J3クラブ:J2昇格に必要な収益規模を考える

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浮き彫りにされるJ3クラブ、J2クラブの趨勢

話は少しそれますが、クラブごとの営業収益の推移をみてみるとクラブの趨勢が浮き彫りになり興味深いものがあります。
J3クラブ営業収益の推移
J3開始当初、鳥取はJ2からの降格組(町田もJ2からJFL経由でJ3にやって来ました)としてビッグクラブの立ち位置でしたが、2020シーズンではJ3でも下から3番目の規模になってしまいました。
同様にJ3オリジナル12の一角としての長野は、こちらもJ3開始当初はトップクラスの営業収益を誇りましたが、J2からの降格組がJ3に増えることにより地盤沈下が発生しています。
J3クラブ人件費の推移
率直に言って、昇格のチャンスを逃してしまい、遠のくばかりに見えてきます。
そして、触れておくべきなのはYS横浜です。2017シーズン以降最貧クラブの道を歩み続けています。特2020シーズンの営業収益は73百万円です。これって本当にクラブとして大丈夫なんでしょうか?しかも2020シーズンのYS横浜の人件費は49百万円です。この金額で何十名もの選手やスタッフを1年間雇うことができるのでしょうか?全く謎です。
この勢いでJ2もみてみましょう。
J2クラブ営業収益の推移
まず目に飛び込んでくるのはJ3からの昇格チームの苦戦ぶりではなく、J2ビッグクラブとしての大宮の存在感です。千葉以上の存在感を感じます。かつてJ1でみられた「オレンジ互助会」は見る影もありません。それどころか、新潟、清水とあやうくJ2で互助会を結成するところでした(清水はJ1に復帰しましたので)。その他は下位はJ3からの昇格が多くみられることと、山形、甲府、群馬など比較的古参のクラブに元気がなくなっていることがわかります。
J2クラブ人件費の推移
人件費については、J1からの降格したばかりのクラブがトップに位置する年が多くみられます。その他は概ね営業収益と同様の傾向ですが近年の水戸と町田の増加ぶりに勢いを感じます。
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J2とJ3の収益規模の格差

それでは、J2とJ3の収益規模の格差はどのような傾向にあるのでしょうか。
J2/J3営業収益倍率・人件費倍率
グラフはJ2の平均営業収益をJ3の平均収益で割ったもの及びJ2の平均人件費をJ3の平均人件費で割ったものです。前者はJ3が発足した2014シーズンが4.1倍だったのに比べ、2020シーズンは3.1倍に縮小。後者は2014シーズン4.6倍が2020シーズンには3.7倍と同様に縮小しています。この要因はJ3クラブの収益力の向上と、J2クラブからの降格によるものと考えられます。コロナ禍の前まではJ2も規模を大きくしていたので、これはJ2が落ちていたのではなく、J3J2以上のスピードで発展しているという見方もできます。
なお、J1とJ2の比較は以下の通りです。
J1/J2営業収益倍率・人件費倍率
平均営業収益については概ね2.5倍から3倍の間で推移しています。平均人件費については2015シーズンの2.6倍から2020シーズンの3.5倍に拡大傾向にあります。営業収益の格差は拡大しない一方、人件費の格差が拡大する理由は、収益力のあるJ1の方が資金的にチーム人件費に資金を回せる余裕があるためと理解しています。つまり、会社組織を運用するために必須となる管理費や管理系の職種の人件費は固定的(収益規模に比例しない)なので、仮にクラブのヒト、モノの運営規模が同じだった場合、収入が大きくなればなるほど会社組織の運営以外に回せるお金の比率が高まるためであると推察しています。
なお、2019シーズンの平均人件費率で見ると(2020シーズンは鳥栖が異例な決算を計上しているため2019シーズンを採用)、人件費率は、J1が51%、J2が46%、J3が37%です。
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最後に

J3クラブそれぞれにも歴史が積み重なり、J3リーグもようやく貫禄が出て来ました。暫定的な措置として反対をするつもりはないのですが、U23チームがいなくなってサポーターの方々が漸く熱を持ってより楽しみやすい状況が整ったという印象です。

J3リーグの次の大きなイベントは2023年のJ3リーグとの入替戦の開始で、またリーグの様相も変わっていくことでしょう。

ちなみにサッカーの昇降格制度自体に批判があるのも理解します。例えばJ1リーグで頑張って好成績を残したチームが翌年ACLに出て選手が疲弊し、降格してしまうこともありますし、降格がクラブを経営危機に追い込むこともあるでしょう。そしてこの制度はリーグのマネーゲームを助長する仕組みの一つなのかもしれません。

個人的にはその辺りのデメリットは理解するものの、我が国が追いつきたいと考える欧州各国のリーグはそのマネーゲームで発展を続けており、それらの国と期していくためには、そのマネーゲームに乗らざるを得ないのかなと思います。また、荒っぽいものの、クラブに試練を与える昇降格制度及びマネーゲームは、企業としてのクラブ経営のレベルを引き上げている側面もと思います。また、昇格したクラブが各カテゴリのリーグを活性化しているのも確かです。川崎もJ2からの昇格組です。

そんなわけで昇降格制度はデメリットはあるものの、消去法的にベストなのかなと個人的に思っていたりします。

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