欧州5大リーグ:コロナ禍におけるシャツスポンサーとキットサプライヤーの契約事情

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商業収入の重要性の高まり

サッカーへのスポンサーシップはここ数十年でその規模を大きく成長させて来ました。
特にスポンサー収入等の商業分野の収入はヨーロッパのトップクラブにとって、放映権収入に勝る最も重要な収入となりました。加えて、放映権収入は最近頭打ちになっています。日本でもテレビ局が採算性の問題から日本代表のアウェイ戦の放映権を買わなくなりました。一方で商業分野の潜在的成長力は放映権と比べまだあると見られています。
ヨーロッパトップ10クラブの営業収入の内訳
(出所:KPMG)
2019/20シーズンの財務諸表によると、コロナ禍によりマッチデー収入及び放映権収入の甚大な減少が発生したものの、商業収入はコロナ禍発生前と比べ最も影響が少なくなっています。実際、5大リーグのうち2つのリーグでは、年ベースのでのリーグ全体の商業収入は増加しています。
プレミアリーグでは約200百万ユーロ(約260億円)増加のEUR1.815十億ユーロ(約2,360億円)となりました。これは2019/20シーズン比で12%増加となります。これは主にエバートン新スタジアムの10年間のネーミングライツに関し、ロシアの富豪アリシャー・ウスマノフ氏と契約締結したことによるものです。ウスマノフ氏はネーミングライツ権利者となるため、すでに30百万ポンド(約45億円)を昨年支払っています。
そして、ブンデスリーガでも1%ではありますが増加しました。これは、主にUEFAの国際大会でドイツのチームが比較的好成績を収めたためです。ラ・リーガのクラブの商業収入の総計は、2019/20シーズンに2.5%減少しました。いくつかのチームの商業収入は増加したものの、バルセロナの商業収入が37百万ユーロ(約48億円)減少したことが減少の大きな要因です。
フランスでは、2019/20シーズンにおいてリーグ戦の途中終了が影響し、リーグ・アンの商業収入総計が10.2%減少しました。セリエAでは、商業収入が14.6%減少し、2019/20シーズンの商業収入総計は679百万ユーロ(約883百万円)となりました。セリエAの減少額は、インテルにおいて中国人オーナー絡みのスポンサー収入が満了し、この半分近くとなる50百万ユーロの商業収入が減少したことが主因です。
とはいえ、2019/20シーズンの商業収入については多くの契約がコロナ禍の発生前に締結されたものと見込まれます。このため、本来の影響額がどの程度なのかを見積もるため、KPMGは商業収入の大きな柱となる胸スポンサーとキットサプライヤーにつきコロナが本格的に蔓延した2020年5月以降に締結された契約を以下の通り分析をしています。
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シャツスポンサー

5大リーグに着目すると、コロナウイルスの蔓延からシャツスポンサーについて40以上の新たな契約が締結されました。契約額は平均でコロナ禍発生前より1%程度減少しました。空席の目立つスタジアムではテレビ放映の際に効果が落ちると想定され、価格が弱含んだ側面もあった模様です。一方でコロナ禍が終わった将来を見込んで契約する向きもあったようです。この結果、契約額が上がったところも下がったところもまちまちだったようです。
トップ10シャツスポンサー契約(年間ベース)
チームの成績、商業収入の大きさ、契約開始の時期(コロナ禍の前か後か)、パートナーシップの内容など多くの要因により左右されました。シャツスポンサーの点から言うと最大の勝者はインテルでした。これまで長きに渡って続けてきたパートナーシップをピレリからsocios.com(ブロックチェーンのファントークンのプラットフォーム提供者)に切り替え収入を2倍にしました。一方、ミランはエミレーツとの契約を約44%減額して延長しました。
シャツスポンサーの平均契約期間は2.6年から1.8年に短縮されました。コロナの状況が読めないことが要因です。1年契約というのが基本となっており、スポンサーにもクラブにも短い契約期間なりのメリットを見込んでいます。クラブは収入を得られる一方、スポンサーも不景気における実験的なマーケティングやコアファンをターゲットにしたマーケティングにも取り組めると考えているようです。
しかしながら、TeamViewerとマンチェスターユナイテッドの契約は逆張りで、価格が弱含みのスポンサーマーケットを逆手に取りコロナ前と比べディスカウントした価格で5年という長い契約期間で契約しました。
サッカーのスポンサーシップの潮流にも変化が訪れています。ラ・リーガではベッティング(賭け)関連のスポンサーシップに取り締まりがあり、イングランドでも同様の動きがあるようです。この結果、新たな業種のスポンサーが増えています。例えばブロックチェーンと暗号資産関連のスポンサーであるsocios.comがインテルのスポンサーになります。ローマ(DigitalBits)、ラティオ(Binance)、アタランタ(Plus500)、セビージャ(NAGA)も同様です。
それらスポンサー企業がどんな会社か調べてみると下表の通りでした。
トップ10シャツスポンサーの事業内容
(出所:本サイト調べ)
Jリーグではどうなんだろうという思いから検索してみると、一般に胸スポンサーは2〜3億円が相場と言われているようです。
公開情報としてたどり着ける限りでいうと、川崎フロンターレが公開しているパートナーシップ募集の資料が参考になります。
川崎フロンターレスポンサーシップ料金表(2021シーズン)
(出所:川崎フロンターレ)
川崎フロンターレの場合、背中スポンサーがすでに2.5億円なので、胸スポンサーの金額はもっと高い金額であると推察されます。ドタ勘でいうと5-10億くらいなのでしょうか。そうすると、欧州のトップクラブと比較すると10倍くらいになります。あくまでも推察ですが。
この川崎フロンターレスポンサーシップの表を見て問題だと思うのが、数年前と値段が変わっていないことです。価値が上がっていないと解釈することもできます。

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