名古屋グランパス 豊田章男会長の意味

名古屋グランパス=トヨタ自動車というイメージがありますが、2015年4月、豊田章男トヨタ自動車社長がグランパスの会長に就任することとなりました。「トヨタがとうとうグランパスに本腰を入れるか」と思ったものです。

財務的に追い込まれていた名古屋グランパス

決算書から名古屋グランパスのその頃の状況を見てみましょう。
<損益計算書(単位:百万円)>
  2012/1期 2013/1期 2014/1期 2015/1期 2016/1期 2017/1期 2018/1期 2019/1期
営業収益 4,196 3,993 4,226 4,042 4,446 4,713 4,594 5,491
営業費用 4,231 4,287 4,304 4,041 4,349 4,565 4,094 5,273
販管費 1,083 1,263 1,034 1,082 1,325 1,445 1,145 1,295
営業利益 -35 -295 -78 1 97 148 500 218
経常利益 -19 -286 -58 25 38 166 488 227
当期純利益 -65 -257 -78 23 30 149 363 123
<貸借対照表(単位:百万円)>
  2012/1末 2013/1末 2014/1末 2015/1末 2016/1末 2017/1末 2018/1末 2019/1末
流動資産 447 626 254 163 661 500 1,338 430
固定資産 245 343 335 260 295 264 1,698 1,870
資産の部  合計 692 969 589 423 956 764 3,036 2,301
流動負債 199 719 403 199 705 351 2,278 1,406
固定負債 139 157 172 186 183 159 141 153
負債の部  合計 338 876 575 385 888 510 2,419 1,560
資本金 400 400 400 400 400 105 105 105
資本準備金等 0 0 0 0 0 0 0 0
利益剰余金 -46 -307 -386 -362 -332 149 512 636
資本(純資産)の部   合計 354 93 14 38 68 254 617 741
その頃の名古屋グランパスは、最も厳しかった債務超過スレスレの2014年1月期は乗り越えたものの、当時の直近期でも純資産は3,800万円で一つ間違えば債務超過の状況でした。最悪、J1ライセンスの基準に満たない可能性もありました。
名古屋グランパスといえば、オリジナル10の一角、かつ大都市のチーム。しかも2010年シーズンには優勝経験もあり、しかも大株主はトヨタ自動車です。まさに盤石なチームと思ってしまう所ですが、実際は火の車だったでしょう。

攻めではなく守るための就任だった

その中での豊田章男氏の会長就任です。就任の際、「私は財布ではありません」との言を放ったと報じられています。
その後、事態が動きます。翌年2016年6月「減資及び第三者割当増資」を実施し、トヨタ自動車の持株比率は上昇し、名古屋グランパスはトヨタ自動車の親会社となります。
これがどういうことか2つのステップでご説明します。

①減資

減資とは株主に資本金を払い戻したり、累積赤字があるケースで資本金を取り崩して欠損を補てんしたりすることができます。欠損てん補(今回のグランパスのケース)では、実際にお金が動くわけではなく、決算書上の数字が変わるだけですが、利益剰余金のマイナスが消えて、決算書の見栄えをよくすることができます。減資のみが行われた場合、議決権の割合が変わるわけでもなく、また故に配当支払が発生した場合にも、減資前の場合と違いはありません。何となくものものしい言葉ではありますが。

②増資

増資は資本金をさらに増やすことです。先述のように減資そのものは単なる資本の部の移動となりますが、増資と組み合わせるとその意味が生じます。
今回は資本金4億円を減資により6,757万円に減じた上で、約3,700万円を増資します。この時、当初の4億円に対して3,700万円増資することと、減資した後の6,757万円に対する3,700万円は重み(比率)が違います。
<減資+増資プロセス>
結果、名古屋グランパスはトヨタ自動車の連結子会社となります。
個人的にこのリストの中で気になるのは中日新聞ですね。
リスト掲載の企業は名だたる名古屋の名門企業ですが、トヨタを除くと筆頭です。地元経済界での力を感じます。Numberの記事で豊田章男氏は「当時のクラブの初代社長であるトヨタの現名誉会長(豊田章一郎氏)から漏れ伝わっている話によると、『名古屋市には長年地元を支えてきた経済界がある。豊田市にベースを置くトヨタがあまり出しゃばり過ぎるのはいけない』という考えがありました」とのこと。これは2つの示唆があって、トヨタとしては他の地元企業に配慮していること、そして、三河と尾張の微妙な関係かと思っています。
グランパスは債務超過の危機を脱し、その後は2019年1月期まで黒字経営を維持します。

次のサポートはチーム次第

「財布ではない」という豊田会長の話はありましたが、会長就任以降も2部に落ちた2018年1月期を除けば広告料収入は増加傾向であり、トヨタとしても一定の支援を行っていることが推察できます。人件費もリーグトップクラスです。お金を出すには、お金をまずドンと入れるのではなく、「ホームで勝つチームになってくれ」ということで、勝ったらそれに応じてサポートするという主旨の話をNumberの記事でされています。これって鶏と卵の話かなと思います。欧米や神戸の事例を見ると、お金が先かなというのが現実ではないかと感じています(岐阜は失敗しましたが)。

豊田会長退任

2018年7月、豊田章男会長は会長職を退任します。
前年に自動車工業会会長となってから、本業に集中するか迷われていたようです。もっとトヨタのコミットが見たかった所ですが、財務問題に目処をつけたこと、そしてJ1に復帰したことで一つの役目を果たしたということなのでしょう。
厳しいことをいうと、昇格を業績と見るかは、小倉氏をGMと監督に招聘することを経営陣の一人として承認し、小倉ンパスとしてJ2降格させてしまったのですから、いわゆるマッチポンプというやつです。
また、2015年あたりには、名古屋駅近くに「サッカー専用スタジアムを建設するぞ」と勢いのある話があったと思いますが、瑞穂競技場の陸上競技場としてのリニューアルで決まり立ち消えとなったのでしょうか。これを着地させることが出来たら、大仕事だったとは思いますが、残念です。
章男会長の業績は、3,700万円程度の出資とトヨタ自動車としての一定のコミットを見せたというところがグランパスに残したものということでしょうか。ほろ苦いというか、しょっぱいというか。

コメント

  1. […] 新しい株主は大分県と企業再生ファンド等です。 なお、増減資については、以前名古屋グランパスの増減資についてもご紹介させていただきましたが、増減資の活用事例としてそちらも […]

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