アビスパ福岡2020年1月期決算:順調再建途上の躓き

アビスパ福岡の2020年1月期決算が開示されました

アビスパ福岡の2020年1月期の損益計算書と貸借対照表がJリーグのHPで他のチームの数字と共に開示されました(チームのHPでは本当の概要が4月中に発表されています)。
営業収益は1,577百万円(前期比13%減少)、当期利益は107百万円の赤字でした(前期は2百万円の黒字)で、かなり良くない状況だと思います。
J2オリジナル10の一角ではあるものの、長い間財政問題に直面してきたアビスパ福岡ですが、2014年のアパマングループのシステムソフトによる資本参加以降は、順調に成長を続けて来ました。しかしながら、直近期の不振に関し、少しほじくりながら見てみたいと思います。

財務問題に苦しみ続けたアビスパ福岡の過去

アビスパ福岡の資本まわりの歴史をおさらいします。
  • 1994年に福岡市(1億円出資)、及びその他出資企業は九州電力、福岡銀行、西部ガス、西日本鉄道、西日本シティ銀行、九電工、JR九州などの「七社会」や北九州コカ・コーラやふくやなどの地元有力企業(もっと調べればわかるのかもしれませんが、福岡市の企業がいくら出したかは手元では不明)の出資により設立。※チーム自体は静岡県藤枝市に所在した中央防犯ACM藤枝サッカークラブを母体にしています。
  • 1998年の財務不振時に福岡市が4億円の増資引き受けと最大9億円の融資を拠出した模様。
  • 2006年には、当時の資本金3,370百万円を97.3%(又は大村市論文によると99%)減資し、大株主を中心に「追加支援」を受けた。
  • 2008年には大都技研から7,000万円(出資比率4.94%)の増資を受け、同社から非常勤取締役も受入れ。
  • 2013年には、資金不足問題が表面化し、地元有力企業には追加支援を受けられず。当時、目先は5,000万円の運転資金が必要となり、協賛金や一部企業の応援商品販売による支援などで破綻回避。
  • 2014年8月にアパマンショップグループのシステムソフトから1億円の増資
まず、驚いたのは2006年の減資の際の34億円という資本金のサイズです。アビスパは資金不足のイメージが以前からありましたが、他のチームと比べ余裕があったんだなとイメージが変わりました。しかしながら、お金の使い方がユルユルで当時は「お金なくなった→お金下さい」が繰り返されたのでしょう。
新聞報道では、2013年〜2014年の資金不足の際は、旧七社会への資金援助は断られた模様です。しかし、2008年の都内のパチンコ機器メーカーである大都技研からの出資と役員受入れたというのは、通常であれば地元企業の雄である誇り高い旧七社会が受け入れるはずがないと思われますので、この時点でアビスパは旧七社会からはすでに突き放されたのではないでしょうか。

コカ・コーラウエストにまつわる仮説

先述の経緯の中で、最も重要なアビスパの運営にかかわる分かれ道は2006年だったのではないかと推察しています。2014年の増資の際には、それまでの筆頭株主がコカ・コーラウエスト(北九州コカ・コーラから名称変更。現在は、コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社。14.95%保有)でした。確かな情報はないものの、2006年の支援は減資+増資の手当てがなされ、コカ・コーラウエストが最も大きく増資を引き受けたのではないかと考えています。理由は、減資のみでは何も変わらないため増資がセットになっているはずであり、2014年時点でコカ・コーラウエストが筆頭株主だったためです。
そして、コカ・コーラウエストが翌2007年いっぱいで胸スポンサーを撤退しました。これを踏まえての想像ですが、背景としては2006年当時、七社会はすでに及び腰であったためコカ・コーラウエストが増資を多めに引き受けた(減資は2006年4月の株主総会で決議されたようです。増資のプロセスは不明)のではないでしょうか。しかし以降、北九州コカ・コーラボトリングが全国に散らばる製造・販売企業の再編を実施しました。恐らく、コカ・コーラ本体の意向だとも思います。結果、2006年7月からの事業再編により北九州の企業でなくなったコカ・コーラウエストも関与を断念し、旧体制の主要企業はそろって旗振りから降りたということなのではと推察しています。
これが本稿での2つの仮説の1つ目です。

システムソフト増資・川森社長就任後の施策

追って示す財務諸表をご確認頂きたいのですが、アパマングループの企業であるシステムソフトが増資し、アパマングループが経営に関与して以降、アビスパ福岡は立ち直りました大村浩次氏の「アビスパ福岡の経営危機とその克服の経緯」によると、以下の施策を行ったとされています。
  • 財務諸表を経営幹部が共有
  • 営業利益などの目標の明確化(毎月の会議によって経営幹部が把握し、必要な対応を実施)
  • 市民やスポンサーから預かった資金が効果的に運用されるように、稟議ルールの厳格化などによる経費支出の見直し
  • 勤務時間を選べる業務限定社員制度の導入し、営業社員の大幅増員
読み取れることは、今まで一般企業のとして行われているようなことが漸く行われたということなのかなと理解しています。また、業務限定社員制度というのは、嘱託の営業社員さんてきなイメージでしょうか。このあたり、不動産仲介屋さんのノウハウが導入されているのかなと思います。
結果、スポンサー数は2014年186社から2015年1,010社にまで大きく拡大。「レベスタ1万人プロジェクト」による観客動員増で2015年には前年対比172%を達成したそうです。
この結果、アパマンが出資した、翌々期の2017年1月期には営業収益は2倍になりました。これは大きな功績です。

2020年1月期決算を眺めてみる

長い前置きとなりましたが、ここで決算を見てみましょう。これまで書いた話も少し数字で照らし合わせることができます(スマホの人小さい字ですみません!)。
損益計算書
貸借対照表
先述の通り、2020年1月期は営業収益は1,577百万円(前期比13%減少)、当期利益は107百万円の赤字(前期は2百万円の黒字)でした。
主な減収要因は、スポンサー社数前期の918社から781社(対前期比137社減)による広告収入減、及びラグビーワールドカップ開催による代替スタジアムでのホームゲーム開催などの影響もあり、平均入場者数前期の8,873人から6,983人(対前期比1,890人減)にとどまったことによる入場料収入等の減少とのことです。
減収要因は、確かにラグビーワールドカップの影響と成績不振による入場料収入の伸び悩みはあると思います。しかし、実際のところアビスパ福岡の営業収益のうち入場料の占める割合は低く(10%〜20%程度)、減収金額は前期比40百万円程度です。それほど影響が大きいとは思えません。問題は、営業収益の50%ほどを占める広告収入の減少です。990百万円から693百万円と297百万円減少しました。一般に、広告料収入が伸びている又はせいぜい横ばいのチームが多い中、スポンサー社の二桁パーセントの減少は異例に見えます。
この減収のため、チーム人件費は909百万円から784百万円と125百万円絞られました。2019シーズンのチームの順位が16位に落ちた要因の一つでしょう。
そして、一番の問題は、今回の赤字を受けて、自己資本は179百万円から69百万円と大幅に減少し、更に今走っているシーズンはコロナの影響で、アビスパ福岡に限らずどこのクラブも赤字になる可能性が高いため、債務超過の足音が聞こえてきます。現状、この前の3月末の2020年9月期半期決算の数字でもアパマンの経営状況もあまり芳しくないこと(532百万円の経常赤字)に加え、コロナの影響を鑑みると、増資を目指すにしても少し苦労しそうな気がします。

芳しくない決算についてもう一つの仮説

ここでひょっとしたらの仮説ですが、コロナの影響のない2020年1月期の不振は何だろうと考えて調べているうち、以下の記事の内容が気になりました。アパマンから派遣されたアビスパ福岡社長の川森社長のインタビューです。
自分も初めてスポーツクラブの経営に携わりましたし、経営陣や社員のトレーニングも合わせた1年間でした。その部分は毎日会議を行い、知見を広めていきながら、目標を可視化して、数字のプレッシャーを与えました。たとえば観客動員数をいかに増やすかを検討する会議では、目標や現状、着地見込を1枚にまとめたシートを活用しています。そこにはテレビ放送がどの局であるのか、生放送か録画放送か、天候などに加え、動員数の目標と収益目標、縦軸にはシーズンシートなど既に販売している方々の何割が来場するのか、前売り状況、当日予測、あとは営業チームごとの集客数、株主様、地域の経済団体、アパマンショップグループの動員など、毎日毎日、見込みと進捗を追っています。試合が立て込んでいるときは、3試合分のシートが走っていることもあります。トップチームは常に勝ち点や勝敗など、数字にさらされているのだから、自分たちも役割分担として、そうしたプレッシャーのなかでやるのは当然のことだと思っています。可視化せずにただ「頑張っている」と言っても、抽象的になってしまいますから。昨季は後半、選手がテレビなどのインタビューでそうした経営面のことを話してくれて「ああ、浸透しているんだな」と嬉しくなりました。
ここで思い出したのは、札幌のアパマンショップにおいて、爆発事故が起きた事件です。当該アパマンショップで、未使用の除菌消臭スプレー120本を、廃棄目的に噴射して空にする作業を部屋を閉め切ってしていたところ、湯沸かし器を点け爆発が起きたというものです。
アパマンショップは顧客に消臭サービスと称するものを提供しており、顧客から代金を受け取っていながら未実施のケースがあったと会見で説明されました。ちなみに、除菌・消臭スプレーの仕入れ値は1缶1000円程度であるにもかかわらず、入居時のオプションとして行う消臭オプションサービスでは最低でも1万円の料金を取っていたそうです(同サービスの消臭スプレー噴霧は時間は4分ほど)。問題として、スタッフごとに消臭サービス受注ノルマがあったこと。そして、その店舗はサービスを請負ったものの、未実施なケースがあったことが報じられています。このため、当該消臭サービスを行わず蓄積した缶を、廃棄作業をしていたのでは、という指摘もされています。なお、このスプレーを製造する「ヘヤシュ」という会社はアパマンのグループ会社であるようです。
実際のところ、本件はアビスパ福岡と関係ないものの、アパマンの企業体質を表しており、それがアビスパに影響しているのではないかと考えています。
私がここで言いたいのは、アパマンの批判ではなく、アパマン中心のアビスパ福岡の経営方針において、モーレツ営業を基礎としたプッシュ型の営業の限界が来ているのではと思っています。今後、アビスパ福岡が目指している「100億円クラブ」に到達するためには、何十万人という規模の人々にチームを訴求する必要があります。これを営業で売り込むとなると、それに応じた営業マンの数が必要になりますが、現実的ではありません。要は、営業ではなく、ちゃんとしたマーケティングの発想やより昇華された経営方針が求められているということです。営業とマーケティングの違いをググってみると、営業とは顧客に製品を売る行為であり、マーケティングとは製品・サービスが売れるための仕組みを作ること、という説明になります。もし、マーケティングの概念でアプローチしていたら、先述の社長の「動員」という言葉はなかなか出てこないのではないでしょうか。もちろん、チームによる「訴求」とは、「試合が面白い」、「魅力ある選手がいる」、「勝つ」など、今まで触れてきた事務方の話よりも、試合という現場に生み出されるものが第一です。しかし、この現場こそ、「どんなチームでありたい」、「どんなサッカーを見せたい」、「コミュニティとこのように関わりたい」など経営が打ち立てた経営方針が影響するものだと思います。それらはすでにあるのだと思うのですが、今のクラブにうまく機能していないとみています。
アパマンの参入により、クラブの目線が存続から成長に目を向けられるようになりました。一方、現在Jリーグで起こっているのは旧来のメーカーや重厚長大の責任企業から、新しいタイプの責任企業への経営のバトンタッチです。そして新しいマーケティング方法や新しい収益獲得方法の模索が進んでいます。人口や経済に厚みを持つ福岡ですから、アビスパがビッグクラブになるポテンシャルは十分あると思います。しかし、次の成長軌道に乗るためには、今までの何かを変える必要があるのだと思います。
というのが本稿2つ目の仮説です。違ってたらすみません。決算数値とウェブの情報を元に事情を知らないで書いていますので、ひょっとしたら今回のスポンサーからの広告料の減少は、単に昨年の水害による影響でのスポンサー減少の可能性も有るのかなと実は思っています。
いずれにせよ、100万人の人口がある街のクラブは原則としてビッグクラブになるポテンシャルがあると思っています。いかにホークスやライオンズなどの野球が人気であっても、それでも市場としてのポテンシャルは十分だと思っていますので、長谷部監督を迎えてのシーズン再開後の活躍を楽しみにしています。

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