ACミラン:中国資本のキックアウトとBlue Skye

ACミランの経営陣

ミランのアニュアルレポートを開いたところ、初っぱなにボードメンバー一覧があったので、どんな人たちがメンバー調べてみました。
そもそもミランはべルルスコーニから中国人に売られたんじゃなかったっけ?Skye investmentって何だ?と思いました。ご存知の方の方が多いのかも知れませんが、浦島太郎の私は少し調べて見ました。
2020年10月13日時点のACミランの役員一覧とそれぞれの略歴は以下の通りです。
ACミランのBoard of Directors
金融エリートと法律家が名を連ねています。どこかのピカピカの会社のような顔ぶれです。それぞれの経歴はアングロサクソンの「ファンド」的な面子です。
ちなみに、Ivan Gazidis氏は、監督招致を巡ってかつて取締役に就任していたボバンやマルディーニと揉めた人です。

べルルスコーニから中国人投資家へ

そもそも、どうしてミランが中国人投資家の手に渡ったのか振り返ってみましょう。
ACミランはベルルスコーニが保有するフィニンベスト社が保有していたのですが、年間5000万ユーロを超える規模で赤字を垂れ流しつづけるミランを持ち続けることは出来ないと手放すこととなりました。
買ったのは中国人投資家のリ・ヨンホン氏です。740百万ユーロが購入価格と言われています。しかしながら、うち300百万ユーロはアメリカの富豪ポール・シンガー氏に設立された、エリオット・マネジメントから高利での借り入れによるものでした。
エリオットは、アルゼンチン政府と争い、大儲けしたこと世界的に有名です。日本でも物言う株主として有名で、不動産業のユニゾホールディングス争奪戦、アルプス電気とアルパインの統合、そしてソフトバンク株保有でも存在感を示しました。
結局、リ氏は約1年後にエリオットへの返済ができず、経営権を手放します。リ氏保有の株は担保に入れられていたのでしょう。「世界で最も卑劣で、最も精通し、最も攻撃的なヘッジファンドと、どこから来たのかわからない2〜3人の中国人の戦いだった」、「いずれにせよエリオットが勝つのだ」、「リ氏がお金を払ったらエリオットの勝ち、払わなくてもクラブを手に出来る」とフィナンシャルタイムズでは関係者の話として描写しています。
私としては、なぜその中国人がそのような建て付けにてミランを買いに行ったのか、関心がありました。

紆余曲折のクロージング

近年は、中国人=金持ちで金払いが良いというイメージがありますが、契約のクロージングは多くの紆余曲折があったようです。Wikipediaのリ氏の記事に詳細な経緯が記されています。
2016年8月、基本合意の契約を締結します。ACミランは、Sino-Europe Sport Invest Management Changxing Co., Ltd と契約を締結します。合意事項は、以下の通りです。

①譲渡価格は740百万ユーロ(ミラン220百万ユーロの債務引受を含む。別途7/1からクロージング時までの費用90百万ユーロ含む)
②クロージング日(契約実行日)は201612

そして、契約締結後速やかにSino-Europe社は、預託金として100百万ユーロをフィニンベスト社に支払いました。
譲渡価格について、価格は740百万ユーロですが、220百万の債務引受がACミランに対する保証にとどまるのであれば、譲渡時に必要なのは740百万ユーロ-220百万ユーロ=520百万ユーロですね。
まず、このSino-Europe 社が香ばしいです。中国政府の信用情報システムの登録では、同社のオーナーはチェン・ハサンという人がオーナーとして登録されていますが、実質のオーナーはリ氏とPEファンド海峡中欧私募投資基金だとのことです。更に、フィニンベストとの契約時の同社の代表は、デビッド・ハン・リ氏となっていました。
201612、契約で定めるクロージング日がやって来ます。Sino-Europe社は残額の支払を出来ませんでした。クロージング日は2017年3月に延期されました。しかしながら、Sino-Europe社は香港にある子会社2社を通じ、2回目の預託金として追加の100百万ユーロを支払いました。なお、香港当局によると、当該子会社はヴァージン諸島の会社から約100百万ユーロを借り入れていました。
20173月、延期したクロージング日がやってきました。やっぱり残額の支払は出来ませんでした。300百万ユーロをエリオットマネジメント関連会社から、リ氏が間接的に所有するミランの親会社が借入を行ないました。その融資に関しては、Blue Skye社も貸付に参加していたとも報じれられています。
2017413日、 ようやく譲渡は完了します。最終的に譲渡価格は606百万ユーロでした(90百万ユーロのミランに対するコスト分も含む。またACミランの借入220百万ユーロの借入は別途)。これまで、200百万ユーロを支払いました。残りの400百万円ユーロにつき300百万ユーロをエリオットから借り入れているので、別途106百万ユーロを自ら集めてきたのでしょう。
譲渡完了後、ACミランが128百万ユーロの債券を発行し、最大60百万ユーロの増資を実施することが計画されました。

債務不履行

なんとか譲渡をクロージングできましたが、リ氏は資金繰りに苦しんだ様子です。
2017年9月、ロイターがリ氏が計画していた60百万ユーロの増資のうち、27百万ユーロしか払い込んでおらず、リ氏の資力や支払の意思についての疑問を報じました。
2017年10月、リ氏は香港Rossoneri Sport Investmentを通じて、香港の上場企業Teamway社より8.3百万ドルを借り入れ、Rossoneri Sport Investmentの親会社であるRossoneri Advanceの株式を担保に差し出したとTeamway社より公表されます。何百億円の取引をするような人が、9億円の借入のために事業対象の会社株式を担保に入れるというのは、相当追い込まれています。
2018年7月、エリオットがリ氏に対し、クラブの運転資金のための追加融資のうち32百万ユーロが期限までに返済されなかったため、その担保としても設定されていたミランの全株式に対する質権行使し、これまでリー会長に融資した全額(およびその利息)と引き替えに、ルクセンブルクに本社を置くミランの持ち株会社の保有権を手にしました。
こちらの記事ではエリオットからリ氏への融資は、利息約10%、期間は18カ月だったそうです。2017年12月22日のフィナンシャルタイムズ記事によると、リ氏がミランに出資するためのルクセンブルクの会社が180百万ユーロを11%以上の金利で、ミラン自体が128百万ユーロを7.7%で借り入れていると報じています。
いずれにせよ、このご時世でびっくりするような条件です。

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