Jリーグのコロナ危機対応と資金繰りに係る考察

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新型コロナウイルスの感染の広がりにより、2節以降のJリーグの試合が延期となる中、ダイヤモンドオンラインにて、「Jリーグに迫る「コロナ危機」、20億円減益リスクを回避する2つの秘策」という記事がアップされました。

試合の延期が長期に渡る場合、入場料による収入がないため、各チームへの心配が募るところですが、現在の未曾有の状況におけるJリーグの対応の整理と資金繰りを踏まえた考察を書かせて頂きたいと思います。

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新型コロナウイルス 感染の広がりを受けたJリーグの対応

本記事に加えて、那須大亮氏のYoutubeにおけるJリーグ村井チェアマンに対するインタビューによると、現在の新型コロナウイルスの感染を踏まえた、Jリーグの対応は以下の通りです。

◆試合再開

  • J3: 4月25日
  • J2: 5月2日
  • J1: 5月9日

◆試合の運用

  • 密接回避:手の届かない距離感を開ける。1席ずつ開ける。スタジアムのキャパシティーの50%程度が収容率の上限となる。
  • 密集回避:2ヶ月を目処としてアウェー観戦自粛(長距離移動回避の観点)。
  • 試合実施は、週末だけでなく水曜日を活用。

◆試合再開の準備•半分の14節くらいまでの準備をしている。

  • 4月25日くらいまでに準備できそう。
  • サーモセンサーを試合会場に設置する。450台調達する(4月18日予定)。
  • 消毒液 300リットル準備、マスク 7万枚準備。目処がついた。

◆財務的な対策

  • 56クラブと緊密に連携。日々のお金の出入りを確認している。キャッシュフローの確認と財務状況を確認。
  • 勝敗に関係なく各チームに支給される均等配分金(J1クラブへ3億5000万円、J2へ1億5000万円、J3へ3000万円)、放映権料や商品化権料などさまざまな配分金について、年間3〜4回に分けて支給しているものを一括で支給。
  • DAZNの視聴実績をクラブごとに数値化し、原資として用意した5億円から分配する計画を一時停止し、新型コロナウイルス対策への資金にあてる。
  • 新たな融資制度を創設する。融資は公式試合安定開催基金の10億円を転用(通常は勝ち点ペナルティとセットで融資)。例えば、3年くらいの猶予をおき、長期で返済するという考えも。
  • 賞金や理念強化配分金を整理していく中で、その他にどのような形が可能なのかを考える。

◆根底にある考え方

  • クラブを破綻させない。
  • 選手の安全と生活水準が下がらないようなセーフティーネットを敷く。
  • 減給が発生しないように取り組む。

村井チェアマンすごく仕事ができる人だと思います。Jリーグを必ずこの問題から守り切るという強い意志を感じます。また、欧米や南米に対し、財務の健全性が守られたリーグであることを強みと認識し、そこを守り切る考えです。もし、これがうまく機能すれば、今後欧米の選手たちに対し、プレーする場所として大きなアピールとなるでしょう。

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資金繰り対策を掘り下げる

この資金繰り対策についてもう少し踏み込んで考察します。

ダイヤモンドオンラインには次のような記述があります。

「『各クラブの資金繰りやJリーグの体力を見ながら計算していますが、J1、J2、J3のクラブの合計でだいたい10億円から15億円ぐらいの減益になる可能性があると考えています。再開がずれ込んでいることで当然ながらJリーグとしても、4億円から5億円は出てくるのではないか、と』合計で最大20億円もの減益が出る可能性があると明言したのは、Jリーグのクラブ経営本部の鈴木徳昭氏だ。」

ここで、先に前提を確認すると最大20億円の「減益」ではなく「減収」かなあと考えます。というのは、「減益」と考えた場合、例えば2018年度の決算では、J1からJ3の当期純利益を足し合わせても10億5,500万円と、20億円に満たないからです。営業利益ベースだと28億600万円と20億円以上ありますが、この場合7割以上が無くなることになりますので、そのような話しぶりにはならないのではないかと思います。このため、20億円は「減収」という解釈をします。

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減収インパクトは「20億円」より多いのではないか

ダイヤモンドオンラインから引用させていただいた、以下の試算より先述の減収幅で済まないのではないかと思っています。

今回の措置でまず第一にダイレクトにヒットするのは入場料収入(2018年度193億円)です。今回の措置により、①一定期間キャパシティ半分の期間が発生すること、②週末開催のゲームが平日開催になる、という影響があります。

一定期間キャパシティ半分の期間が発生するのが仮に全日程の1/3であり、その1/3の日程の入場料が半分だとすると、以下のような計算になります。

1/3の日程がキャパシティ半分の試合の減収:193億円×1/3×1/2=32億円

仮にそれが全日程の1/4である場合は以下の計算となります。

1/4の日程がキャパシティ半分の試合の減収:193億円×1/4×1/2=24億円

その他、インパクトを受ける収入は、入場料のちょうど半分近くの規模がある物販収入もあると思われることから、減収インパクトは1.5倍になるでしょう。そうすると、当該制限開催が1/3の場合は48億円、1/4の場合でも36億円と試算されます。細かい条件をつければ減収が20億円というシナリオは計算できるかもしれませんが、現状Jリーグが想定する1.8〜2.4倍の減収インパクトが発生する可能性があるのではないかと思います。

目先、いくら足りないのか?

Jリーグチーム全体の損益を1/12することにより、1ヵ月試合がなかったとしてどれくらいのお金が足らずまいとして必要なのかを試算してみました。


基本的な考え方として、各収支項目をひと月あたりにし、試合がないことにより影響を受けるであろうと私がみる項目に独断と偏見からストレスを与えました。その他、注意事項としては、①単純に年間の収支を1/12しているので、ならした数字からこねくり回したもの(実際の収支は時期の偏りがあります)、②収入と支出のストレスはドタ感で作ったもの、③前提を動かすと大きく変わる、ということです。

この前提で、一つの頭の体操として下表をご覧ください。

結果、8億6,800万円でした。これは1ヵ月あたりの数字です。現在の想定では、Jリーグは実質3月と4月の2ヵ月にわたって試合を開催できないので、トータル17億円〜18億円の資金不足が試算されます。

この試算については、ひょっとしたら前提が異なるかもしれません。また、仮にむしろこの試算が実情に近かったとしても、恐らく各チームはコスト削減の努力や資金調達を行うので、結果的にリーグへの要請金額は変わることになると思います。そして、何を隠そうバリバリの私大文系の私が計算を間違えているかもしれません orz。

あくまでも頭の体操として試算させて頂きました。 まずはとにかく、リーグの再開ができる環境になることを願うばかりです。

 

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