資金ショートの懸念が始まった〜J1・J2の安全性分析を踏まえて考える〜

各チームの資金ショートへの言及が報道され始めた

まず、新潟の是永社長がクラブを維持するためには、毎月1.5億円から2億円が掛かり、このまま自然体で何もないまま進んでいくと、9月から10月くらいにキャッシュがなくなり倒産してしまう危険性をテレビでお話しされていたそうです。また、札幌の野々村社長が、純資産は5億円ほどで、10月にキャッシュが尽きる可能性がある」と話していたと報道されています。

J1全体の安全性分析(2018年度)

上表は、J1の各チームの2018年度決算数値に関し、安全性分析を行ったものです。自己資本比率、流動比率、固定長期適合率という数値に関し、ランキングをつけたものです。一旦、それぞれの意味を整理します。
自己資本比率(自己資本/総資本)
自己資本比率とは、高いほど「中長期的に見て倒産しにくい会社」と考えられます。資本構造の手堅さを見られると言ってもいいでしょう。
流動比率(流動資産/流動負債)
流動比率とは、「1年以内に返済すべきお金を流動資産で賄えているかを表す」企業の支払能力を示す数値です。100%あれば、1年以内に支払不能になる可能性が低いことを意味しています。
固定長期適合率(固定資産/(固定負債+自己資本)
固定長期適合率とは、「固定資産を取得するための資金を、自己資本と自己資本に近い長期の借入金で賄えているかを判断できる、つまり「会社の資金運用がきちんとできているか」を判断することができる」数値です。100%以下が望ましいとされています。
まず、数字の良し悪しはあると思いますが、危機対応という観点からみると、盤石な親会社盤石な関係をもち、親会社から必要に応じた支援が見込めるチームは親会社という別のポケットからお金が出てくるものと見ています。このため、そうでないチームである仙台、札幌、湘南、清水、鳥栖にフォーカスします(広島、長崎はあまり調べてないので迷いますが、大丈夫な方に整理します)。
別の稿(「サガン鳥栖経営危機について安全性分析数値から眺める」)で説明させていただきましたが、鳥栖の状況が良くないです。それから、清水です。相対的に良好な財務状況を作り出している札幌からアラームが発せられているにもかかわらず、鳥栖、清水から何も出ていない状況に、私は首を傾げます。

J2全体の安全性分析(2018年度)

J2の心配の筆頭は、横浜FCです。脆弱な自己資本比率、資金使途と噛み合わない資金調達が浮き彫り担っています。小野寺グループというところが親会社となっていますが、資本金数千万円会社いくつかで構成される企業グループが営業費用15億円を要する横浜FCを支え切れるか気になります。
そして次に心配なのは山口と新潟です。山口については、Jリーグに昇格して日も浅いことからチームとして自己資本の蓄積ができていないこと(2017年度、2018年度が赤字)、そしてJ2残留のために選手獲得などに背伸びをしていたことが理由であると推察します。ある意味やむを得ないものと思います。
新潟はJ2に降格してJ1復帰を目指しているものの、営業収益が落ちてしまうJ2仕様のコスト構造に合わせ切れていないのでしょう。2017年度決算及び2018年度決算においても、共に赤字です。
なお、財務状況が良い方は、サイバーエージェントから増資されて町田はさておき、徳島、岐阜、讃岐の検討が目立ちますね。

野々村社長と是永社長の資金ショート報道の意

是永社長によると、毎月1.5億から2億円の資金を要する旨をお話しされていますが、確認したいとます。2018年12月期決算(2018年度)における営業費用は、27億円とのことで、そこから試合関連経費を2.6億円を引いて12(ヶ月)で割ると2億円です。これが概ね是永社長のイメージなのかもしれません(但し、借入の返済は含めていません。そこまでの細目がわからないので。また、2018年12月期決算は、最新の開示資料といえども前の前の期の取りまとめなので、若干前の状況です)。
札幌についても、2019年1月期決算(2018年度)における営業費用から32億円から試合関連経費3.3億円を引いて、ひと月あたりにすると、2.5億円ほど毎月出ていくことになります(これも借入の返済は除きます)。
その上でですが、是永社長は「このまま自然体でいくと」という条件付きの話、野々村社長は「借入をする」旨話していますので、あくまでも最悪のシナリオとして話していることがわかります。ここでアラームを鳴らしているということがわかります。夏、秋目処とし、資金調達実現までの時間をきちんと勘案し、金策に取り組んでいると見ています。この辺、両チームの社長のマネジメント力が見えて来ます。

現状の選択肢

これまで、つらつらと財務諸表のお話をさせていただきましたが、財務分析はチームの状況を把握する参考となるものの、実際の今の状態は社内の資金繰表を見ないとわからないものです。上述のBSを中心とした安全性分析は、危機に対するスタートラインがあくまでも高いか低いかに留まります。
貸借対照表の示す期末の財務状態というスタートラインから損益や借入や返済を制御することが経営者の作業ということになります。
今、優先されるべき作業は、具体的にはとにかく現金を確保し、キャッシュアウトを止めることです。現金確保については、Jリーグの配分金の前倒し受領、スポンサー収入の確保、物販やイベントその他での収入確保。キャッシュアウトの面では、具体的には支払いを待ってもらうこと。例えば借入返済の猶予、相手を選びながらの費用支払の留保。仮に重要な協力業者への支払いを留保した場合、法律的な問題も発生する可能性があるが、潰してしまうと今後の商売に支障が出る。銀行からの借入であれば、一定期間止めても問題ないと考える(現実的には返済条件の再設定で着地できる)。実際のところ、ここが経営者又は財務担当の腕の見せ所だと思います。現在の都道府県の運営が知事の能力で差異が出ているのと一緒ですね。

選手への報酬カットに乗り出すか

そして、選手の給与をカットすることは、目先はもちろん有力な策ではありますが、カットせずに乗り越えられれば、Jリーグを「金払いのきっちりしたリーグという」将来的なブランドにつながるという点で悩みどころです(外国人招聘には強い訴求力があります)

リーグからできるだけ早くのチームに対する資金供給が行われるべき

返済猶予付きの融資によるリーグからの支援

Jリーグは返済猶予付きの融資を計画しているようです。これももちろんあった方がいいですが、Jリーグによる資本注入の方がベターだと思っています。サッカーチームのキャッシュフロー構造は、なかなか潤沢なキャッシュを生めません。このため、経営が巡航速度となっても、返済のための節約から、ここ何年にもわたって良い流れであった各チームの成長は足踏みするでしょう。

リーグからの資本注入が望ましい

融資よりも、資本注入の方がこれまでの成長軌道に戻るスピードを支援できるでしょう。具体的には、例えば「1億円を貸します。それを5年間で返してください」となると無利子でも毎年2000万円のお金が出ていきます。
これを例えば、4%の優先株とした場合、毎年400万円のキャッシュアウトとなります(但し、優先株が有る限り払い続けることになります)。そして、お金がたまった時、あるいは差し替えで代わりに増資に応じてくれるスポンサーが出てくれば、そこから第三者割当増資を受け、優先株を買い戻せばいいと思います。なお、地方銀行系のベンチャーキャピタルに対して、割安な金額による増資などでも良いかもしれません。札幌くらいの経営者の手腕があれば、地銀の地域支援の観点を引き出せば実現する可能性もあるのではないかと思っています。

経営者は声を上げるべき

早く声をあげないと間に合わない。そういう意味で、新潟と札幌の社長が声をあげたことは肯けます。新潟と札幌は「危ない」のではなく、経営者の危機意識が大きいと見ています。また、相対的に優秀な財務状況に回復した札幌が声を上げていることから、他のチームも続くことに躊躇はないはずです。
自治体、政府、経済界から、やっているでしょうがどこに対しても支援を仰ぐべきです。自治体、政府から協力を仰ぐという観点で、今報道されているクラブハウスをコロナの検査場とすることは、Jリーグチームは公器であることを認識させるために有効でしょう(他にアイデアがあれば積極的に取り組んでほしいですね)。プロスポーツチームは一種の公器です。それをアピールするべきです。東日本大震災の際のチャリティーマッチがどれだけ明るい話題となったことか。阪神淡路大震災の際にオリックスがどれだけ地域を勇気付けたか。そもそも、Jリーグはtotoを担っており、すでに重要な公器です。これもアピールしなければいけません。
そして、政府に対しては、野球やその他スポーツ団体と連帯して支援を要求するべきです。更に、ソフトバンクオーナーの孫さん、そして楽天オーナーの三木谷さん、京セラ創業者の稲盛さんなど、個人からの支援による基金なども目指したいところです。

試合をしなければならない

ここは、リーグもチームも認識しているところですが、試合をしないと収入が確保できません。コロナ禍の状況は大きな改善が見られないため、入場料収入は見込にくいですが、スポンサー収入とDAZNの配分金をまず確保する必要があります。契約内容は全く知りませんが、試合をすることが大前提となるでしょう。
ちなみに、J1チームの平均的な収入構造は以下の通りです。
平均収入額
(単位:百万円)
比率
収入総額 4,755 100%
 うちスポンサー収入 2,130 45%
    うち入場料収入 804 17%
 うちJリーグ配分金 487 10%
 うちアカデミー関連収入 160 3%
 うち物販収入 422 9%
 うちその他収入 754 16%

試合をしなければ極端な話、収入がゼロになる可能性があります。しかし、無観客でも試合をすることにより、一部のスポンサー収入、Jリーグ配分金などは確保できるでしょう。現状、無観客でもやりたいところです。いや、やらなければいけません。仮に秋からでも、冬からでも、過密日程でも。そうでないと、Jリーグ配分金はあり得ず、また、安定開催融資などのJリーグからの支援が満足に実現しない可能性も十分あると思います。

我々ができること

このような状況で我々一般人ができることは以下の通りとなると思います。①コロナウイルス に感染せず、早期の社会の正常化に貢献、②DAZNをやめない、③各チームの企画に乗る・グッズを買う、④試合が再開したら会場に足を運ぶ、⑤Jリーグやチーム主催のYoutubeを見る(広告費が入ります)、こんなところでしょうか。

そういえば、このような事態になり、スポーツ庁の姿が見えません。鈴木大地長官の声が聞きたいところです。

 

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