信・ネットの業種が入り込んできたことです。鉄道(近鉄)、小売(ダイエー)、漁業(大洋)が入れ替わりました。いずれも経営不振によるものです。

ここで一つ変わってきたことがあります。巨人中心で全て回っていたものが、崩れたことです。まず、これまで日陰にいたパリーグが、明るく、カッコよく、強くなったこと。もう一つが地域密着です。1900年代は元々、テレビで全国放映されていたのが巨人で、そこにONのようなスター選手がいたことから、巨人が一番の人気球団でした。しかしながら、これまで人気を高めるために様々な努力を重ねてきたパリーグ(DH制、予告先発、セリーグより早い開幕など)が、地域密着により大きな集客をするようになりました。結果、プロ野球球団は親会社にとって単なる広告のためのキャッシュ流出対象というより、親会社の知名度を上げる役割を果たしつつも、自立する存在になってきました。

ここで何をお伝えしたいのかというと、球団のオーナーシップは経済の趨勢と世の中の動きが大きく反映されているということです。

以上のような点を踏まえて、球団のオーナーシップの移転を考えてみました。

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プロ野球とJリーグのオーナーシップ移転環境の違い

球団の譲渡が発生するということは、売る側の理由と買う側の理由があります。

売る側の理由は、単純にいうと①支えるためのお金がない、②経営上保有する意味がない、に集約されると思います。

Jリーグに関していうと、プロ野球と大きな違いは、必ずしも新規参入が限られていないことです。一定の要件を満たせば、Jリーグに参入できます。このため、J1のチームを買ってもいいですし、自分でチームを作って、勝ち進むことにより参入することができます。このため、野球と比較し、Jリーグの方が買手が一定の軸となり考えることができるでしょう。

こういう会社がチームを買う

これからのJリーグチームオーナーシップ移転のポイントについては、次に述べる4つの要件のうち、3つ以上を満たす会社がチーム経営権を取得するケースが多いと考えます。

稼ぐ力がある

当然のことですが、お金がないとチームは買えませんので「稼ぐ力」が条件の一つです。もう少しいうと、一定の余裕ある現金を持ち、かつ特に利益率が高い主体だと思います。

例えば、鹿島を手放した日本製鐵は営業利益率が直近の2019年3月期で4.2%です。保有のマリノス株を売るという噂も記事になっている日産の2019年3月期の営業利益率は2.7%で、トヨタの営業利益率も同8.2%です。

一方で、楽天の直近の通期決算である2019年12月期は携帯事業の立ち上げのため赤字ですが、携帯事業の立ち上げのないその前の通期決算である2018年12月期の営業利益率は15%です。サイバーエージェントは2019年9月期の営業利益率は6.7%ですが、赤字のアベマTV事業を抜くと、12.9%です。湘南ベルマーレを買収する直前の経営危機前のライザップの営業利益率は10.0%でした。アカツキに至っては48.4%です。なお、メルカリに関しては、まだ利益の回収フェーズに入っていないので赤字ですが、損益分岐点を超えた後の利益率は、変動費が少ない業態ですので、高い水準となるでしょう(少なくとも2桁)。そのような訳で、今後もこのような稼ぐ力がある企業となると思われます。

また、今ご説明した新規参入企業は豊富な現金を持っています。直近期末の現金ですが、楽天の直近期末(通期)の現金が1兆4,000億円、サイバーエージェントが840億円、アカツキが242億円、メルカリは1,250億の現金があります。ライザップも経営危機前の436億円のキャッシュがありました。なお、これらの企業は商売の構造として、仕入や設備投資がある製造業などの企業と比較して、同じ額の現金を持っていたとしても余裕があります。

B to Cのビジネスである

これは野球でもそうですが、商売の相手が一般消費者であるということです。サッカーを通じて一般消費者にアプローチすることを視野に親会社になる訳ですので、基本的にB to Cのビジネスを行う企業となるでしょう。先述の新規参入企業をみても、それぞれ個人向けのビジネスをやっています。

話はそれますが、そういうところを見ると思い浮かぶのが浦和レッズです。現在、三菱重工が親会社となりますが、一部ビーバーエアコンを売っているものの、基本的にタービンや戦車を作る三菱重工が一般消費者にアプローチする意義はないので、三菱重工がどれだけ浦和レッズにコミットするかは疑問を持ち続けています。

地域密着

これはJリーグの理念でもありますので、その理念に共感する。またはビジネスとしてチームのある地域にコミットしたい。そしてこれが最も作用しそうですが、社長やオーナーが個人でその土地やチームに縁があるということです。
楽天の三木谷さんは神戸出身です。メルカリの小泉社長は以前からの鹿島ファン。アカツキの塩田社長(当時)はヴェルディユースのテストを受けに行ったとのこと。

思い切った意思決定力

最後は意思決定力です。サッカーチームの経営権を取得することは必ずしも利益的な貢献が見込める訳ではありません。利益が出たとしても、ROEやROAの数値を落とし、指標上資金効率を悪化させることになります。このため、「消費者に訴求できる」、「広告的な効果がある」など、広告代理店は数字として試算できるのでしょうが、客観的な数字としての効果を表することができません。このため、最終的には「エイヤ」と思い切った判断ができることです。そうすると結局例えば上司や株主を説得する必要のないオーナー社長のみが許されることになるのだろうと思います。オーナー社長の会社というと社歴の浅い会社で、かつサッカーチームを買えるとなると、先ほどのような通信・ネット関係の企業になりやすいのだと思います。
そういう意味だと、ソフトバンクがチームを買うという話が流れたこともありますが、福岡あたりを買うと面白いとは思いましたが、今はそれどころではないですね。ZOZOもそうですが。私はネット系企業に詳しくはないですが、現実性があるのはネット会社の中でもアカツキのようなゲームを扱う会社が有力だと思っています。ガチャがすっごく儲かるようなので。

要件を満たすのはどうしてもネット企業が多くなる

事業の収益構造(資金負担がいらないビジネスモデル)、事業環境(伸びるビジネス領域)、設立して日が浅いこと(オーナー企業であることによる意思決定力)などから、やはり今後もネット企業がなるとみています。

オリジナル10でみる役割を終えた親会社

最後に、売手となる現体制も少し見てみたいと思います。

私は先ほど挙げた4要件は、参画だけでなく、チームが組織として成長するための親会社の要件でもあると思っています。事例としてオリジナル10にこの4要件を照らし、独断と偏見で以下の通り評価してみました。

チーム名 主要株主 稼ぐ力 B to C 地域密着 意思決定力
東京ヴェルディ1969 アカツキ ✖️
浦和レッドダイヤモンズ 三菱重工 ✖️ ✖️ ✖️
ガンバ大阪 パナソニック ✖️
鹿島アントラーズ メルカリ ✖️
ジェフユナイテッド市原千葉 JR東日本・古河電工 ✖️
清水エスパルス 鈴与
名古屋グランパス トヨタ自動車 ✖️
サンフレッチェ広島 エディオン
横浜フリューゲルス 消滅
横浜マリノス 日産自動車 ✖️

この独断の偏見いっぱいの評価に関し、参考に関し次の通り追加コメントをします。

  • ガンバの地域密着の△は、大阪本社の企業という点。しかし、ビジネスは世界規模であり、ローカル色を出すことがプラスでないため、コミットの水準がどうかなという判断(吹田スタジアムにお金を出したことで◯と迷うところ。
  • ジェフ千葉は古河電工のビジネスの立ち位置により◯から△へ。
  • エディオンの地域密着の△は、名古屋企業のエイデンと統合したため。

原則、この上表の中で、◯を1点、△を0.5点、✖︎を0点だとすると、3点以上で現体制で継続の意義あり。うーん、ギリギリで2.5以上で「優」、「良」、「可」の可くらいで、継続の意義ありとしましょう。それ未満であれば、やはり現体制の継続は見直した方が良いと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント

  1. […] ご無沙汰しております。私的な事情からしばらく他のことをしておりそちらを優先していました。また、ぼちぼちブログを書き始めようと思います。 11月22日、mixiがFC東京を運営する東京フットボールクラブ株式会社の第三者割当増資を引き受け、子会社化することが発表されました。 以前、「Jリーグチームのオーナーシップ移転」という記事を投稿させて頂き、今後はネット企業が親会社になるケースが増えるのかなあという話を書かせて頂きましたが、じわじわその方向で世の中が進んでいる模様です。ネット系企業の進出が増えると見込む理由もそこに書きました。 その上で、「ミクシィってどうなの?」、「あそこはモンストだけじゃない?」という声もあるようなので、Jクラブのオーナーとしてのミクシィはどうなのか、有価証券報告書から眺めてみることにしました。 […]

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