FC東京:Mixiの財務余力はいかに

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mixiによるFC東京の買収

ご無沙汰しております。私的な事情からしばらく他のことをしておりそちらを優先していました。また、ぼちぼちブログを書き始めようと思います。
11月22日、mixiがFC東京を運営する東京フットボールクラブ株式会社の第三者割当増資を引き受け、子会社化することが発表されました。
以前、「Jリーグチームのオーナーシップ移転」という記事を投稿させて頂き、今後はネット企業が親会社になるケースが増えるのかなあという話を書かせて頂きましたが、じわじわその方向で世の中が進んでいる模様です。ネット系企業の進出が増えると見込む理由もそこに書きました。
その上で、「ミクシィってどうなの?」、「あそこはモンストだけじゃない?」という声もあるようなので、Jクラブのオーナーとしてのミクシィはどうなのか、有価証券報告書から眺めてみることにしました。
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2016年3月期をピークに売上高は右肩下がり

ミクシィの業績推移
(出所:有価証券報告書)
ミクシィは2013年にモンスターストライクをリリースし、当時12,155百万円だった売上高は、2016年に208,799百万円と2000億円を超えを果たします。17倍にも増えました。しかしながら、その2016年をピークにミクシィの売上高は減少を続け、2021年3月期には119,319百万円とピークの半分近くに減少しました。
ミクシィとしては「コトダマン」の展開によりモンスターストライクの減収を補うべく取り組んでいますが、まだ途上です。とはいえ2021年3月期は15,692百万円の当期純利益を計上。オンラインゲーム業界は利益率が高いため、しっかり利益を確保し現金を稼いでいます。
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木村現社長就任による新展開

ミクシィは、2018年6月に就任した木村現社長の就任により、2つの大きな変化をもたらしました。一つはM&Aを軸としたスポーツビジネスへの展開です。
2019年6月、競輪車券(勝者投票券)のインターネット投票サービスを提供する株式会社チャリ・ロトを完全子会社化しました。2019年10月にはB. LEAGUE所属のプロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」を運営する株式会社千葉ジェッツふなばしの株式を取得し子会化します。2019年11月、競馬総合情報メディア「netkeiba. com」を運営する株式会社ネットドリーマーズの全株式を取得し、子会社化します。
こうした動きが意図するものは、ミクシィのスポーツベッティングへの参入です。弊ブログでもかつて取り上げさせて頂きましたが、我が国でスポーツベッティングの導入が検討されています。
フィナンシャルタイムズによると、楽天、サイバーエージェント、ミクシィが何年にもわたって政府に対し、オンラインベッティングの可能性を説き続けて来たと報じています。ミクシィ以外の2社もJリーグで見覚えあるところです。木村社長をWikipediaで検索してみると、「社長と学生の二足の草鞋で早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。現在早稲田大学のホームページにて木村の論文「米国スポーツベッティング」が閲覧できる。」と記載があります、木村社長は相当な情熱を持ってスポーツベッティングに取り組んでいるとみて間違い無いでしょう。
実際のところ、クラブを保有することと、オンラインベッティングのプラットフォームを提供することがどう相乗効果を生むのか私の勉強が追いついていませんが、先述の3社の取り組みを見る限り何らかのメリットを見出しているのでしょう。
このM&Aの積極的な展開はキャッシュフロー計算書の投資活動によるキャッシュフローからも読み取れます。
ミクシィの投資活動によるキャッシュフロー推移
出所:有価証券報告書
上表の通り千葉ジェッツやネットドリーマーなどの取得のため、木村社長就任以降現金の支出が増加しています。
もう一つの大きな変化が借入の増加です。
投資の増加と手元資金のバランスを考慮した上であると思いますが、借入を活用するようになりました。それまでミクシィで借り入れを行っていなかったのですが、2020年3月期末の長期借入金は2,952百万円、2021年3月期末のそれは7,905百万円と現状のミクシィ財務状況からすると大した額ではありません(2021年3月期末自己資本比率は83%。手元の現金も1500億円弱あります)。現時点のミクシィの財政状況に不安はありませんが、スタジアムや選手などに大きな投資をするのだとすれば、財政状況は中長期的に注視すべきポイントになるでしょう。というのは、かつてはインデックスとグルノーブルの件もあったので、ちょっと気になっています。
一般論として、借入の活用は必ずしも悪いことではありません。投入先の事業またはその他の資金で返済できるのであれば、お金を借りてより大きな事業を行った方が利益を稼げるという考え方があります。木村社長の手腕が試されるところです。

足元の業績と財政状況

今走っている2022年3月期の9月半期決算の数値をみてみます。売上高は51,587百万円と前期比12%減少しました。当期利益は6,167百万円と前期比33%減少しました。
セグメント別の内訳は以下の通りです。
ミクシィ2022年3月期9月半期セグメント別売上高・セグメント利益
出所:有価証券報告書
モンストの売上を含むデジタルエンターテイメント事業は今半期も減収し、前期比21%減少しています。とはいえ17,880百万円のセグメント利益(セグメントの営業利益)を稼いでいます。
当社が今後の柱にすべく取り組むスポーツ事業はまだデジタルエンターテイメント事業の20%程度の規模です。同事業の売上高は前期比48%の増加をしていますが、セグメント利益は赤字です。売上高が高成長をしているため、近いうち黒字化するのではという見方もできるかもしれませんが、2022年3月期半期報告書の説明によると以下の通り説明されています。
公営競技関連事業株式会社チャリ・ロトは2021年4月より初のCM放映を実施するなど、積極的なマーケ ティング施策が奏功し、順調にユーザー数を伸ばしております。またスポーツベッティングサービス「TIPSTAR」で は、還元施策を実施したことでGMVは拡大しましたが、想定以上の費用が発生したことで当初の計画を下回る結果と なりました。
要はまちまちのようです。
また、千葉ジェッツの業績が良くないようです。同クラブの減損の兆候に関する記載も2021年3月期有価証券報告書に説明があります。
1, 631百万円が千葉ジェッツふなばしの資産グループに属する金額でありますが、当期に おいて営業活動から生ずる損益、キャッシュ・フローが継続してマイナスとなったこと及び、直近の損益が取得時の 事業計画を下回ったことから、上記( 2) に従って減損の兆候を識別いたしました。そこで、( 3) にて将来の売上・費用 予測や営業利益率等の仮定に基づいて割引前将来キャッシュ・フローを算定した結果、割引前将来キャッシュ・フ ローが資産グループの帳簿価額を上回ったために( 4) には進まず、減損損失の認識は不要と判断いたしました。
減損損失の計上は、買収時の価値が損なわれていると判断した際に計上します。毎期、業績など一定の基準にヒットした案件や店舗の事業を精査し(千葉ジェッツはこの手続により減損の兆候を確認)、回復できる合理的な理由があるかどうか等を確認し、計上を判断します。
状況としては「将来的に状況は改善します」と監査法人に説明し、今回は減損損失計上を回避できた状況なのかなと推察します。感覚的に将来的にどこかのタイミングで減損損失を計上するのではないかと思います。
2022年3月期9月末貸借対照表

繰り返し説明の通りモンストの売上は右肩下がりであるものの、これまで貯めたキャッシュが十分あります。手持ちの現金は126,059百万円あり、有利子負債を差し引いたネットキャッシュは117,118百万円あります。自己資本比率も85.2%でピカピカの財務体質です。

それでもまだキャッシュは稼いでいる

ミクシィのキャッシュフロー計算書によると2020年3月期の営業キャッシュフローは17,792百万円、2021年3月期は34,672百万円と巨額のキャッシュを生み出しています。キャッシュの創出額はピークと比べて落ちているものの、67億円と言われる鳥栖のスタジアムや、150億円と言われる吹田スタジアムの建設費用を賄える現金を軽く1年で稼ぎ出しています。
FC東京の注目点としては、Mixiが生み出すキャッシュと貯めたキャッシュがどの程度投じられるかです。
ミクシィのこれまでをみる限り、このキャッシュは概ね①ミクシィ株主への配当、②借入金の返済、③新規投資先への支出、④FC東京や千葉ジェッツなど既存投資先への追加投資に割り振られることが見込まれます。
2021年3月期は34,672百万円の営業活動によりキャッシュフローを創出し、7,159百万円の現金をM&Aや固定資産の取得に投じています。さらにそこから配当8,287百万円の支払、借入返済に1,037百万円を充当し、24,384百万円の現金を社内に増加させました(前期はより積極的に投資を行い18,990百万円の現金を支出して(減らして)います)。
Mixiは楽天のように追加追加でお金が投じてくれるのか、RIZAPのように買収後の大した資金投入がなされないのか。これは一種の「親会社ガチャ」と言ってもいいのかもしれません。この親会社ガチャがはずれかあたりか今後も見ていきたいです。

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