「費用の拡大均衡」〜2018年度クラブ経営開示情報を読んでみた(4)〜

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「費用の拡大均衡」について考えてみる

次のトピックスについて考えてみます。

(2) 前年と比較し、営業収益が過去最高増加額である約151億円の増加 (2011年以降、8年連続増加) 同時に営業費用も約141億円増加し、拡大均衡で推移

ここで考えてみたいのが費用です。売上が上がっても無駄遣いをしてしまえば、企業の財務体質は悪化します。「拡大均衡」とはどういうイメージなのだろうということですが、以下の図による理解でいいのかなと思っています。

営業費用率が横ばいで推移していることが「拡大均衡」と理解できます。簡単に言えば、売上は上がりましたが、端的にいうと「費用もそれに応じた額だけの投入を行ないました」ということです。考えてみれば当たり前のことですが、当たり前ではないことが起こることもあるのがこの業界における事実です。

例えば、2000年代にイタリア等では有力チームの経営破綻が発生しましたが、放漫経営が主な原因だと言われています。結果、ファイナンシャルフェアプレー制度が導入されました。知り合いのブラジル人曰く、「サッカーチームは破綻してもまた作り直せばいい」とのこと。確かにフィオレンティーナやパルマは1部リーグまで帰ってきました。

お国柄もあるでしょうが、なかなか全てのケースがそうもいきません。横浜フリューゲルスは横浜FCとしてJリーグに帰ってきましたが(法人格は必ずしも一緒ではありません)、その道のりは長かったですし、Jリーグ設立当初のような有力チームの地位は取り戻せてはいません。欧米においても、私がなんとなしに気にかけていたオランダのRBCローゼンダールというチームが破綻しましたが、2011年の破産以降、プロリーグには帰ってきていません(アマチュアチームとしては復活した模様)。

 

低水準の営業利益率

もう一点気になるのは低水準の営業利益率です。

Jリーグチーム全体の2016年度が1.6%、2017年度が1.4%、2018年度が2.1%です。毎年手元に残るお金はほんの少しだということです。もしそのチームが借入をしている場合、損益計算書には現れない借入返済(貸借対照表から読み取る)も考慮すると、損益計算書の数字以上に手元の現金という意味での手残りは極めて少なく、Jリーグの各チームは脆弱というか、簡単に経営難になりやすい、収支構造及び財務構造であると言えるでしょう。

ちなみに、他の業界はの営業利益率はどのような水準かと、検索の上こちらのサイトに行ってみました(https://gyokai-search.com/5-riritu.html)。すると、以下のような感じです。

ネット系の業界より営業利益率が劣ることは想像しやすいですが、添付の表の上位50業界に対し、Jリーグの営業利益率は、端にも棒にも引っかからない水準です。先述の内容にも重なりますが、これが意味するのは他の業種と比べて収益性が低いため、①お金をためて投資することが難しい(選手の加入、クラブハウスなどの設備、スタジアム など)、②赤字になりやすい、③お金が貯まりにくいため、経営危機に陥るリスクは高い、③従業員等に高額の給料を簡単には払えない、その他いっぱいあるでしょう。このため、新たなブレークスルーとして「お金持ちのオーナーがやってきてチームが変わる」というシナリオが(積極的にも消極的にも)一般的にならざるをえないという業界構造があるのだと思います。

他の考え方として、例えば昔から営業する老舗の店舗のように現状維持という考え方もあるでしょうが、他のチームが成長した場合、現状維持では下部リーグに降格するというプレッシャーもあるため、「現状維持で良い」は通りません。

つくづく難しい業界なんだなということをしみじみ感じました。

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