J3クラブ:J2昇格に必要な収益規模を考える

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祝昇格。グルージャいわて盛岡

2021シーズンのJ3リーグの順位は、1位ロアッソ熊本、2位いわてグルージャ盛岡、3位テゲバジャーロ宮崎となり、J3ライセンスを持たない宮崎を除いた熊本と盛岡がJ2への昇格を果たしました。個人的にはJ2経験のある熊本を除く2チームの順位は意外でした。
初めてこのような言葉を意識しますが、盛岡はJ3オリジナル12の一つです。
J3開始初年度である2014シーズンの順位です。これらのチーム名をみて当時はあまり馴染みがなく「何だ?」と思うチームが多かった記憶がありますが、2021シーズンを終えた今に至ってはしっかりチームの印象を確立し、歴史を感じます。
J3オリジナル12
1
ツエーゲン金沢
2
AC長野パルセイロ
3
FC町田ゼルビア
4
ガイナーレ鳥取
5
グルージャ盛岡
6
SC相模原
7
福島ユナイテッドFC
8
ブラウブリッツ秋田
9
FC琉球
10
Jリーグ・アンダー22選抜
11
藤枝MYFC
12
Y.S.C.C.横浜
今回は、J2に昇格するにはどれくらいの収益規模が必要なのか、J2に初めて昇格するチームにとってこの収益規模は残留に十分なのか、過去の事例を見ながら考えてみたいと思います。
まず、これまでのJ3からJ2に昇格したチームは下表の通りです。
J2リーグへの昇格チーム
2018シーズンから2021シーズンは、J3オリジナル12の初昇格が目立ちます。
一方、J3リーグにおいては、これまで北九州、熊本、鳥取などJ2での活動実績のあるチームが活動し、来期の松本山雅も含めてJ1での活動実績のあるクラブもプレーすることとなり、リーグとしての貫禄も出てきた感があります。
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J3クラブ最高・最低・平均の収益の推移

それでは、J3リーグにおいてJ2への初昇格クラブがどのような収益規模を経て昇格を成し遂げたのか、推移をみてみます。
J3リーグにおけるJ2初昇格チームの営業収益の推移
グラフの水色にハイライトした範囲が、各年度もJ3クラブの営業収益の範囲です。
まず最初に分かるのは、昇格チームがリーグの中で必ずしも最大の収益規模にないということです。
2014シーズンの金沢(302百万円、シーズンJ3営業収益5位。トップ鳥取は460百万円)、2015シーズンの山口(384百万円、同5位。トップ長野は597百万円)、2018シーズンの鹿児島(493百万円、同6位。トップ北九州は794百万円)、琉球(339百万円、同11位)とも、最大の営業収益規模を持つクラブと金額に大きな差があります。
もう一つのポイントは、昇格決定シーズンの営業収益が3億円が営業収益に関しての挑戦権を持つラインになりそうであることです。先述の通り2014年シーズンの金沢が302百万円の営業収益で昇格を決め、2016シーズンの山口が384百万円、2018シーズンの鹿児島が493百万円、琉球が339百万円と全て3億円以上の営業収益を稼いだシーズンに昇格を決めています。但しこの3億円が大きい金額かというとそうでもなく2020シーズンであれば12位の福島まで超えています。また、それ以下の順位でも13位藤枝293百万円、14位鳥取283百万円、15位八戸261百万円と何かの拍子で昇格してしまうこともあるかもしれません。
なお、少なくともJ2昇格後は少なくとも均等分配金が増加します。2021シーズンでいえばJ3リーグの均等分配金が0.3億円なのに対し、J2では1.5億円と1.2億円増加します。グラフ上昇格し赤丸をプロットしているクラブは、J3時代と比較して1シーズンあたり1億円以上の押上げ効果を享受します。過去のJ2昇格クラブの実績から見ればこれは2割以上の営業収益に相当します。クラブ経営上とても大きいです。
J3リーグにおけるJ2初昇格チームの人件費の推移
人件費をみてみましょう。人件費も概ね営業収益の傾向と同様です。J3リーグの2020シーズン人件費率は最低は八戸の27%、最高はYS横浜の67%ですが、2020シーズンの平均である40%くらいが一般的な人件費率の水準と考えて良いかと思います。営業収益の傾向と同様に、格チームの人件費は必ずしも最大の人件費を計上したチームではありません。営業収益と同様にJ2昇格にあたっての目標を示すと2億円が一つのラインとなりそうです。
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J2初昇格クラブのJ2昇格後の位置付け

次はJ3から昇格したクラブはJ2で営業収益上どのような位置づけとなるかをみましょう。
J2リーグにおけるJ2初昇格チームの営業収益の推移
J2新規昇格の各クラブは、J2昇格後は営業収益的には下位クラブで甘んじ続けています。比較的順調に営業収益を伸ばす山口ですら下位グループで推移しています。
この理由は、J2はJ3以上に上位と下位に金額幅があるため、営業収益の絶対額を大きく伸ばさないと上位に食い込めません(人件費もそうです)。例えば、2020シーズンはJ2のトップと最下位の営業収益の差は5.4倍、2019シーズンも5.5倍、2018シーズンは6.4倍です。
一方J3では、2020シーズンはYS横浜が73百万円というおかしな営業収益額を計上したため11.7倍となったものの(その上の八戸と1位岐阜との差は3.3倍)、2019シーズンは4.2倍、2018シーズンは3.9倍です。
J2リーグにおけるJ2初昇格チームの人件費の推移
人件費についても、J2新規昇格チームに置かれている状況は営業収益と同様です。ちなみに2019シーズンにJ2最大の人件費が大きく上振れている要因は柏です。この年柏はJ1にいた前期より人件費を積み増しました。

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