カテゴリーそれぞれ懐事情は異なる。
「Jリーグ全体での事業規模の拡大」と景気の良いことを書いてきましたが、カテゴリー別にみると事情は異なります。
今日も、「2018年クラブ経営開示情報」を眺めてみます。この資料において開示されている添付の表について、上から気になるところを見てみましょう。
まずはお金の入りの収入をみる
最初は営業収益です。J1の2018年度の営業収益は855億円と121億円(前期比16.4%増)の増加です。
しかしながら、J2は22チームあるにもかかわらず2018年度の売上は338億円と28億円の増加(前期比9.0%増)にとどまりました。J3は62億円と前期比2億円(前期比3.5%増)の増加となりました。
損益計算書の面でチームが力をつけるための財務面のポイントを考える場合、まずは営業収益が最重要でしょう。収益構造を勘案すると、各チームは、営業収益に対し、スタッフの給与やグラウンド使用料などの企業及びチームとして不可欠な固定的な費用を抜き、「さあ選手にいくら使いましょうか」というイメージで各チームはお金を投じていくと考えられます。
以前の投稿で記載したように営業収益の内訳はスポンサー収入がメインです。その構成比はJ1で44.7%、J2で52.5%、そしてJ3で54.3%で半分近くを占めます。このカテゴリー毎に水準が異なるのは広告費というよりも、入場料収入の原資である集客力が異なるためでしょう(J1:16.9%、J2:12.8%、J3:6.5%)。このため、選手がインタビューにて「ファン・サポーターの皆様、並びにスポンサーの皆様」と話すのはよく理解できるところです。
営業収益総額の次に注視しなければいけないポイントは、入場料収入が横ばいであること。繰り返しになりますが、ここからリーグが成長するためには、ここのテコ入れが必要です。各チーム日々努力をしていると思いますが、ビジネスであるからには結果が重要であり、さらなる工夫が求められます。
それから気にしたいのが物販収入です。DAZNマネーを原資とした配分金が注目されましたが、物販収入が追いつく勢いです。サポーターの皆さんの貢献がチーム強化に繋がっている絵が見えて興味深いところです。 贔屓のチームのグッズを買って応援してあげて下さい。
また、「その他収入」の伸びは鹿島のACL優勝によるものだと思われます。
お金の使い方と手元に残るお金
費用については、チーム人件費が最大の項目です。2018年のチーム人件費は、J1が409億円と前期比64億円増加(前期比18.8%増)、J2が149億円と16億円増加(前期比12.7%増)、J3が23億円と3億円増加(前期比5.9%増)でした。興味深いのは、この構成比がJ1で47.8%、J2で44.1%、そしてJ3で37.1%で半分近くを占め、カテゴリ低下に従い下がっていくことです。これは恐らく、不可欠な固定費を除いてからチーム人件費を考えるというお金の投じ方をしているという推察を裏付けているのではないかと思います。また、このカテゴリー毎のチーム人件費の金額の差異により(各カテゴリ内でもあるでしょう)、リーグが想定するビッグクラブの育成につながるのでしょうが、Jリーグの醍醐味である僅差の争いがなくなってしまうのはやっぱり寂しい思いがあります。
その他の費用項目関しては、VARの導入に伴い試合関連経費に影響があるのかが注目されます(ひょっとするとリーグが丸持ちするのかもしれませんが)。それから、リーグを左右するとみられる、アカデミー運営経費の推移も見ていきたいところです。
そして最後はすべての費用を引いた上で残った当期純利益です。J1ですら、2018年度は855億円稼いで10億円しか残りませんでした。J2は同2億円、J3は同2億円の赤字でした。つくづく難しいビジネスです。
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