サガン鳥栖2020年1月期決算レビュー:記録的赤字

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2020年1月期損益計算書

損益計算書概要
JリーグのHPから鳥栖の決算が発表されました。営業収益は2,561百万円と前期比40%減少しました。営業費用は4,459百万円と前期比2%増加にとどまったものの、あまりにも営業収益の減少が大きかったため、1,898百万円の営業損失(前期も136百万円の営業損失)、経常損失2,013百万円(前期は580百万円の経常損失)、当期純損失2,014百万円(前期581百万円の当期純損失)と記録的な損失を計上しました。
以前、速報ベースで本件について記事を投稿しましたが、周りの状況なども踏まえてアップデートしたいと思います。

営業収益

まず、損益計算書を上からみてみましょう。営業収益は40%前期比減となりました。追って目の当たりにすることとなりますが、売上高のブレは利益段階になると何倍にもブレます。40%減少の売上高の減少を見かけることがあるとすると、経営に困って事業を切り売りする会社や行政処分で事業が止まったような会社で見かけるイメージがあります。要はそれくらいインパクトが大きい印象です。
2019シーズンJ1リーグ営業収益ランキング
この2,561百万円の営業収益ですが、2019年1月期(2018シーズン)は18チーム中9番目の大きさでしたが、20201月期(2019シーズン)は決算を発表しているJ1リーグ16チーム中下から2番目です。これまで、クラブの成長と共にJリーグのビッグクラブのグループを伺う勢いでしたが、切り詰めて闘う小規模チームからの再スタートとなります。ちなみにJ1リーグ平均(現時点開示済みの16チーム平均)が、5,163百万円ととうとう50億円台に乗り、J2リーグの平均が1,654百万円でした。ちなみにJ1リーグの平均(現在開示の16チームが前提)は、神戸なしでも4,744百万円で、そもそもこういう規模の営業収益がスタンダードになっていることがわかります。

営業収益の内訳

営業収益内訳
営業収益の内訳を見てみましょう。
スポンサー収入は810百万円と前期比65%減少となりました。前期の2,296百万円から大幅な減少ですが、J1では大分(726百万円)の次に少なく、J2では甲府、岡山くらいのサイズです。DHC、サイゲームスの撤退が大きく響いています。
その他、気になるところをあげると入場料収入は760百万円と前期比12%の増加で、トーレス引退に絡む効果でしょうか。その他収入は276百万円で前期比55%減少で、移籍金等の増減と推察しますが、ここの影響も大きいです。クラブのマネジメント力の観点で、決算の着地を睨みながら選手の移籍をまとめるという技術があると財務の安定に寄与できます。今回はとにかくスポンサー収入のところが大きいですが。

営業費用の内訳

営業費用内訳
費用面を見てみます。営業費用は先述の通り前期比2%増加ですので、考え方としては、営業収益の落ち込みが最大の理由です。しかしながら、その前年度の決算でも581百万円の赤字でしたので、かなり悪かった状況から今期は最悪の最悪に振れたという印象です。
チーム人件費は2,528百万円と前期比5%の減少となりました。選手の移籍等は私のほうで頭に入っていませんが、財務の状況をみながら出来るだけ前期に比べ補強等を控えたのかもしれません。ここで、営業収益40%減及びスポンサー収入65%減の次に恐ろしい数値があるのですが、売上高人件費率が98.7%という数値です。一般に、50%程度が目安と言われています。大分の財務危機の際が70%程度となりましたので、桁違いです。
その他、内訳をみてみると、試合関連経費が469百万円と12%増加し、物販関連費が244百万円と51%増加したのは、トーレス関連のイベントによるものではないかと推察しています。
その他、トップチームの運営経費の減少はコスト削減、アカデミー運営経費は売上が減少しているため、生徒減少により減っているのかもしれません。
その他、営業外損益や特別損益では目立ったものがなく(営業外費用は支払利息でしょう)、2,014百万円の当期純損失という記録的な損失を計上しました。
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債務超過回避

この結果、前期末の純資産は36百万円でしたので、約2,000百万円の債務超過となりますが、それに応じた増資(約2,000百万円)を行い、21百万円の純資産を計上しています。一応、債務超過は回避となりましたが、20201月期末の自己資本比率は3.0%と極めて厳しい状況にあります。コロナ禍のため、どこのチームも今期は赤字計上の可能性が高いことから、鳥栖において21百万円以上の赤字計上の可能性は高いと思います。結果、引き続き改めて増資に取り組まなければならない可能性が高いのではないかと思料します。

なお、J1チームの水準は下図の通りです。
2019シーズンJ1チーム自己資本比率
それから、この2,000百万円もの増資をしたのがどこの会社なのだか知りたいところです。竹原社長はサポーターミーティングでいずれ新スポンサーを発表するようなことをおっしゃっていましたが、なかなかその辺りの発表がないので、かなり邪推なのですが、ひょっとすると一旦自社で出資し、改めて差し替えによる引受先を探している可能性があるのかななんて思ったりしています。
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トーレス効果

トーレス加入の効果について、試合開催及び物販収入の観点から効果を見てみたいと思います。
本来は、これに加えてスポンサー収入を見るべきなのですが、今回の鳥栖のケースは経緯的にそういう感じもしないので含めません。
試合開催損益と物販関連損益
結果、トーレスが入団する前と比べ、収入は上がっているのですが、同時にコストが上がっているため、利益面(粗利)としての特段の効果は見えません。物販のところはむしろ数字が落ちています。
PL上はトーレスよりも順位のインパクトが大きいということかもしれません。今後、クラブは若手の育成等でトーレスとのつながりを活用していく方針とのことですが、是非、回収の上、大きな成果に実らせることを期待しています。
現時点において、トーレス加入で利を得たのは、鳥栖ではなく、他チームのサポーターや営業ではないでしょうか。

今期計画について

5月30日付の週刊ダイヤモンドの記事に鳥栖の今期計画について記されています。数字に関する部分を抜き出すと以下のとおりです。
  • チーム人件費を半分以下となる、11億6900万円にまで圧縮した予算を編成
  • スポンサー収入を前年度より多い9億5500万円で組んでいる
  • 今年度予算が1200万円の黒字を見込んでいる
「なるほど」と思いこの数字を2020年1月期に当てはめました。
・・・・・・・5億足りない。
個人的には、955百万円のスポンサー収入獲得は竹原社長には可能なのではと思っています。
その他、何の収入を増やすのか。例えば、入場料収入と物販収入はトーレスがいない中でどれだけ増やせるのか。Jリーグ配分金は上位に入らない限り、大幅増収は厳しそうに見えます。そして移籍金も取れるのか。費用についても、販管費は2億くらい減らせそうな気がしますが、これ以上大幅に減らせるものはちょっと想像つきません。
竹原社長のウルトラCによるスポンサー獲得が実現するのであれば、目標の利益水準の着地の可能性があるのではという気がするのですが、今期の鳥栖はこの5億をどう埋めて着地するのかを注目したいと思います。

 

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