サガン鳥栖「牛乳販売」と「不動産投資」報道に関する考察

サガン鳥栖が「牛乳販売」を考えているとか、「不動産投資」の案が出ているとかの報道

色んな意味で面白いというかびっくりと言いますか。
サガン鳥栖大赤字決算を経営改善策として、牛乳販売(西日本スポーツ)を計画しているとか、ビジネスアイデアとしての不動産投資を検討している(スポニチ)という報道がありました。また、クラウドファンディングをやりたいという話もあるそうです。

「牛乳販売」について

まず、牛乳販売の話。記事の題名からなんだか唐突な話でびっくりしましたが、「パッケージにマスコットを描いた牛乳販売を計画中」とのこと。牛乳を自分で売るのではなく、パッケージの商標から利益を稼ぎたいということです。これはブランドを生かした戦略としてよくある話だと思います。そういえば、Jリーグカレーもありました。
今日は休みで時間があるので、そのインパクトを試算してみます。

牛乳販売のインパクトの試算

<前提条件>
  • 牛乳の消費量を世帯あたり78ℓ/年とする(総務省の調査によると、牛乳の全国平均消費量は1世帯(2人以上)あたり77.84ℓ)。
  • 牛乳の単位と価格を1ℓ200円とする(1本。本当はビン牛乳もあったり色々あるでしょうが)
  • 佐賀県の世帯数は約30万世帯(先ほどの78ℓは2人以上の世帯ですが、牛乳消費の詳細も、世帯内訳詳細もわからないので、そのままこの数字を使います)
  • サガン鳥栖のブランドのついた牛乳のシェアは20%とする。
  • 商標料は2%とする(検索すると、相場は売上の1.6〜2.7%だそうです)
<収益の試算>
78(ℓ)×200(円)×300,000(世帯)×20%(シェア)×2%(商標料レート)=1,872万円(1年あたり)

試算に係るコメント

この試算は甘めです。対象世帯数も甘め(78ℓはあくまでも二人以上の世帯で、一人世帯は飲まないところも多いでしょう)ですし、牛乳のシェア20%も大手がひしめく中、結構大変だと思います(メーカーの人の話を人伝に聞いたのですが、牛乳販売の現場(スーパーの売場確保)は熾烈と聞いたことがあります)。このため、あったとして収益的なインパクトはあって年間1,000〜2,000万円程度でしょうか。もちろんやった方がが良いですが、根本的な解決とはなりません。
むしろ、スポーツチームとして今までやっておくべき話です。
ちなみに、最近の流行だと、Jリーグチームと電力会社とのパートナーシップでチーム名をつけた電力があります。例を挙げると、湘南電力、水戸電力あたりが有名です。大分前からこの辺は注目していましたが、決算をみる限りあまり収益面でのインパクトはなさそうです。
結局、サポーターとの接点や収益の積み上げの点で何れにせよやったほうが良いのですが、商標活用という企業戦略としてきちんと方針やアイデア作られていないところが問題だと思います。

「不動産投資」について

次は不動産投資の話です。実は、エンターテイメントビジネスと不動産投資の組み合わせは悪くありません。
上場企業の例で言うと、東宝や松竹は不動産屋さんです。有価証券報告書から両者のセグメント別の売上高を確認します(2019年3月期)。
<東宝>
(単位:百万円)
 
映画事業
演劇事業
不動産事業
合計
(その他及び調整額反映前)
売上高
161,330
16,058
68,975
246,363
セグメント利益
30,583
3,297
17,368
51,249
セグメント資産
65,391
7,500
191,172
264,064
<松竹>
(単位:百万円)
映像関連事業
演劇事業
不動産事業
その他
合計
(調整前)
売上高
51,864
25,162
12,054
10,135
99,217
セグメント利益
2,737
1,788
4,446
442
9,415
セグメント資産
34,039
10,043
117,494
5,717
167,294
東宝をみると、売上高こそ映画事業が圧倒するものの(不動産の2倍以上)、不動産事業は映画に次ぐ利益の柱です。松竹も同様に映像関連事業(要は映画)の売上が事業別売上のうち最大のシェアを占めますが、利益で言えば不動産は映画の1.5倍以上あり、実質不動産会社です。
以前、この2社のうち片方の会社さんの方とお会いしたことがあるのですが、映画会社が不動産をやる理由は、エンターテイメント事業は浮き沈みが大きいため、不動産の安定的な収入とセットで会社として安定的に運営されると言う趣旨のお話を伺ったことがあります。実際、スクウェアエニックスという会社がありますが、この合併会社が生まれた理由はスクウェアがファイナルファンタジーのCG映画を作り、大赤字をブッこいてしまい (確か200億だったと思います)、エニックスに救済されたためです。これは、エンターテイメント事業の浮き沈みの最たる例です。
このような観点で、Jリーグチームが不動産事業を行うことはアリなんだろうなと思いますしかしながら、両者のセグメント情報の「セグメント資産」というところに着目していただきたいのですが、不動産は売上が少ない代わりに利益が多いという性格がある一方、資産が大きくなります。つまり裏を返すと、最終的に資産を買うために巨額の借金が必要だということです。両社とも、不動産事業は映画事業の3倍近くの資産を保有しています(表の「セグメント資産」参照)。一般論で言うと、不動産事業のために借金(借入方針がありますが、購入当初は7割とか5割の借入をします)をした場合、返済の資金繰り、空室の管理、売却などきちんと判断出来ないと、大きな金額が動く事業なだけに会社としてコロッとやられます(リーマンショックの際、多くの新興不動産開発事業会社が倒産しました)。もちろんサッカーチームであるサガン鳥栖にそうしたファイナンスに係るマネジメントに長けた人材がいるとも思えません。さらに言うときちんとした計画もあるような気がしません。

クラウドファンディングについて

なお、竹原社長はクラウドファンディングをやりたいと話しているそうです。クラウドファンディングについては、一般からお金を募ることになります(クラウドファンディングには、返済「あり」、「なし」それぞれの方法があります)。それが借入であれ、増資であれ、クラウドファンディングであれ、ファイナンス(資金調達)の基本は資金使途を明らかにすることが大々前提です(クライドファンディングサイトを見ても通常、資金使途位は書いてあります)。しかし、果たして社長に「こういう計画があって、そのためにこのようにお金を使いたいので、お願いします」という説明ができる予感がありません。あまり社長を非難するためにこれを書いているつもりはないのですが、ファイナンス及び資金の出し手を舐めていると言われてもおかしくないと思います。
しかし、もし一般から資金を募るのであれば、クラウドファンディングではなくサポーター向け公募増資が良いです。なぜかと言うと、サポーターが株主としてモノが言え、総会で投票出来、(参考例で言うと、阪神電鉄(今は阪急阪神)の株主総会のニュースは笑ってしまいますよね)。究極的には社長を取締役として承認しないことができます。

社長の資質

本当かどうかはまずありますが、どうやら記事によるとサポーターミーティングで「案を募る」ようですが、カオスになりそうな気がしてなりません。
報道が本当であれば、場当たり的かつ物事を簡単に考えすぎに見えます。
会社としての中長期の計画はあるのでしょうか。また、サポーターに案を募るようであれば、社長はいらないと思います。中小オーナー企業にこういうトンデモ事件はよくあるのですが、社員に同情します。
また、これらのニュースが本当なのであれば、社内事情が漏れているということで、社員たちは「チームがバラバラじゃねえか」の状況になっていると考えられます。
サガン鳥栖のサポーターミーティングは社長によるパルプンテが起きそうな予感がします。チームにプラスの結果になることを祈りつつ、結果をドキドキしながら続報を楽しみに待っています。
そして、最後に、これはニュースが本当であるということが前提ですので、もし報道が事実でなければ意見は異なります。この場合、サガン社長含め、皆様にお詫び申し上げます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました