欧州5大リーグとJリーグ、収益構造を比較する

はじめに

JリーグがDAZNマネーと契約した背景には、財政規模の拡大を背景に発展する欧州リーグに続きたいという考えがあります。では、実際、目標とする欧州5大リーグとの差はどれくらいなのか、欧州5大リーグの収入とJリーグの収入構造の比較を行いたいと思います。

総収入

そもそも、Jリーグと欧州5大リーグとの財政規模の差は大きなものと想像がつきます。メッシの移籍金が7億ユーロ(875億円)だとか、クリスティアーノ・ロナウドのユベントスへの移籍金が1億ユーロ(125億円)だとか、想像もつかない規模のお金が動いています。早速みてみましょう。
上図は、欧州5大リーグの2018/19シーズンとJ1リーグは2019シーズンの総収入を取りまとめたものです。
図が示す通り、プレミアリーグは巨大で、7,375億円とJ1の8.3倍の規模があります。その他もラ リーガが4,250億円で同4.8倍、ブンデスリーガが4,125億円で同4.6倍、リーグ アンが2,375億円で同3.5倍とまだまだ背中が遠いです。文字通り桁が異なる結果となりました。
1クラブあたりの平均にすると下の図の通りです。
収入(単位:百万円)
プレミアリーグ
36,625
ラ リーガ
21,125
ブンデスリーガ
23,250
セリエA
15,625
リーグ アン
11,875
日本
4,951
これでみてみると、イメージがつきやすいと思います。
但し、例えばプレミアリーグでは、ビッグ6クラブの平均とそれ以外の平均では3倍の差があり、個別で見るとまた違う部分もあります。
この差はどこから来るのか、①入場料収入、②スポンサー/商業収入、③放映権収入の内訳でみてみます。

入場料収入

入場料収入は以下の通りです。
やはり、プレミアリーグとの差は大きく開いていますが、リーグアンとの比較では、総収入ほどの差はありません。シーズンの平均入場者数はプレミアリーグは38,484人、ラ リーガが26,585人、ブンデスリーガが42,738人、セリエAが24,106人、リーグ アンが22,833人です。一方、Jリーグの平均は20,751人です。
Jリーグの平均入場者数はリーグ アンとは遜色ありません。チケット単価が違うということになります。

スポンサー/商業収入

スポンサー/商業収入については、Jリーグでは最も大きな収入構成(57%)を占めます。なお、Jリーグは収入の内訳が異なるため、「広告料収入+アカデミー関連収入+物販収入」を数値としたものです。ちなみに、アカデミー収入を含めなければJリーグの本数値は47,683百万円となります。驚くことに、本カテゴリでは、Jリーグとリーグ アンでは遜色ありません。別の見方としてリーグ アンは他の5大リーグより収入が低いともいえますが、リーグ アンでは鎖骨の広告が入る理由もこういうところなんだろうなと思います。

放映権収入

最後に放映権収入です(その他収入には触れません)。推察がつくと思いますが大きな差を生み出しているのは、これです。
なお、Jリーグはリーグ配分金の数値を採用しています。
圧倒的な差です。放映権収入の収入のインパクトは、下表の構成でわかります。
各リーグは、下表の通り総収入を増加させて来ましたが、欧州5大リーグは放映権収入を原動力としています。

各リーグの増収要因と増収の偏在

スペインでは、2018/19シーズンで2ケタ増を達成していますが、その最大の要因は放映権収入の増加とUEFAでの大会の好成績によるものです。また、ラ リーガは商業収入を2018/19シーズンでは7%増やしていますが、うち88%はバルセロナの増収によるものです。バルセロナは、ライセンスや販売を第三者に委託するのではなく、自社機能としたことによるものです。
なお、ラ リーガが2018/19シーズンにブンデスリーガを抜いて2位に返り咲いたのは、ブンデスリーガでのチームの入れ替えによるものです。ハンブルガーとケルンの降格ですね。
ブンデスリーガは2018/19シーズンは6%の増収を成し遂げましたが、放映権収入が19%増加したことによるものです。この増加は、契約上の取り決めによるものです。
セリエAでは、新しい3年間の国際放映権の契約が始まり、放映権収入が11%増加したことにより、2018/19は増収となったことが主なものです。なお、入場料収入の増加の70%はインテルが占めているそうです。また、スポンサー/商業収入の増加分の50%ユベントスによるものです。
フランスは、UEFA大会で同国クラブが勝ち進んだため、放映収入が増加したことによるものです。なお、フランスの放映権収入以外の収入の50%はサンジェルマンが稼いでいます。
プレミアリーグでは2018/19シーズンは7%増収しましたが、スポンサー/商業収入が9%増加し、クラブがUEFAの大会で勝ち進んだ分配金によるものです。

放映権が重要

イングランドは2019/20シーズンが新しい3年契約のスタートで8%の放映権収入の増加が見込まれています。その増収のほとんどは国内放映権によるもので、国内の放映権はこれまでのように増加せず、少し下がるようです。国内の放映権はこれまでの2契約サイクルを通じて50%増加したので、さすがに頭打ちになっているようです。なお、イギリス国内での放映についてはアマゾンが参入し、2週間の放映が行われ、その間にアマゾンプライムに結構な新規加入があったようです。今後のアマゾンの動きが注目されます。
スペインでは、2019/20に新しい国内放映権の契約があり、15%契約金額が上昇し、5年間で2,500億円の増収となります。なお、ラ リーガは放映権料の分配を2014/15シーズンでトップのクラブと最下位のクラブの分配金の差を8:1だったものを3.5:1に変えるそうです。
ブンデスリーガは、2021/22のシーズンが次の契約サイクルです。ドイツの放映権については、もし、最初の4つの権利パッケージ(どうやら権利がいくつものパッケージに別れているようです)が、一つのオーナーに獲得された場合は、ネットでのプロバイダーと権利を共有することが求められます。権利を売る側のリーグも色々な配慮をしているようです。
セリエAは、国際的にアピール出来るよう総理が旗を降っています。2020/21シーズンの終わりに契約サイクルの終わりが来ます。セリエAはプライベートエクイティへの売却、他の企業とパートナーシップを組み、プラットフォームを作ったり、新しい業態の放映社との契約など、選択肢を検討しているようです(原典は2020年1月なので今はもう決まっているのではないでしょうか)。
リーグ アンは2020/21〜2023/24シーズン分の国内放映権は売却済みです。そして、本契約の増加分はクラブに均等に割り振ることにより、下位クラブを支援することになりました。コロナ禍が終わったのち、国際放映権を高く売ることが大きなテーマとなります。
Jリーグと欧州5大リーグの差は放映権であり、金額が如実に物語っています。しかし、その内情をみるとJリーグはDAZNと心中するという選択肢一本である一方(スカパーもありますが、大幅減収が見込まれます)、欧州5大リーグは様々な検討の上、戦略が策定されていることがわかります。これは選択肢あってのことです。
Jリーグはまだその手前におり、まずはリーグの魅力を高めることにより選択肢を作ることが求められます。その上で初めて欧州リーグのように海千山千のメディア企業と駆け引きを行い、放映権収入の更なる増加が見えてきます。コロナ禍により、サッカービジネスの前提が今後変わる可能性もありますが、現在欧州で走っている拡大戦略を是とするのであれば、欧州5大リーグとの差はまだまだ大きいと痛感しました。

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