RB大宮アルディージャ爆誕
2024年10月1日、大宮アルディージャがレッドブル・グループに買収され、運営会社名が「RB大宮株式会社」として再出発することになりました。Jリーグで初めて誕生した外国資本の参入劇についてfootballbenchmark.comが分析しているので、まるっとご紹介したいと思います。そして、次回以降の投稿で別途考察したいと思います。
footballbenchmark.comとは
「footballbenchmark.com」は、世界的な会計事務所であるKPMGのスポーツ部門が運営するウェブサイトであり、サッカー界におけるデータ分析の重要性が高まる中で、注目を集めている情報源です。このサイトでは、選手の年齢、契約状況、パフォーマンスなどに基づいて算出された市場価値、ゴール数、アシスト数、出場時間などの詳細なパフォーマンスデータ、クラブの収益、支出、移籍市場での活動などの財務データといった、多岐にわたる情報を提供しています。これらのデータは、サッカークラブが選手の獲得や売却を検討する際の参考資料として、また、代理人が選手の市場価値を交渉する際の根拠として活用されるほか、メディアが選手のパフォーマンスや移籍に関する記事を作成する際にも利用されています。さらに、サッカーファンも選手の市場価値やパフォーマンスに関する情報を得るためにこのサイトを利用するなど、多岐にわたる人々にとって有用な情報源となっています。
FOOTBALL BENCHMARKによる分析
何がレッドブルを日本サッカーへの投資に駆り立てているのか?
主な調査結果
アジアへの戦略的進出 レッドブルによる大宮アルディージャの買収は、アジアサッカー界への初進出であり、世界的なサッカープレゼンスを確立するというグループの野望における重要な一歩となる。
過小評価されている才能のハブとしての日本 欧州リーグに移籍する日本人選手の数が比較的控えめな移籍金で増えていることから、この市場は選手の発掘と育成において未開拓の可能性を秘めており、レッドブルにとってグローバルな選手パイプラインを強化するチャンスとなる。
人気スポットとしての小規模市場 日本人選手は通常、小規模リーグを経由して欧州サッカー界に参入する。その顕著な例が、ベルギーのシント・トロイデンだ。アジアへの戦略的進出
レッドブルによる大宮アルディージャの買収は、アジアサッカー界への初進出であり、世界的なサッカープレゼンスを確立するというグループの野望における重要な一歩となる。
過小評価されている才能のハブとしての日本
欧州リーグに移籍する日本人選手の数が比較的控えめな移籍金で増えていることから、この市場は選手の発掘と育成において未開拓の可能性を秘めており、レッドブルにとってグローバルな選手パイプラインを強化するチャンスとなる。
人気スポットとしての小規模市場
日本人選手は通常、小規模リーグを経由して欧州サッカー界に参入する。その顕著な例が、ベルギーのシント・トルイデンセVVだ。
レッドブルの世界的なフットボール拠点
世界的な野心を強調する画期的な動きとして、レッドブルは日本の大宮アルディージャを買収し、アジアにサッカー・ポートフォリオを拡大した。この戦略的投資は、エナジードリンクのコングロマリットであるレッドブルにとって、アジアサッカー界への初進出となる。具体的には、2024年8月、レッドブルは著名な通信会社である東日本電信電話(NTT東日本)から大宮アルディージャの株式を100%取得した。
この取引は、外国企業が日本のプロサッカーチームの全権を掌握した最初の例として、特に注目に値する。これは、株式の過半数を国内企業が保有しなければならないという2020年の規制が撤廃されたことで可能となった。
サッカー界で最も著名な複数クラブネットワークのひとつであるシティ・フットボール・グループも、横浜F・マリノスとの関わりで日本に進出していることは特筆に値する。しかし、横浜F・マリノスへの出資は少数であり、包括的なグループ戦略により、CFGのダイナミクスに対するクラブの影響力は限られている。
これとは対照的に、レッドブルは大宮アルディージャを完全所有し、複数のクラブを所有するエコシステムの中で選手売買に重点を置いている。
日本への進出は、グローバルなサッカーネットワークを構築するというレッドブルの広範な戦略に沿ったものだ。レッドブルのサッカー事業は、2005年のザルツブルグ買収から始まった。その後、ニューヨーク・レッドブルズ(アメリカ)、RBライプツィヒ(ドイツ)、レッドブル・ブラガンティーノ(ブラジル)に投資した。また、最近では、パリFCやリーズ・ユナイテッドFCの少数株主買収など、さまざまな事業を通じて他の主要市場にも進出している。
買収の目的と戦略的意味合い
大宮アルディージャの買収は、レッドブルが掲げる「即座の競争力強化と長期的な戦略的成長」という2つの目標に合致している。クラブは2030年までにJ1リーグ昇格を果たし、タイトル争いに加わることに主眼を置くが、この買収はRBのエコシステム全体にもチャンスをもたらす。
大宮アルディージャをレッドブルのグローバル・ネットワークに統合することで、レッドブルは日本サッカー界の才能の宝庫である大宮アルディージャを活用し、選手育成の道筋を作り、グループ内の他クラブへの移籍を促進することができる。
この事業の長期的な利益を最大化するためには、文化や言語の壁を乗り越えることが重要だが、今回の買収は強固な基盤の上に成り立っている。この買収は、老舗の一流チームではなく、競争力がそこそこ、あるいは低下しているクラブを選ぶというグループの広範な戦略とシームレスに合致している。この場合、大宮アルディージャはJ1リーグで歴史的な存在感を誇っているが、2018年以降は常に2部リーグに参加し、2024年シーズンには3部リーグでプレーしており、成長と変革の可能性を示している。
過小評価される才能のハブとしての日本
推定市場価値で上位の日本人プレーヤーを分析すると、現在市場に出ている傑出したスター選手は限られていることがわかる。トップ10のうち4人がプレミアリーグでプレーしており、守田以外はビッグ5でプレーしている。
さらに範囲を広げると、500万ユーロ以上の日本人選手全体は依然として比較的少なく、現在この基準を満たす選手は24人しかいない。
移籍市場の観点から、2018/19シーズン以降に日本から欧州サッカーに移籍した日本人選手の移籍の流れを分析すると、合計182人の移籍が明らかになり、市場における日本人タレントの魅力が浮き彫りになった。注目すべきは、このうち移籍金を支払って移籍したのはわずか36人で、高額な移籍金を伴う移籍はなかったことだ。
国内リーグから欧州1部リーグに移籍する日本人選手の主な移籍先は、「ビッグ5」リーグではない。トップはベルギーの1部リーグで、2018/19シーズン以降40件の移籍があり、次いでポルトガル、オランダ、スコットランドがそれぞれ16件から11件を占めている。
この傾向は、日本人選手が一般的に小規模リーグを経由して欧州サッカー界に参入していることを浮き彫りにしている。しかし、移籍の成功は、文化的・地理的な問題を考慮すると、従来の選手発掘・育成方法ではなく、市場に関する深い知識と確立されたコネクションに起因することが多い。その結果、日本サッカーのエコシステムに精通した 「市場関係者 」の関与によって成功事例が生まれることが多い。
ベルギーのクラブ、シント・トロイデンがその顕著な例で、17人の移籍を記録している。このクラブは日本の才能に大きく依存しており、日本からヨーロッパへのトッププレーヤーのゲートウェイとして機能している。この成功は、日本人のオーナーであるDMM.comが日本のサッカー市場との強い結びつきを育んでいることに支えられている。
シント・トロイデンの最近の歴史では、アーセナルの冨安健洋やリバプールの遠藤航が有名である。
スコットランドのセルティックFCも日本人選手の獲得に特に積極的で、2018/19年以降、日本リーグから8人の移籍を記録している。このうち、2024年12月時点のFootball Benchmark Player Valuation Toolによると1410万ユーロと評価された古橋亨梧を含め、3人の移籍金がトップ10にランクインしている。
この傾向は偶然ではなく、元選手の中村俊輔が活躍した時代から続く、セルティックと日本サッカーの長年のつながりの一部と見ることができる。特筆すべきは、2019年に横浜F・マリノスで成功を収めたアンジェ・ポステコグルーが2021年に監督に就任したことで、最近の獲得がさらに加速したことだ。
未来を切り開く理想的なポジション
これらの調査結果は、日本が過小評価されているタレントのハブであり、選手の発掘、育成、小規模リーグへの移籍に費用対効果の高い機会を提供している可能性を示唆している。
興味深いことに、レッドブル・グループはすでに日本人選手への投資に意欲を見せている。その代表例が、2015年にRBザルツブルクに加入した南野拓実だ。現在ASモナコでプレーする南野は、RBのエコシステムから生まれた最も成功した日本人タレントの一人として際立っている。
しかし、事業の成功には、市場知識と地元のコネクションが不可欠であることが分析から明らかになっている。鎌田大地、長谷部誠、香川真司など、ドイツ・ブンデスリーガで活躍する日本人選手のポジティブな影響力と、小さなマーケットからヨーロッパ・サッカーに参入する傾向を考えると、ライプツィヒとザルツブルクに確立されたネットワークを持つレッドブルは、この投資を活用するのに有利な立場にある。そのため、今回の買収は、この市場において先行者利益を得る絶好の機会となる。
したがって、レッドブルによる大宮アルディージャの買収は、ダイナミックに成長するサッカー市場への戦略的拡大を意味する。Jリーグの競争バランスから、レッドブルはすぐにでも大宮アルディージャを成功に導くことができるだろう。文化的、競争的な課題を効果的に克服し、過小評価されている才能の宝庫を活用することで、レッドブルは日本サッカーの展望を再定義し、世界的な強豪としての評判をさらに確固たるものにする準備が整っている。
本記事は単なるレッドブル・グループによる大宮の分析にとどまらず、日本サッカーの位置付けを知る内容のある記事であると思います。
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