JリーグがJクラブ親会社のために「大ホームラン」

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日本経済新聞記事「Jクラブへ投資の追い風? 赤字補填、非課税に」

備忘という意味も込めて本記事を投稿します。
6/22の日本経済新聞朝刊に「Jクラブへ投資の追い風? 赤字補填、非課税に」という記事が掲載されました。
記事のポイントは以下のとおり。
  1. Jリーグのシーズン中の試合がコロナ禍で一部しか開催されなかった場合、広告宣伝価値が減り、スポンサーの広告宣伝費は、損金計上されないと解釈される可能性があった。しかし、課税対象とならない損金とみなされることが確認された。
  2. 年度に生じた額を上限に、球団の欠損金を埋める補填や貸付金が損金と扱われ、非課税となることになった。

そもそも損金とは?

税金の基本的な考え方は概ね「売上高-費用=利益」の利益に一定の税率をかけるという考え方になります(ざっくりの話です)。
しかしながら、税金の徴収というのは国家運営の根幹に関わることであり(国家運営にはお金が必要)、税金を計算する上での売上高や費用を恣意的に操られても困ってしまうので、それらの算出方法に一定の制限やルールを課しています。この結果、法人税の計算上、売上高に当たるものを「益金」、費用にあたるもの「損金」とし、「利益」に当たるものを課税所得と言ったりします。

損金計上のインパクト

今回は親会社が子会社であるJリーグチームに拠出した広告費等が損金になるかどうかです。それのインパクトについて、例えばのケースを考えてみます。

損金の取扱いで手元に残るお金は大きく変わる

以下の簡易的な前提条件において、広告費が損金に含まれる場合と含まれない場合を比較し、法人税等の金額、及び手元に残るお金をみてみましょう。
  • 親会社の益金は100億円
  • 広告費以外の損金は80億円。
  • 広告費が10億円
  • 法人税率が30%
この結果、法人税等の額は10億円の広告費が損金算入される場合、法人税等の額は3億円、されない場合の法人税等の額は6億円になります。また、この結果、その期に手元に残るお金の金額は前者が7億円、後者が4億円となります。
この広告費が損金になるかどうかだけで、手元に3億円のお金が残るか残らないか変わりますが、3億円のお金を稼ぐのは大変です。仮に親会社が先ほどのように営業利益率10%(課税所得が益金の10%という水準の準用)かつ、法人税等の比率が30%であった場合、約42億円の売上高を追加で稼ぐ必要があります。大きいです。
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国税庁による通達を読んでみる

記事を何度か読み直したのですが、先ほどの2つのポイントのうち、2の方がすっきり入って来なかったので改めて整理します。調べてみると、Jリーグによる「2020年度 第5回Jリーグ理事会後チェアマン定例会見発言録」の説明と国税庁のHPを調べてみました。
Jリーグが国税庁に確認した事項は以下の3つです。

①自己の子会社等であるクラブ運営会社に対して支出した広告宣伝費等の取扱い

親会社(直接の親会社だけに限らず、例えば、親会社と同一の企業グループに属する関係会社やスポンサー企業で、当該クラブの事業活動を通じて広告宣伝効果を受けると認められるものを含みます。)が、各事業年度において自己の子会社等であるクラブ運営会社に対して支出した金銭の額のうち、広告宣伝費の性質を有すると認められる部分の金額は、これを支出した事業年度の損金の額に算入される。
簡単にいうと、親会社が子会社であるJリーグチームに広告を出した場合、損金になるかどうかの確認です。
ポイントは恐らく2点あって、一つは次の2つの論点に進むための前提条件としての確認です。もう一つは、親会社が子会社に広告費を支払った場合、グループ内でのお金の支払になるので、意地悪く解釈されるとその広告金額が損金として認められない可能性も勘案して、Jリーグ側は本事項を明確化するために項目化したのではないかと推察します。

②親会社がクラブ運営会社の欠損金を補てんした場合の取扱い

親会社が、クラブ運営会社の当該事業年度において生じた欠損金(Jリーグに関する事業から生じた欠損金に限ります。)を補填するため支出した金銭の額(既に貸付金等として経理していた金銭の額を含みます。)は、クラブ運営会社の当該事業年度において生じた欠損金額を限度として、特に弊害がない限り、広告宣伝費の性質を有するものとして取り扱われる。
これは、ある年度に子会社であるJクラブの経営状況が芳しくなく、親会社が損失補填のため、スポンサー料を追加した場合でも親会社の損金算入が認められるということです。また、親会社が子会社であるJクラブにお金を貸し、そのJクラブがその借りたお金を当該年度に費用として支出した場合に、その金額を親会社の損金として認めるという税優遇がプロ野球にはありこれがJクラブについても認められることになりました。

③親会社がクラブ運営会社に対して行う低利又は無利息による融資の取扱い

”親会社が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によりクラブ運営会社の経営が困難となったことに伴い、復旧支援を目的として、相当の期間(通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいいます。)内に、当該クラブ運営会社に対して、低利又は無利息による融資を行った場合には、当該融資は正常な取引条件に従って行われたものとして取り扱われる。”
これは、親会社から子会社へ低利または無利息で融資し、「正常な取引条件にしたがって行われなかった」とみなされた場合、通常行われる融資の利息と低利または無利息で融資した場合の利息の差額が寄付金として扱われることになります。この結果、親会社は子会社であるJリーグからの利息収入に対し、貸付金利ベースではなく、「正常な取引条件」をベースにした利息収入をベースに税額が計算されます。このため、「正常な取引条件」の利息と実際の貸付利息の差分に税率を掛けた分だけ親会社の納税額が上がります。また、子会社であるJリーグチームについても、この利息の差額分が寄付されたことになり、受贈益として課税対象になります。
こうした前提のもと、コロナ禍からの復旧期間の間については、会社から子会社であるJクラブに対し、低利または無利息による融資を行ったとしても、「正常な取引条件ではない」として咎めませんということです。
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所感

私はこれまで、上述のような論点があり、プロ野球には認められて、Jリーグには認められていなかったことも知りませんでした。村井チェアマンのコメントによると、②については親会社ごとに解釈がまちまちであったそです。今回の国税庁への照会で明確化されることになりました。
この、プロ野球に関してのみ認められた特例がJリーグにも認められたことについて、「安易な赤字補填はモラルハザードを生むが、Jリーグはクラブライセンス制度を整備してきた経緯がある。税優遇が野放図なクラブ経営を招かないだけの「ガバナンスが認められたのでは」と木村専務理事」と日経新聞では記載しています。確かにクラブライセンス制度もそうですし、全チームに監査法人を入れて監査をしているという、Jリーグ側のこれまでの努力があってこそでしょう。ファインプレーです。
これにより、親会社としてみれば、Jリーグチームに資金を投入する際の大きな障害が取り除かれ、拍車を掛けることになりうるでしょう。長期的に見れば、親会社のあるチームとないチームとの財務的な差も広がっていくことになるとみられます。グローバルな競争上ではポジティブですが、Jリーグの魅力の一つである、どこが優勝するかわからないという魅力が薄れていくことにも繋がる可能性があります。これは、DAZNマネーの傾斜配分の議論と同じ議論ですね。
なお、日経新聞の同記事によると、「「大ホームランだ」と某クラブの会長は喜んだ」というくだりがありますが、これは恐らくミキティのことでしょう。
Jリーグ56クラブの内、20クラブが親会社を持つそうですが、今後の親会社の投資姿勢にも注目です。

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