湘南ベルマーレ:RIZAPは非中核事業として整理。どこかのタイミングで売却か?

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継続企業の疑義の記載抹消

2020年7月に「RIZAPの湘南ベルマーレ株は銀行に抑えられているかもしれない」という投稿をさせて頂きました。
そこでは、RIZAPグループが経営危機であるということ、そして2020年3月期のRIZAPグループ有価証券報告書において21,827百万円の関係会社株式のうち16,582百万円が借入の担保に入っている旨の記載があり、同社が子会社とする湘南ベルマーレ株も担保となっている可能性があると書かせて頂きました。
あれから2年。RIZAPグループ状況を見ながら湘南ベルマーレについて考えてみたいと思います。
RIZAPは2018年3月期まで、好調だったRIZAP事業の勢いに任せて事業と関係なさそうな企業を含め次々と企業買収を進めました。
M&Aの事例
(出所:2018年3月期決算説明資料)
当時は自らの企業再生手腕に自信をもっていたようで、M&Aを成長戦略の柱の一つに据えました。
結局、抱え込んだ企業は必ずしも思った通りに再生できず、その上コロナ禍が柱であるRIZAP事業を直撃し、経営危機に陥ります。
勢いに乗った企業がM&Aを重要な戦略として打ち出すケースを多く見ますが、経験上そういう企業は下り坂間近という印象があります。M&Aは何かを達成するための手段であるはずですが、目的化していることが多い印象です。
この結果、投資家への企業の説明資料となる2020年3月期有価証券報告書の「事業等のリスク」においていわゆる「継続企業の前提に関する注記」を記載せざるを得ない状況になりました。要は投資家に対する自社の説明資料に「当社は財務的にやばい状況です」と注意喚起を広く謳っているということです。この経営危機を踏まえ、一旦買収したものの不要な子会社を売却し、コスト削減も進め、2022年3月期になんとか黒字化を果たしました。
継続企業の前提に関する注記の記載についての説明
(出所:2021年3月期決算説明会資料)
こうして、2022年3月期における適時開示資料の一つである第2四半期の四半期報告書の「事業等のリスク」において、2019年3月期から2021年3月期の有価証券報告書に記載されていた、経営破綻にリーチが掛かっている旨の「継続企業の前提に関する注記」はもう記載する必要がない旨以下の書きぶりにより開示されます。
<2022年3月期 第2四半期報告書>
(継続企業の前提に関する重要事象について)
 当第2四半期においては、2021年4月に3回目および7月に4回目となる緊急事態宣言が発出され、新型コロナウイルス感染拡大に伴う店舗の臨時休業などの影響がありましたが、店舗の営業再開後は多くのグループ傘下店舗でいち早く客足が戻り、売上が順調に回復しました。また、「新型コロナウイルス感染拡大に伴う経営対策」として前期末から行っているグループ横断的なコスト削減を継続したことが功を奏し、第1四半期に引き続き、当第2四半期においても営業利益および親会社の所有者に帰属する四半期利益の黒字化を達成しております。
 このような状況の中、当社グループの収益が改善し黒字化を達成していること、安定的な財務基盤が構築できている状況を鑑み、主要金融機関との間で締結した金銭消費貸借契約における財務制限条項に抵触していた状態は第1四半期から継続して当第2四半期末時点においても全て解消されております。
(中略)
 当社では、引き続き持続的成長に向けた経営基盤の強化のための構造改革施策を実施していくとともに、2022年3月期も引き続き、「グループ各社の共通機能の統合」、「グループ全体のコスト最適化」、「非対面・非接触事業の開発」の3つを柱とする「新型コロナウイルス危機対応」に注力し、新たな収益源の確保およびさらに安定した財務運営を目指してまいります。
(中略)
加えて、事業売却やグループ資金の活用等により事業活動に必要な資金を確保するための施策を講じており、当面の資金状況は安定して推移する見通しです。
 以上のことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
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とはいえ、関係会社株式の担保設定は継続。苦しい資金繰りは続く

とはいえ、一応、期毎の成績表である損益計算書上の黒字化は果たしたRIZAPグループですが、関係会社株式の担保設定は続きます。関係会社株式の担保設定について記載されている最新の決算書類は2021年3月期有価証券報告書ですが、引き続き関係会社株式18,929百万円のうち、15,533百万円には引き続き担保設定がなされている旨記載されています。2022年3月期の有価証券報告書の開示はまだですが、今年の段階で状況が大きく変わっていることは考えにくいでしょう。このため、今も湘南ベルマーレ関連株が担保設定されている可能性は否定できません。それではそれがいつ担保設定が外れるかというと、担保設定している融資を返済し終わるか、あるいは担保設定している金融機関との合意のもと、対象担保を売却した時です。
そして苦しい資金繰りも続きます。下表はRIZAPグループのキャッシュフロー計算書です。
RIZAPグループ連結キャッシュフロー計算書
(出所:有価証券報告書及び決算短信より筆者まとめ)
営業活動によるCF(キャッシュフロー)は事業で稼げていればプラス、稼げていなければマイナス。投資活動のCFは投資を実施すればマイナス(お金が出て行く)、投資を現金化するなどして回収すればプラス。財務活動によるCFは借入や社債発行により資金調達すればプラス、返済すればマイナスになります。
企業の生殺与奪を握るとも言えるキャッシュフローで見る限り、2020年3月期以降、リストラとして不採算子会社・関連会社を売却し営業活動CFはプラスの数字が出るようになったものの、借入の返済を賄えるほどには稼げていない状況だといえます。足りない分は手持ちの現金で賄っている状況といえます。しかしながら、現状手持ち現金が200億円以上あるので、すぐに資金が回らなくなることはないでしょう。
そのようなわけで、経営危機を脱したもののまだまだ苦しいRIZAPグループですが、湘南ベルマーレの関係について少し考えてみたいと思います。

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