2021シーズン 全Jクラブ決算ランキング 〜1〜

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2021シーズン決算の焦点

7月末に全Jクラブの2021シーズンの決算数値が開示されました。
今期の決算を見るにあたり、ポイントとなるのは、コロナ前と比較してどれくらい収益(稼ぐ力)が回復しているか、そして債務超過クラブの状況であると思っています。
ランキングをみつつ、それらもさらっと見てみたいと思います。
本トピックは2回に分けて投稿することを考えており、今回は営業収益(売上)関連のランキングを掲載します。
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営業収益(売上高)ランキング

損益計算書の上の項目から見ていきましょう。
営業収益ランキング
まず、営業収益です。川崎フロンターレが晴れの1位です。前年は横浜FMの5,864百万円がトップでしたが、大きく上回る6,982百万円を計上し、全クラブの中でトップとなりました。前シーズンは3位でした。
一点、留意すべき点があります。神戸の数字を吟味する必要があるということです。神戸の損益計算書の特別利益を見ると、当期は3,300百万円の特別利益を計上しています。前年度は5,250百万円です。とんでもない額の特別利益で、3,300百万円といえばちょうど札幌1クラブ分の営業収益になります。私の推察では、楽天から何かしらの補給が行われていると考えています。このため、最大の営業収益を誇るのは実質神戸であると考えます。
なお、数値上の営業収益の規模はトップ5の名古屋まで営業収益の金額が6,000百万円を超えていますが、内訳を比較するとチームごとの違いがあります。
営業収益TOP6の内訳を下表の通り取りまとめました。2点触れたいと思います。取り纏めをTOP6としたのは個人的にマリノスを入れて見たかったからです。
2021営業収益TOP6 営業収益内訳
一つは各クラブの営業収益の最大の比率を占めるスポンサー収入の比率です。個人的には、営業収益のうちスポンサー収入が最も重要であると考えています。理由は、収益の規模に加え入場料収入と比べスタジアムのキャパシティのような上限が無いためです(上限が無い点は物販収入も同じことは言えます)。
スポンサー収入の比率は、浦和と名古屋の57%がトップです。そして、横浜FMの42%、川崎Fの41%と続きます。なお、神戸の特別利益を仮に楽天からのスポンサー収入とみなすと51%となります。推測を元に述べると、スポンサー収入の比率と質の点から、浦和が最も内容が良いとと考えています。名古屋はトヨタの比率が高く、三菱グループが方針として関与を薄めている浦和の方がスポンサーが分散されていると推察されます。この結果、メインスポンサーの経営にクラブが左右されにい収益構造であるとみています。かつての横浜フリューゲルスの消滅やベルマーレ平塚の経営危機のようなことが起きにくくなるということです。
もう一つが「その他収入」です。その他収入とは①賞金、②移籍金収入、 ③サプライヤー契約収入 、④ファンクラブ・後援会収入、 ⑤イベント出演料、 ⑥その他です。
恐らく①や②の比率が高いものと推察しています。浦和はレオナルド、川崎Fは田中、三苫、旗手などの移籍がありましたが、賞金も含め一時的な要素が強い項目の比率が高く、要は下駄を履いている状況ではありますので、留意が必要かと思います。
なお、横浜FMの営業収益が減少しているのは、恐らくアカデミーを他の法人の運営に移したことが要因であると推察しています。2021シーズンのアカデミー関連収入がゼロとなり、関連法人の営業収益が4百万円から768百万円に大幅に増加したためです。2020シーズンの横浜FMのアカデミー関連収入は308百万円でしたが、当該金額に含まれているものと考えています。
増収率ランキング
増収率のランキングも作成しました。相模原、秋田、徳島、福岡など、昇格組が上位に並んでいます。トップのYS横浜はスポンサー収入が22百万円から136百万円と6倍以上に増加したことによるものです。2020シーズンの営業収益が73百万円でしたが、どういうクラブ運営をしていたのか興味があります。2桁減収となった3クラブについては固有の事情がありそうです。横浜FMは先述の事情によるもの。岐阜についてはJリーグ配分金の減少(J2仕様の配分金からJ3仕様の配分金への変更)及びスポンサー収入の減少によるもの。柏についてはその他の収入が1,177百万円から260百万円に減少したことによるものが主因で、オルンガ効果の剥落でしょう。
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スポンサー収入

スポンサー収入ランキング
次はスポンサー収入です。浦和の強さが際立ちます。意外なのが清水の順位です。さすがサッカー処といいますか、鈴与が頑張っていると言いますか。大宮や柏は恵まれたスポンサー収入額に応える必要があるでしょう。
その他気になるところが鳥栖です。鳥栖は前社長の放漫経営により傷んだバランスシートの改善が急務です。かつて同クラブを支えたDHCやサイゲームスの抜けた穴を埋める必要がありますが、まだその途上です。「地方だから大変」ということは否定はしないですが、福岡も近いですし、ハウステンボスがスポンサーに名を連ねていたこともあったので、J1で活動しているという事に加え、九州全般を営業権として視野に入れればまだ伸ばせるはずです。

入場料収入

入場料収入ランキング
次に入場料収入です。先述の通り、入場料収入にはスタジアムのキャパシティの問題があります。しかしながら、コロナウイルス蔓延に対する措置による入場制限を勘案すると、来季の増収が読みやすい収益カテゴリとしての重要性があります。また、欧米のクラブと比べ、Jリーグクラブは比較的入場料収入の比率が高いです。なお、J3などの下部カテゴリに関しては、元から来場者数が少ないです。このため、コロナウイルスへの影響は他のカテゴリより少ないです。
更に2019シーズンの入場料収入を2021シーズンの入場料収入から差し引き、入場料収入回復のポテンシャルとして下表の通り取りまとめました。
2019シーズンとの入場料収入差異
※2019シーズンよりカテゴリが上のクラブは順位を赤、下の場合黒でハイライト
当該金額に関して、やはり浦和が一番でした。G大阪や神戸など、人気クラブが上位に来ている印象です。仮に来季に入場者数の制限が解除されれば、各クラブにはさらに人件費等への投資余力を備える見込みです。特に浦和は期待できそうですね。
また、下位のクラブは2019シーズンと比較し、上のカテゴリで活動したクラブが多くを占めます。

Jリーグ配分金

Jリーグ配分金とは、①クラブ支援費 (アカデミー支援、事業協力、ACL参加補助、降格救済等)、 ②公衆送信権料、③商品化権料になります。所属するカテゴリや成績により決まるものなので、取りまとめても役に立たないかなと思いながらまとめましたが、実際見てみると各カテゴリにいるとどれくらい配分金が支給されるのか金額感を掴むという意味で一見の価値があると思います。
Jリーグ配分金ランキング

アカデミー関連収入

アカデミー関連収入
アカデミー関連収入は地味ですが、将来の有力な選手供給源としての充実度を測る一つの物差しであると思います。FC東京と清水の300百万円を超える収入規模が目を引きます。また昨年の実績を見る限り横浜FMも300百万円を超えているでしょう(恐らく今期は別組織で売上計上)。それからC大阪の0も別法人による運営であろうと推察しています。ちなみにC大阪の関連法人の売上高は1,304百万円になりますので、その中に含まれるものと思われます。
J2でいえば大宮、東京Vです。J3では富山が頑張っていますね。かつては東京Vの下部組織、最近は川崎の下部組織上がりの選手の活躍を目にするのが多い印象ですが、中長期的にこうしたクラブからどのように選手が育っていくのか興味深いです。

物販収入

物販収入ランキング
物販収入は川崎が10億円間近です。川崎は商品企画力が秀逸です。また、メルマガなどでどんどん売り込んでおり、頑張っている印象です。
とはいえ、川崎の今回の数字は優勝という下駄を履いていると考えています。優勝できないシーズンでどれくらいの数字を維持できるか関心があります。
入場者数の多い浦和が川崎に続きます。全般的にファン層の厚いチームが上位に並んでいます。物販収入はスポンサー収入と同様に営業により売上を作ることが出来、入場料収入のような天井がありません。ヨーロッパでは各ホームタウンの中央駅構内にファンショップがあったりしますが、日本でもそうなっていけば良いなと思います。観光の観点からも地域性としての雰囲気も出すことが出来ると思います。

その他収入

最後にその他収入もチェックしてみましょう。
その他収入ランキング
先述の通り、その他の収入は、神戸(古橋)、川崎(田中、三苫、旗手など)、浦和(レオナルド)など海外に選手を送り出したクラブが並んでいます。鹿島はなんでしょうね。恒常的に多額のその他の収入を計上するクラブは選手を育てることに長けたクラブとも言えそうです。

コロナ前と比べ営業収益はどれくらい回復したのか

2021シーズンの営業収益は、コロナの影響を受ける直前の2019シーズンと比較してどの程度の水準なのか下表の通り取り纏めました。
営業収益2019シーズンとの差異
※2019シーズンよりカテゴリが上のクラブは順位を赤、下の場合黒でハイライト
順位にハイライトのない、昇降格のないクラブ眺めてみれば、コロナ前の水準にもう一息で戻れるイメージです。来期、試合の入場者への制限を解除し、2019シーズン並みの集客が行われれば、2019シーズンの水準を抜くことが予想され、損益計算書上は克服できたと言えそうです。
一方で、岩手、町田、YS横浜、富山をはじめ、コロナ下でも営業収益を伸ばしたクラブもありますので、そうしたクラブは大いに評価されるべきではないでしょうか。

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