<Jリーグ全チーム>2019シーズン決算各種ランキング

2019シーズン決算が公表

こんにちは。7月末にようやくJリーグ各クラブの2019年シーズンの決算が出揃いました。Jリーグの多くのクラブが1月決算であるものの、柏、湘南、磐田など一部クラブが3月決算を採用していること、それから今年はコロナ禍により集計作業に時間を要するチームもあったことから出揃うのが7月末となりました

内容としては、公表された損益計算書及び貸借対照表から気になる数値を引っ張り出し、ランキングを付けたというシンプルなものですが、並び替えるだけでもなかなか楽しめます。

なお、コメントについては、自らの不勉強により、J3リーグクラブへのコメントは少なめです。今後少しずつ勉強していきます。

なお、各種ランキングの金額は百万円単位ですので、よろしくお願いします。

営業収益ランキング

まずは営業収益(売上高)です。全体の平均営業収益についてまず触れます。J1リーグの平均営業収益は4,951百万円でした。後述するトップの神戸を除いても4,569百万円が平均です。10年前のJ1リーグの平均営業収益が3,301百万円でしたが、今や50億円がJ1リーグ定着の基準と言えるでしょう。なお、J2平均が1,655百万円、J3平均が464百万円です。

個別チームの話に移ると、先述の通り2018シーズンよりトップに躍り出た神戸が今年もトップです。Jリーグクラブとして初めて100億円を超えました。

欧米クラブとの比較をしてみます。デロイト作成の「Football Money League(2020年1月)」によると、トップのFCバルセロナの収入が840.8百万ユーロ(1ユーロが130円として、1,093億円)、2位のレアル・マドリードが757.3百万ユーロ(同984億円)、3位のマンチェスター・ユナイテッドが711.5百万ユーロ(同924億円)と、Jリーグクラブと欧州メガクラブとの営業収益の差は大人と子供ほどあります。

同レポートの中でのリストの下位クラブを見てみると、28位ゼニト180.4百万ユーロ(同234億円)、29位FCポルト176.2百万ユーロ(同229億円)、30位クリスタル・パレス174.5百万ユーロ(同226億円)とやはりJリーグのクラブとまだまだ差があります。

神戸の次に注目すべきは川崎です。鹿島が前年の7,330百万円から7.7%減収したため、代わって川崎が3位に浮上しました。しかしながら、川崎がリーグ高水準の営業収益を確保出来ている主因は1,792百万円という多額のJリーグ配分金によるものです(次に多いのは鹿島の775百万円)。2019シーズンは優勝を逃したため、2020シーズンのJリーグ配分金は減少すると見られます。引き続きリーグ上位成績を目指す一方、安定的な収入をさらに伸ばしたいところです。

営業収益4位の名古屋は、J1リーグ成績13位と成績に見合っていません。

次に触れたいのは、J1並みの予算を確保するJ2のクラブ、大宮、柏、千葉です。柏は1シーズンでJ1復帰を果たし、たまたまの降格だったことを証明したわけですが、最深刻なのは千葉です。確認出来る限り、2007シーズン、2008シーズンには3,000百万円以上の営業収益を誇り、J1中位の予算規模を確保していましたが、長年のJ2生活で現状は2,838百万円と、リーグ全体の財政規模の底上げが進んでいる中で沈下しています。今のままだと、並のJ2チームになってしまう可能性がありそうです。大宮はまさにその千葉を追いかけている存在と言えましょうか。新潟もそうかもしれません。

チームとしての健闘が見られるのは大分です。営業収益25位とJ2水準の営業収益規模でJ1リーグ9位の成績を残したことは立派です。

J3に焦点を当て、リーグ成績とのバランスで心配なのは熊本でしょうか。同様の営業収益規模の北九州はJ2に復帰したから良いとして、熊本も早々にJ2に復帰しないと、営業収益がお辞儀し始め、J1になかなか復帰出来ない新潟のようになってしまう可能性がありそうです。

最後に言及したいのは長野です。長野はJ3ではビッグクラブですが、J3所属当時に財政規模のより小さかった琉球や鹿児島に昇格に先を越され、J3の門番化している感があります。そろそろ長野をJ2で見たいところです。

増収率ランキング

増収率はクラブ経営の勢いを示すのに良い指標です。増収組は①カテゴリー昇格・新規参入によるもの、②好調な成績によるもの、③マネジメントによるもの、④その他、に分類されるのかなと考えています。また、各クラブは必ずしも4つに分類されるわけではなく、複数のカテゴリに分類されるクラブもあると言えるでしょう。

1位の琉球から4位の八戸までは①にカテゴリー分けされます。5位以下のチームにクラブ事情が反映されたものが見え始めます。まず、5位の町田です。スポンサー収入が前年の370百万円から666百万円に増加しました。③に分類され、サイバーエージェント効果です。6位の名古屋は前シーズンの3,345百万円から4,077百万円と大幅にスポンサー収入が増えたのが主因ですが、残留争いの中の補強のため、トヨタからのスポンサー収入を積み増したのではないかと推察します。これもある意味マネジメントに起因するものだと思います。7位の水戸と10位の札幌は②と③の両方に当てはまるのではないでしょうか。クラブとしての取り組みに注目したいチームです。

減収の方を見てみましょう。減収したのは55クラブのうち、18チームです。減収の方は前年比5割以下の減少であれば年ごとの変動とみても良いのかなと思いますが、①カテゴリー降格によるもの、②成績不振によるもの、③マネジメントによるもの、④前シーズンの反動減、⑤その他、に分類される印象です。

ボトム3を見てみましょう。ワースト1位は岩手です。その他収入が268百万円から37百万円に減少したのが主因です。現状の岩手の営業収入は概ね同水準なので、前シーズンが移籍金獲得等によるボーナスステージだったのではないかとみられます。

ワースト2位が鳥栖です。いくつか記事を投稿させていただきましたが、非常に厳しい状況に置かれています(参考記事1参考記事2)。社長がサポーターとのミーティングにて、これまでの主力スポンサーに代わる新たなスポンサーを発表する旨話していましたが、あれから何ヶ月も経つものの音沙汰がありません。

ワースト3位が柏です。柏は例年200〜500百万円程度のその他収入について、前シーズンに933百万円(恐らく移籍金)を計上した反動です。

スポンサー収入ランキング

スポンサー収入の上位はやはり日本を代表するような大手企業を親会社に持つクラブが顔を揃えています。健闘しているのが11位の清水と16位の長崎でしょうか。清水については、左伴前社長の営業意識が奏功したものと思われますが、そして長崎はスポンサー収入のうちジャパネット以外がどれくらいなのかが興味深いところです。

奮起を期待したいのは45位水戸と52位琉球です。水戸市の人口は27万人です。他のホームタウン都市を加えればもっといます。琉球の那覇市も人口は30万人です。一方で、例えばより多くのスポンサー収入を稼ぐ甲府や山口は20万人弱の人口です。もっと出来ることはありそうな気がします。

最下位のYS横浜は桁が違いますが、大丈夫でしょうか。

なお、JFLにて過ごしたFC今治のスポンサー収入は409百万円で、J2下位レベルの収入を獲得しています。

入場料収入ランキング

本当はこの欄は、各スタジアムの収容率と共に読み解くのが基本ですが、作業としてはしんどいので別の機会に譲り、純粋にランキングに対する所感を記したいと思います。

まず、上位にはいわゆるJリーグのビッグクラブが並びます。浦和がトップなのに違和感はありませんが、マリノスが2位なのは意外でした。いつもスタジアムがスカスカな感がありますが、収容人数4万人くらいの専用スタジアムを会場に出来るのであれば盛り上がりそうなので、通ってみたいです。

次に4位ガンバです。万博競技場使用時とパナソニックスタジアム吹田への移転後の入場料収入等を下表の通り比較してみました。

粗利イメージとして計算した(A)-(B)がそのままの粗利を示すかは不明ですが、少なくとも移転は収支上もプラスに働いていることが推察されます。また、新たなサッカー専用スタジアムの効果としては、33位北九州、そして27位京都などの入場料収入も今後どこかで確認していきたいと思います。

次は新潟です。絶対額としてJ2クラブの中でも健闘が光りますが、実は下表の通り減少傾向です。

玉乃新GMによりテコ入れが期待されるところです。

物販収入ランキング

物販収入については、いくらあれば多くていくらあれば少ないというところが私の方で見えていませんが、ランキングを載せておきたいと思います。理由は、物販収入は、リーグ配分金や入場料収入と異なり、スポンサー収入(及びアカデミー収入)と並んで天井がないためです。

物販収入のところで個人的に注目しているのが、ホームタウンの人口が少ないにもかかわらず2位につけている鹿島、変わり種の企画が多い3位川崎に関心があります。そして、意外に上位につけているのが19位長崎です。この辺りも取り組みをみて行けたらと思います。

出張に出た際、時間があるとファンショップを除いているのですが、場所であったり、品揃えであったり、売り方であったりが基本的にささやかです。一般論としてもっともっと各チームは商売っ気を出していいと思っています。

チーム人件費ランキング

人件費の平均を先に記しておくと、2019シーズンはJ1平均が2,500百万円、J2平均が765百万円、J3平均が202百万円です。

個別のチーム人件費については、1位神戸が突出しています。しかしながら、チーム人件費のうち、イニエスタ(推定30億円)、ポドルスキ(推定6億円)、フェルマーレン(推定5億円)、サンペール(推定1億円)などの年俸も差っ引き、日本人選手だけで見ると、3,000百万円弱ではないでしょうか。一般的な上位チームの人件費水準と言えそうです。

2位の人件費を費やした名古屋はリーグ成績は13位でした。名古屋の人件費は2018シーズン(J1 15位)は2,823百万円、2017シーズン(J2 3位)は1,843百万円、2016シーズン(J1 16位)は1,984百万円でしたので、数年前と比べたら2倍になっています。仮に今期も同じくらいの額を投じるのであれば、より上位の成績が期待されます。

その他だと、5位柏の人件費が目を引きます。前期の柏は2チームを作れるくらい補強をしたという話を耳にしたことがありますが、J1に必ず復帰するという強い意志がこと数字から見て取れます。

そして、カテゴリの水準からみて、少ないことが目立つのは25位大分及び43位琉球です。それぞれJ2及びJ3カテゴリ並みの人件費で、現状のカテゴリにおいてしっかりと成績を出しています。

売上高人件費率ランキング

人件費ランキングの流れで、人件費率のランキングも作成しました。2019シーズンはJ1平均が50%、J2平均が46%、J3平均が28%です。カテゴリが下がると共にその水準が下がるのは、人件費以上に企業としての運営のための一般管理費等が優先されるためではないかと考えます。とりあえずは、J3はさて置き、クラブ運営上は人件費率は50%を基準に見れば良いのかなと思います。

アグレッシブに人件費を投じる50%以上のクラブに目をやってみましょう。1位の鳥栖は他の稿に譲ります。鳥栖と同じく9割を超える人件費率の2位柏も異例です。しかしながら、先述のように、赤字も構わず必ず翌期にJ1に復帰するというなり振り構わない決意を金額以上に感じる数値です。

3位セレッソについては、「関連する法人(アカデミーなどサッカー及びその他 関連する事業を運営する法人)の営業収益」で別枠の営業収益として2,146百万円を計上しています。そもそも、詳細な実態が私にはわからないため、控除していますが、これを加味すると人件費率は40%となります。2018シーズンより開示され始めた、この関連する法人の営業収益の位置付けは判断し難いところですが、前年の数値も同水準(人件費率60%、関連する法人の営業収益を勘案した人件費率38%)でしたので、セレッソとしては例年平常運転としてこのような運営方法を採用しているのだと思います。

4位神戸については、イニエスタの人件費を30億円として控除し、そのための減資として恐らく楽天から入っている30億円を営業収益から控除すると46%になります。

最後に、最下位YS横浜の15.7%というのが気になります。営業収益が最下位であるにもかかわらず、人件費率も桁違いに低い水準となれば、どのような給料が支払われているのかとびっくりです。一応、今期の登録選手数が27名、監督及びコーチが3名、これを前期並みの32百万円を分配すると、年俸平均が106万円です。どうなっているのでしょうか??

自己資本比率ランキング

最後に自己資本比率です。自己資本比率とは、貸借対照表で見る会社の安全性を示す指標です。何%あればいいのかという絶対的な数値はないですが、業界ごとに概ねの水準があったりします。2019シーズンの自己資本比率の平均は31%でした。J1リーグでは更に5%高い水準が平均ですが、概ね3割が業界水準と考えて良さそうです。この結果、及び世間一般の水準と掛け合わせて、独断に基づいて考えると、①30%以上:財務状況に特段の懸念は発生していない(この区分の数字の違いはクラブ毎の財務方針に依る)、②20%〜30%:懸念が直ちに生じていないものの注視、③10%〜20%:黄色信号。財政状況の改善が望まれる、④10%以下:オレンジ信号。何かの拍子で経営危機が表面化する可能性あり、という目線で良いのかなと考えています。但し、親会社のあるクラブは必ずしもこの区分分けに該当せず、親会社の信用力と合わせて検討するものと考えています。

まず、20%以下を中心に見ていくと、まず気になるのは42位湘南でしょうか。湘南はライザップが親会社ですが、経営が揺らいでいます。この辺含めて、今走っている今期のコロナ禍を踏まえた決算後に動きがあるかもしれません。

そして、財務問題とは別になりますが、シティグループとの提携を終えるという報道のあった48位マリノスにも注目です。シティがいなくなった後の日産自体がコロナによるリストラモードですので、次の方針を注目したいところです。

50位横浜FCは小野寺グループというところが親会社です。非上場であるため情報が少ないものの、HPによると売上はグループで943億円ある模様です。給食や外食が主力事業とみられ、コロナ禍の本業への影響が相対的に大きい業態と見られます。他のクラブと同様にコロナ禍後も支えられるかが注目されます。個人的にはオーナーのクラブへのコミットが強いように見えるため、なんとか出来るのではないかと思いますが。

49位鳥栖は先述の通りです。

最後に親会社のないチームとしての最下位の鳥取は心配です。J2、J3で長年のチームとしての積み上げがありますが、財務状況としては積み上げに繋がっていない模様です。但し、長年のチームとしての活動は、コアなファンや地縁などを構築していると思いますので、経営としての今後の立ち回りに関心が持たれるところです。

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