債務超過はベガルタ仙台だけではない。J全クラブの債務超過/資産超過を試算してみた

ベガルタ仙台 河北新報が債務超過の見通しと報道

Jリーグクラブは12月とか1月決算なので、そろそろ着地見込みの話が出てきてもおかしくない時期です。

そんなところでベガルタ仙台が債務超過の見通しであると9月18日に河北新報が報じました。

ベガルタ、3億5000万円債務超過 20年度見込み コロナで収入大幅減

サッカーJ1仙台などを運営するベガルタ仙台(仙台市)が、2020年度決算で約3億5000万円の債務超過に陥る見込みであることが17日、分かった。新型コロナウイルスの影響で入場料収入とスポンサー収入が大幅に減少し、営業収益が前年度比9億円減の約18億円まで落ち込むため。経営改善策の一環として、サポーターらに近く運営資金の募金を呼び掛ける。 河北新報社の質問に菊池秀逸社長が書面で明らかにした。入場料収入は予算比5億4000万円減の1億5000万円、スポンサー収入は同3億円減の9億8000万円にとどまると試算。最終赤字は現チーム名となった1999年以降最大の約7億円を見込み、純資産3億5600万円を上回る。  Jリーグの規定では、債務超過に陥るとリーグ参加資格となるクラブライセンスをはく奪されるが、今期は新型コロナによる特例措置で適用されない。菊池社長は「来期も特例措置を継続するかはリーグが今、検討中」と説明した。  今後は経営改善を進める。19年度に約13億円を計上したチーム人件費は「リーグで最低の水準にあり、J1で戦い続けるには最低でも現在の金額が必要」と来期も維持する方針。経費削減に向け、1日にはマイナビベガルタ仙台レディースの経営権譲渡を発表したが、他の支出項目も「聖域を設けずに予算を削減する」とした。  収入面では、感染予防による試合の入場制限が続き入場料収入の回復は見通せない。19年度並みの営業収入を達成するには「少なくとも15億円のスポンサー収入が必要」と強調。新規協賛の獲得や既存分の増額に力を注ぐという。  募金活動は今月下旬から始める予定。クラウドファンディングや口座振り込み、ホームのユアテックスタジアム仙台(仙台市泉区)などで協力を求める。  菊池社長は「債務超過の解消が最大の課題。自助努力で赤字額の圧縮に努めていく」とした。

記事の内容を昨年の決算で比較すると、下表の通りです。

(単位:百万円)

2020年1月期

2021年1月期

(予)

前期比

営業収益

2,711

1,800

-911

スポンサー収入

1,165

980

-185

入場料収入

615

150

-465

Jリーグ配分金

360

アカデミー関連収入

77

物販収入

244

その他収入

250

営業費用

2,956

チーム人件費

1,296

試合関連経費

150

トップチーム運営経費

237

アカデミー運営経費

83

女子チーム運営経費

129

物販関連費

167

販売費および一般管理費

894

営業利益

-245

経常利益

-238

当期純利益(損失)

-428

-700

-272

資本(純資産)の部 合計

356

-350

-706

スポンサー収入もそうですが、入場料収入のインパクトが大きいです。概ね、スポンサー収入は前期の84%。入場料収入は同24%となり、これらの落ち込みが赤字の主因となっています。この赤字を自己資本から差し引いた上でのマイナス分だけ債務超過となりますが、356百万円の債務超過に落ち込むという見通しです。

なお、スポンサー収入については、コロナが影響していない昨期中の契約が多いと思うので、来期はもっと落ち込むでしょう。

今後、仙台は増資を中心に債務超過解消の術を探ることになると思いますが、以下の通り自治体が大株主であるため、調整や手続が大変そうです。

<ベガルタ仙台株主>

宮城県 24.9% 仙台市 23.5% 日本ハウスホールディングス 8.8% 東北電力 2.6% カメイ 2.6% 仙台CATV 1.7% 藤崎 1.7% 七十七銀行 1.7% 河北新報社 1.3% ユアテック 1.3% 東北造園 1.3%

ベガルタ仙台は、前期は営業収益が全Jリーグクラブにおいて17位、人件費が同18位であるにもかかわらず、リーグ成績は11位で、例年うまくやりくりしてきたチームです。このため、仙台の債務超過の見通しが特殊な事例であると考えていません。

まず、ベガルタ仙台がこうした状況を一番に開示したことを評価したいところです。1997年の金融危機の際も、先にやばくなった会社の方が救われました。バンザイするなら早めです。

コロナ禍下の入場制限規制

入場料収入の落ち込みについては、ご存知の通りコロナウイルス感染拡大防止のための入場制限が響いています。

確認になりますが、今期のJ1リーグに関しては、現時点までで以下の様な入場制限が設定されました。

・7月10日〜:5000人以下、もしくは会場収容人数50%以内の少ない方で有観客試合を行う

・9月19日〜(順次):① 上限を入場可能数の 50%とする、② 入場可能数が 17,000 人以上のスタジアムは 30%を目途とし段階的な緩和に努める

ベガルタ仙台の入場者数

この様なレギュレーションの中、現在のところ、仙台の入場者数は以下の様に推移しています。

第1節

第3節 第5節 第6節 第8節 第10節 第14節

第16節

対戦チーム

名古屋 浦和 札幌 川崎 横浜FM 清水 G大阪

大分

入場者数(人)

13,968 0 2,597 2,507 2,758 2,718 2,871

2,191

まず最初に、留意事項としては、今シーズンは1節をまず終了し、再度のリーグ再開後は、移動距離の少ない対戦相手を優先に試合の消化が行われましたので、第3節(実質第5節)以降は必ずしも節の順番に開催されておりません。

リーグ再開後の5節以降のベガルタ仙台の入場者数は、債務超過時のライセンス概ね2,500人程度で推移しています。昨期の平均入場者数が14,971人ですので、2,500人の入場者数は約17%となります。ベガルタ仙台の入場料収入は、今後の制限緩和を見越した結果、前期の24%としたとみられます。

なお、再開後の2,500人の入場者数というのは他のJ1クラブと比較して、少ない数字です。調べる限り、4,000人以上の入場者数を記録していないクラブは、仙台と並んで、横浜FC、柏、広島、湘南にとどまります。

他クラブの損益と自己資本を試算する

ベガルタ仙台の決算数値に対し、前期の決算数値に以下の条件を掛け合わせたものを今期の損益見通しとして試算してみました。

勘定科目

想定

備考

スポンサー収入 前期の85% ベガルタ仙台の見通し前期比84%を参考
入場料収入 前期の25% ベガルタ仙台の見通し前期比24%を参考
Jリーグ配分金 前期数値横置き リーグからの前期並みの支払いがあると見做した
アカデミー関連収入 前期の50% ざっくりで仮置き
物販収入 前期の50% ざっくりで仮置き
その他収入 前期の50% ざっくりで仮置き
営業費用 前期の90% 一定のコスト削減を実施と想定。

留意事項としては、計算プロセスを分かりやすくするため、前期の損益計算書に機械的に上記前提を当てはめています。このため、前期の鳥栖の様に特殊な大赤字を計上したり、リーグ優勝により多額の配分金を獲得したクラブについても、前期決算数値を採用し、個別事情を配慮していません。ベガルタ仙台については、女子チームを譲渡しておりますので、実際はそこのコストを抜いた額が見通し数値とするべきですが(そうすると概ね今回の会社見通しと近そうです)、やはり機械的に前期数値を適用しています。

それではみていきましょう。

J1クラブのシナリオ適用後の損益と自己資本(単位:百万円)

J1で資産超過となると試算するのは、鹿島、FC東京、川崎、松本、広島です。鹿島と川崎は優れたマネジメント、FC東京は東京ガスによる潤沢な資本が効いています。意外だったのは松本です。調べてみると、松本は毎年数千万円規模の黒字(2017年1月期は143百万円の黒字)を積み上げ、コツコツと積み上げた利益剰余金が今、大きな助けになっています。

ちなみに、横浜FM、C大阪、名古屋などの債務超過額が大きいのは、税務上の理由などからあえて資本金を多く積んでいないことが要因であると推察しています。このため、これらのチームの債務超過額が大きいことは、個別要因であると考えています。鳥栖についても、大口スポンサー撤退による大赤字を計上した前期がベースですので、コスト圧縮を心がけて運営している今期の数値はここまで酷いものにならないでしょう。

J2クラブのシナリオ適用後の損益と自己資本(単位:百万円)

資産超過のチームでまず驚きは栃木です。栃木はJ3に降格したシーズンも含め、毎年黒字を計上しています。マネジメントは評価されるべきです。町田はサイバーエージェント買収後はムキムキになりました。勝手な印象ですが、サイバーエージェントの経営は、お金はジャブジャブ持ちながら、使わずに持ち続けるイメージがあります。勝手ですが、町田のジャブジャブした状況に何となく納得感があります。徳島は栃木と同じく毎年黒字を計上し、869百万円という、J2でトップ、J1でもビッグクラブに次ぐ水準の利益剰余金を有していることが功を奏しています。

柏の債務超過額が大きいのは先述の横浜FMやC大阪と同様の理由だと推察します。

 

J3クラブのシナリオ適用後の損益と自己資本(単位:百万円)

J3は讃岐が唯一の資産超過の見通しです。讃岐は2020年1月期末で自己資本が131百万円あり、J3で最大です。そして、讃岐の昨期の入場料収入は45百万円にとどまるので、今回のシナリオを適用したとしてもネガティブインパクトが限定的だったというところが要因です。

今後の課題と私見

まず、一つ申し上げます。先述の試算は私の勝手なこねくり回しです。これが当たっているのか、さっぱり当たっていないのか、来年確認するのを楽しみにしています。外れていたらすみませんm(_ _)m。

本題に入ります。Jリーグクラブは概ね、収入と支出でトントンのお金のマネジメントをします。今期も各チーム同様だと思いますので、今回の仙台が良い例ですが、大まかな感じで言えば、入場料収入及びスポンサー収入が落ち込んだ分だけ、赤字が発生するイメージとなるでしょう。債務超過の観点でいうと、この赤字を自己資本で吸収できるかがポイントになります。

このような赤字を余儀なくされる経営環境のもと、クラブとすべきはまず、運転資金の確保です。債務超過だろうとなんだろうと、目先に、給料が払えなくなる、試合を実施するための費用が払えない、となると、債務超過解消の努力以前にチームが継続できません。そして、運転資金の目処がついて初めて、恐らく別途設けられるコロナ禍に合わせた期限までに、債務超過からの回復を目指すことになります。具体的には、合理的な計画を作成し、銀行から借入を行ったり、支払いを遅らせたりすることが考えられます(実際は後者の手段を採用することはよっぽど追い詰められない限りありませんが)。

債務超過からの回復は、原則として①利益確保による利益剰余金の積み増し、②増資、の二つの手段により行われます。

収支トントンで運営が為される性格であるサッカークラブの運営において、今回の様に全般的に大きな債務超過が発生する場合は、基本的に②の増資を中心に検討し、Jリーグのレギュレーションを勘案しながら②+①の可能性も探るようになるでしょう。Jリーグが債務超過解消までに例えば10年近くの余地を各クラブに与えるのであれば①の選択肢もあるにはあります。

このような中、債務超過に対し根本的な解決策である増資を実施する場合、第一に、親会社のあるチームはやはり相対的に有利な立場に置かれます。

J1チームで親会社がないのは、仙台、松本、大分です。

松本については、良好は財務状況を持ち、先ほどの試算では資産超過となります。大分も頑張って蓄えた利益剰余金と高い収益力から、債務超過を乗り切るのではないでしょうか。

一方で、仙台、大分については、地方自治体が大株主であり、先述の通り支援先の確保だけでなく、増資の際にはそれゆえの複雑な手続が付随するでしょう。公的な色が強いチームの場合、日頃の備えとして、チームが存在することによる経済波及効果を地域に認識されているようにしていると、緊急事態での支援がスムーズに進む助けになるでしょう。

そして、もう一つ。第二に親会社があることは優位と申しましたが、その「親会社」とは経営の揺らいでいないことが条件となります。

そういう点で見ると、注視したいのは、J1では以下のチームです。

浦和は、三菱重工及び三菱自動車の経営不振から、支援のあり方が議論になりそうな気がします。三菱グループにおいて、重工と自動車以外のグループ企業への支援たらい回しや三菱グループの完全撤退があってもおかしくないと考えています。横浜FMと湘南は、本業で親会社が資金調達に奔走していた経緯から、1000万程度の細かいお金の使い道に関してすら金融機関から口出しされている可能性があります。この2チームについては、増資の過程で親会社の入れ替えが発生しても驚きません。そして、清水は親会社の鈴与が新規参入の航空会社がコロナ禍に苦しめられています。鈴与の屋台骨が揺らぎ、支援がスムーズに行かない可能性について否定はできません(多分大丈夫だと思ってはいますが)。

一応、鳥栖についても触れます。鳥栖については、よくわかりません。前期末に20億もの増資をどこが行ったのかも開示されていないようですし(1社が当該増資を行っていれば増資元の子会社となると思います)、前期決算にかかるサポーターズミーティングにて社長が適切なタイミングで前期の主力スポンサーに代わる新たなスポンサーを発表するという話でしたが、半年経った今でも明らかになっておらず、何が何だか分かりません。直感的には、どこかのタイミングで経営的なパルプンテが起きそうな気がします。

チーム数がいっぱいあるので、J2、J3のクラブについて、コメントは割愛させて頂きますが、J2、J3のクラブは、J1ほど営業収益のうち、入場料収入の割合が高くないことから、一見、数字的にはJ1ほどの大変さはありません。しかしながら、相対的に小さな都市を本拠にするチームが多いことから、資金確保にはやはりJ1チーム同等の苦労をすることでしょう。

各クラブ、ここからが新たな踏ん張りどころです。

コメント

  1. […] べきかどうかは今後の結果次第です。 いずれにしろ、渡辺監督の新天地を楽しみにしています。 債務超過はベガルタ仙台だけではない。J全クラブの債務超過/資産超過を試算してみた […]

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