2022年1月期浦和レッズ決算レビュー:営業赤字もかろうじて純利益確保

スポンサーリンク
スポンサーリンク

なんとか黒字確保

浦和レッズ2022年1月期(2021年度)決算がクラブHPにて公表されました。
クラブは2021シーズンを以下の通り総括しています。
2021シーズンのトップチームは、3年計画の2年目として、リカルド ロドリゲス監督新体制のもと、目標である「AFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得」と、「チームコンセプト、スタイルの浸透・成長」を重点目標に掲げました。
J1リーグでは、優勝した川崎フロンターレとは29ポイント差の勝ち点63(得失点差7)で6位、YBCルヴァンカップでは準決勝で敗退しベスト4となりましたが、天皇杯においては念願の優勝を勝ち取り、その結果ACLへの出場権を獲得できました。目標のひとつを達成できたことは、チームにとり大きな自信となり、2022シーズンの目標である、J1リーグ優勝へ向けた重要な一歩となりました。
またチームコンセプトとスタイルの浸透という目標については、コンセプトベースのチーム編成と評価を行い、能力を最大限に発揮するべくクラブとしての環境作りに努めました。
リカルド監督は、「常に主導権を握り、観る人を魅了するサッカー」を表現しながら、ACL優勝監督になるという野心を抱いており、それをサポートするスタッフ、選手の有能かつ野心あふれる「個」が、いかにパフォーマンスを発揮できる環境を作れるかという点がクラブの課題でした。
攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーの展開という点では、成長できた部分と課題として残った部分があり、特に新戦力も数多く加わった夏以降、ボールを保持し、ゲームの主導権を握り、支配することができた試合が数多くあった一方、相手が守りを固めてきたときの対応策の少なさや、セットプレー(攻守)、ボールを保持するかリスクをかけて速い攻めを仕掛けるかの判断等の課題が浮き彫りになりました。
加えて、『前向き・攻撃的・情熱的なプレー』という「姿勢」の点では成長の余地があり、真のプロフェッショナルとしての凡事徹底に努めています。
選手の若返りも進みましたし、ACLでも決勝トーナメントに進出。着々とチームの強化は進んでいる印象があります。
さて、決算数値を確認しましょう。
2019年度〜2021年度 浦和レッズの段階利益
(出所:クラブHPから筆者作成)
2021年度(2022年1月期)の営業収入(売上高)は6,891百万円と前期比19%増加する一方、営業費用は6,990百万円と前期比7%増加したため、99百万円の営業損失を計上しました。
しかしながら営業外損益にて101百万円の黒字を計上した結果、当期純利益はかろうじて2百万円の黒字を計上しました。
スポンサーリンク

営業収入

19%増収の内訳を確認してみましょう。
2019年度〜2021年度 浦和レッズの営業収入
(出所:クラブHPから筆者作成)
入場料収入は前期比48%増収の626百万円となりました。
クラブHPでは、以下の通り48%増収よりも収容制限の長期化による悪影響を強調しています。
全25試合のうち、収容制限5千人が16試合、同1万人が6試合、同1.5万人が1試合、同3万人が2試合であり、入場者数(全25試合)は191,398人でした。
それがどのような水準かというと以下のグラフの様な感じです。
(出所:クラブHP)
コロナの影響のなかった2019年度では、入場料収入は2,300百万円と当期の3倍を軽く超える水準でしたので、収容制限が大きな痛手となったことについては首肯せざるをえません。
広告料収入は前期比4%増加の3,898百万円となりました。
クラブの説明によると、新型コロナウイルス感染拡大による経営への悪影響から、契約満了を余儀なくされるパートナーもあったものの、積極的な営業活動の結果、多くの新規パートナーとの獲得できたことが要因です。
当期の広告料収入は、コロナ禍の影響のなかった2019年度の広告料収入3,841百万円を1%上回ります。営業部門の努力に頭が下がるとともに、景気回復のあかつきには一旦契約満了となったスポンサーの復帰も期待できそうです。2020年度は3,750百万円と2019年度より2%減少したものの、全体としてはコロナ禍をものともせず増収基調を継続しています。
グッズ収入は前期比3%増加の841百万円となりました。
2020シーズンに引き続き、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、オフィシャルショップ「レッドボルテージ」と埼玉スタジアムでの対面販売に回復が見込めない中、EC(オンラインショップ)での販売に注力したほか、月2回の受注(予約)企画を継続的に展開するなどの施策に取り組みました。また、ユニフォーム販売についても、毎月1回、趣向を凝らしたキャンペーンを実施することで、販売枚数増に繋げたほか、11月からは、阿部勇樹選手引退に伴うメモリアルグッズを第4弾まで展開、更には天皇杯優勝の相乗効果もあり、売上841百万円(2020シーズン:814百万円)と期首計画を大きく上回る結果となりました。
ちなみに「受注(予約)企画」とは、こういう企画です。
在庫が発生せず、いい企画だと思います。
その他は前期比175%増加の1,055百万円と約2.8倍となりました。
「その他」には選手移籍関連収入、出場料、出演料、スクール会費収入、育成(アカデミー)関連収入等が含まれていますが、橋岡とレオナルドの移籍金によるものと推察されます。クラブの開示情報では橋岡の移籍金に関して「アカデミー出身の橋岡大樹選手がベルギーのシント・トロイデンに完全移籍し、多額の移籍金をクラブに残した」としています。また、2021年2月に移籍が公表されたレオナルドの移籍金については、2.6億円と7億円の説が報じられましたが、いずれにせよ収入として大きな助けになったことは間違いありません。レオナルドについては「日本代表になりたい」という希望を報じられているのをネットで目にしたことがあり、当時は私もそれを少し期待していたため浦和からの移籍の際は残念に思いましたが、現在になって諸々の経緯を振り返ると、クラブにとってレオナルドの売却は大正解だったのではないでしょうか。
スポンサーリンク

費用について

2019年度〜2021年度 浦和レッズの費用
(出所:クラブHP)
2021年度営業費用の内訳
(出所:クラブHP)
事業運営費、チーム運営費を合わせた経費は6,142百万円となりました。2020年度に比べてホームゲーム試合数が大幅に増加(18試合→25試合)したこと等の影響もあり、試合運営費(前期比132百万円)を中心に経費は全体で346百万円増加したことが主因です。
事業運営費を見る上の一つのポイントは、内訳の一つである事業費用についてコロナ前の2019年度が3,180百万円から28%減少したことです。現場では爪に火をともす様なコスト削減を頑張ったのかなあと想像します。
また、最も重要なのは浦和の選手・監督の人件費です。当期の選手・監督の人件費は3,089百万円(前期比1%減少)とコロナウイルス蔓延前の2019年度の3,228百万円と遜色ありません(-4%)。
そして販管費は前期比14%増加の848百万円となりました(2019年度比7%減少)。クラブからの説明はありませんが、これも事業運営費と同じような事情ではないでしょうか。
以上より、営業損益として99百万円の赤字を計上しました。前期の営業損失は768百万円でしたので、営業損益は669百万円改善されました。営業外損益で103百万円のプラスの内容は不明ですが、当期純損益は2百万円のプラスとなりました。
また、当期末の自己資本比率は35%で前期より1ポイント上昇。コロナ禍の影響がない2019シーズンのJ1平均が35%ですので、問題ない財務状況であると考えます。
2021年度決算のポイントを簡単にまとめると①コロナ規制緩和である程度増収、②移籍金収入による増収、③チーム人件費の維持、④その他費用を一生懸命削減、⑤なんとかトントン、と言えるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました