ヴァンフォーレ甲府2021年1月期決算:縮小均衡傾向

債務超過は回避も勢いなし

ヴァンフォーレ甲府の2021年1月期決算を眺めてみます。
以前の投稿でもご紹介させていただいた通り、甲府は限られた経営資源を上手にコツコツとやりくりしてきたクラブです。今期の決算も赤字ではありましたが、債務超過は回避しました。
2020シーズン、J2では4位ともう少しでJ1かという成績を残しましたものの、財務諸表上は勢いを感じません。

営業収益

ヴァンフォーレ甲府 2021年1月期損益計算書
ヴァンフォーレ甲府2021年1月期末 貸借対照表
今回も損益計算書を収入(営業収益)から見ていきます。
営業収益は、1,229百万円と前期比18.7%減少となりました。J2平均の営業収益の減少率が13.3%と比べると5.4ポイント減少幅が大きいです。
営業収益推移
上図はヴァンフォーレ甲府の2014シーズンからの営業収益の推移を示したものです。
J2平均の営業収益は、コロナ禍の影響を受けた2020シーズンは例外として、2016シーズンから2019シーズンまでの営業収益は増加傾向を示しています。
一方、ヴァンフォーレ甲府は、2017シーズンを除いて概ね増加傾向でしたが、2019の営業収益は前期比12.5%減少の1,511百万円となりました。以降、J2平均(1,655百万円、前期比7.4%増加)以下の水準で推移しています。

広告料収入

広告料収入の推移
内訳から営業収益減少の要因を確認してみましょう。
広告料収入は前期比9%減少の725百万円となりました。J2平均では11%減少していますので、平均よりは踏み止まっています。しかしながら問題はその水準とトレンドです。甲府の広告料収入は概ね横ばいの水準で推移していますが、2018シーズンにJ2平均に抜かれています。また、J1では楽天の積極的な広告料収入等を背景に、J2以上の増加傾向を示していますので、J1の背中はますます遠くなっています。

入場料収入

入場料収入は前期比69%減少の90百万円となりました。
今期の数字は特殊な事情もあり、金額自体は異常値と言えるでしょう。入場料収入についても、その水準とトレンドを見たいと思います。
入場料収入の推移
入場料収入もグラフの通り減少傾向が続いています。J2平均が概ね横ばいの中で、甲府は減少傾向を示しています。
甲府の順位は以下の推移ですが、J1にいる頃から入場料収入に増加の勢いはありません。20191月期(2018シーズン)にJ2に降格して以降、更に水準が低下しています
長い間議論されている専用スタジアムが完成した暁には、入場料収入の伸びを見込めるとは思いますが、こうした数字だけ見ると、現状は地域としての盛り上がりに欠ける感があります。

物販収入

◆物販収入の推移
物販収入は前期比38%減少の54百万円となりました。
先述の通り2020シーズンは特殊なシーズンですので、金額よりも上図に示したトレンドが重要です。
J2平均と比較すると同様に横ばいの推移ですが、J2平均を下回る水準で推移しています。J2オリジナル10かつJ1で一定の活躍を見せたクラブとして、物足りません。

アカデミー関連収入

アカデミー関連収入推移
アカデミー関連収入は、前期比13%減少の21百万円となりました。

J2のチームは、若手育成を掲げるチームが多く、2016シーズンからJ2平均では増加傾向です(2020シーズンを除いく)。一方甲府は、2016シーズンから減少傾向を示しています。金額は小さいですが、アカデミー関連収入はファンの裾野や選手のリクルーティングなど、長期的にクラブの発展に寄与するものだと考えます。この観点からから見るに、ちょっと心配です。

その他の項目

Jリーグ配分金は前期比2%増加の152百万円となりました。

その他収入は前期比72%増加の187百万円となりました。「その他収入」の内容は幅広いので内容はわかりません。恐らくクラウドファンディング等の特別な収入なのかなと推察しています。前期比72%というのは大きな伸びですが、J2平均が178百万円(前期比12%増加)ですので、概ねJ2平均並みです。
以上より、営業収益は、1,229百万円と前期比18.7%減少となりました。J2全体でいうと21クラブ中(ジュビロは3月決算なので現時点で未公表)13です。岡山や町田に抜かれ、山口や北九州の足音が聞こえています。

営業費用

営業費用は、前期比12%減少の1,278百万円となりました。J2平均では9%減少しています。
営業費用については、概ね半分を占める人件費に着目します。
チーム人件費は前期比14%減少の609百万円となりました。
一応ですが、2020シーズン開始時点の選手の入れ替えは以下の通りです。
人件費の推移
J2平均が前期比9%減少と696百万円となったので、平均以上にチーム人件費を引き締めています。
2020シーズンのエルゴラッソの選手名鑑を見ると、選手の入団、退団は以下の通りでした。
2019シーズン末退団選手
2020シーズン入団選手
エルゴラッソの選手名鑑では、J2の選手の年俸は掲載されていません。このため、プラスマイナスの計算ができませんが、表を見る限りチーム人件費減少は、選手を減らしたことと、ピーターウタカの退団によるものかなと推察しています。
このような人件費の運用に見られるように、ヴァンフォーレ甲府は財務的に手堅いクラブ運営を行なっていますが、2019シーズンのチーム人件費はJ2平均に抜かれてしまいました。そして2020シーズンのチーム人件費は、ジュビロ磐田を除くJ2リーグ21クラブ中11位です。

人件費以外の費用

試合関連経費は前期比31%減少の74百万円となりました。トップチーム運営経費は、前期比6%減少の160百万円となりました。アカデミー運営経費は前期比50%減少の13百万円となりました。
物販関連費は前期比40%減少の42百万円となりました。これらについては、営業状況に比例した性質がありますので、コメントは割愛させて頂きます。

J1の背中は遠のくも、社長交代で新たな取組を

以上の結果、経常損益と当期利益はそれぞれ22百万円の赤字となりました。
しかしながら、甲府の自己資本は213百万円ありますので、債務超過にはなりませんでした。
2020年1月期の赤字を計上後の自己資本比率は17%です。2020シーズン末の3月決算の磐田を除くJ2平均数値は21%でした。債務超過になるチームもある中、財政的にはそれなりに堅実な運用をしていると言えます。
これまで述べた通り、財務諸表を見る限りでは、総じて今のままではずるずるとJ1の背中が遠くなっていきそうな気配ではあるものの、社長の交代に着目したいです。
2021年3月30日、監督としても腕を振るった佐久間悟GMが社長に就任しました
ヴァンフォーレ甲府の歴代社長
このニュースに着目すべき理由は、初代(Wikipediaによると、かつて商標で揉めて裁判沙汰になった模様)を除き代々続いてきた、現地大手メディア山日YBSグループ以外からの人材だからです。
佐久間氏はNTT関東サッカー部出身です。岡田元日本代表監督や、川淵元チェアマン等、Jリーグ前の実業団でのプレー経験のある人は、サラリーマン経験も積んでいることから、組織の運営について知見を持ち合わせていると考えます。
クラブとして色々なことが足踏みしているように見える中で、出身がこれまでと異なり、クラブを知り、サッカーを知る人材として、見た感じ適任に見えます。佐久間色というものが出るのであれば、新しい流れが始まるのかもしれません。

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