恒大集団を取り巻く壮大な祭りは広州恒大に飛び火するか

東アジアの雄、広州恒大

ACLでお馴染みの強豪である広州恒大はこれまで、リッピ監督を招聘したり、コンカやムリキなどなどの外国籍選手の大型補強をしっかりと生かし、これまで中国スーパーリーグを8回制覇。ACLは2回制覇し、我々に中国の勢いを存分に思い知らせてくれました。そして、現在、10万人収容のこんなスタジアムが建設中であり(2022年の終わりまでには完成予定)、「陸上競技場だ」、「専スタだ」と一生懸命議論している日本人のスケールを超越したインフラ整備が進んでいます。
(出所:sportsvenuebusiness.com)

恒大集団に起きていること

そんな広州恒大ですが、親会社が大いに揺れています。
10/3付日経新聞朝刊にて「不動産・恒大、募る財務不安」という記事が掲載されました。
記事によると、恒大集団の財務状況が中国人民銀行(中央銀行)が新たに設けた規制基準を超えているとのことです。総資産額に対する負債の比率が70%を超えるなどの条件に該当する企業は、金融機関からの融資を制限することになっているのですが、恒大の負債比率は85%で、当該基準にヒットします。
言い換えれば自己資本比率が30%を下回ると中央銀行の基準に抵触し、恒大集団は15%であるということです。自己資本比率15%ということは、この数字だけを見る限り、良くはない財務体質と評価できますが、お先真っ暗な水準とは言えません。倒産のきっかけとなる資金繰りは別の問題ですし、恒大集団の正常とされる資産の中には、不良資産も混じっているかと思いますので、正直なところ実態は評価しにくいです。報道を読む側からはこの「自己資本比率15%」は参考的な数値の一部と言えるでしょう。数字だけでは。
9/25に大手格付会社のS&Pは長期信用格付をB+の格付とし、見通しをネガティブとしました。なお、ムーディーズもB2とし、見通しをネガティブとしています。簡単にいうと、恒大集団の格付はいわゆる投機的格付を与えられており、債券を発行すればジャンク債扱い。そして、その格付はさらに下げられる可能性が高いということです。詳しく把握する必要はありませんが、例えばS&Pのレーティングについては以下のような定義づけとなっており、恒大集団はかなり香ばしい評価がされていることが分かります。
S&Pの格付の定義
(出所:S&P)

恒大グループと広州恒大

恒大グループは中国を代表する不動産事業を中心としたコングロマリットです。有名な海外経済誌フォーチュンにおいて、「グローバル500社」にも選ばれており、一定の世界的な認知があります。
2019年の売上は約7.4兆円で包括利益は約5,165億円と立派な数字です(2018年は1兆円を超える包括利益でした)。
先述の通り、グループは一見立派に稼いでいるようですが、大きな負債を抱えており、2019年末の貸借対照表上は28兆円の負債を抱えています。負債が大きくても、返し得るだけの稼ぐ力があればいいのですが、2019年のフリーキャッシュフローがマイナス1.9兆円でした。返済をするお金を稼ぐどころか、流出させています。債務不履行の懸念も囁かれているようです。
 広州恒大の借入の期限や債券の償還期限を踏まえた返済予定が以下のブルームバーグまとめの表です(黒は米ドル建債券の償還、ピンクが香港どる建債券の償還、水色が元建債券の償還、黄色が香港ドルの借入返済)
到来する返済期限
まず、2020年の第4四半期に、色々借入や債券の償還がある中の60億ドル(約6,300億円。表の「$6B」の目盛。)の返済期日が迫っています。
また、9/30にはブルームバーグより、以下の記事が出されています。
中国不動産開発大手の中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)は29日、来年1月に一定の条件下で買い戻しを求める権利が戦略的投資家に発生する問題で、投資家側が保有する1300億元(約2兆円)相当の持ち分のうち、約863億元分の投資家と保有継続で合意したと発表した。50兆ドル(約5,285兆円)規模の中国金融システムを揺るがす恐れもあった流動性危機回避に向けて大きな一歩となる。
この「持ち分」とは債券と株式どちらなのかと確認すると英文記事を一生懸命確認する限り株式のようで、つまり先ほどの表に加えて、更に2兆円の資金が必要となっているのをなんとか交渉しているようです。
更に9/29のブルームバーグからの記事「中国恒大のリスク封じ込め、劉鶴副首相ら当局幹部が検討-関係者」ではこう記載があります。
政府内の議論は、中国恒大の債務問題が政府高官の警戒を呼んでいる状況を浮き彫りにする。同社は銀行、シャドーバンキング(影の銀行)、全国の個人投資家に880億ドル(約9兆2950億円)の債務を負うなど、貸借関係が複雑に広がる。さらに世界の債券投資家から350億ドルの資金を調達しているほか、未完成物件の頭金を200万余りの購入予定者が払い込み済みだ。
このくだりのところで気になるのは、シャドーバンキングの金利はどれくらいなのだろうということと、未完成物件の頭金です。仮に仕掛りの住宅工事が止まってしまった場合、暴動などに繋がってもおかしくないような気がします。
一応、先述の返済交渉以外にも、恒大集団は9月には「すべての不動産を30%値引きする」と現金確保に取り組んでいる旨の報道がありました。
しかも、「5,285兆円規模の中国金融システムを揺るがす」というのがすごいですね。これでは、流石に中国政府自体も国家の問題として乗り出すわけです。経緯全体を見る限り、なんともスケールが大きいというか、大味というか。

広州恒大の状況

さて、ここから広州恒大なのですが、現時点では14試合を消化し、今年も中国スーパーリーグでトップをひた走っています。
その上で、2019年の決算を報じるニュースを見つけたのですが、2019年は288億円の赤字でした
上述のような親会社の状況の中、このような赤字の垂れ流しが継続できるのかというと当然否であると思われます。そもそも、恒大集団は借入を行い投資をし、拡大してきた経緯がありますので(一般的に不動産ディベロッパーはそうですが)、借入は重要な事業要素であり、グループとして借入制限にマイナスな要素を取り除くために真剣に取り組むはずです(むしろ、借入を増やすより、会社を維持するために今の借入を貸し続けてもらうことが現実となります)。
そこで、この赤字の球団がどうなるかに思いを馳せることになりますが、今年の5月頃、中国スーパーリーグのチームがいくつも破産したという報道がありました。例えば、CSL1部の天津天海をはじめ、破産したチームは広東華南虎(2部)、四川隆発(2部)、遼寧宏運(2部)、上海申キン(2部)、銀川賀蘭山(3部)、大連千兆(3部)、福建天信(3部)、延辺北国(3部)、吉林百嘉(3部)、南京沙叶(3部)、保定容大(3部)などがあるようです。
広州恒大については、このようなシナリオが該当するのかということになりますが、広州恒大には、実はアリババが37.81%出資しています。このため、広州恒大の正式名称はGuangzhou Evergrande Taobao F.C.と言います。2014年に、当初アリババが広州恒大に出資した際は50%の出資比率でした。この出資比率低下の経緯は不明ですが、アリババが救いの手を差し出す可能性は十分にありそうです。
仮にアリババが広州恒大を救済しても、これまで経営方針を変える可能性はありますし、よっぽどのことがない限りそもそも赤字の垂れ流しはどこも認めないでしょう。そして、アリババは創業者のジャック・マーもいなくなり、いわゆる単なるの中国の国営企業の一つとして運営されている可能性もあります。アリババが広州恒大を飲み込んだとしても、先の先はどうなるのか不透明です。
昨年、中国サッカー協会は、2019年11月20日以降に契約した外国籍選手の給与額について、300万ユーロ(約3億6000万円)を超えてはならないという上限が設けました。コロナの影響による全体的な混乱はあるものの、様々な要素からACL内での構造変化は進んでいきそうです。

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