RIZAPの湘南ベルマーレ株は銀行に抑えられているかもしれない

RIZAP 2020/3期決算 今期も大赤字

以前、ブログでRIZAPと湘南ベルマーレについて触れた記事を投稿させていただきましたが、この度2020年3月期のRIZAPの有価証券報告書が開示されました。今回は、決算を眺めるとともに、そこからひょっとしたら起きるかもしれないことについて想像にふけってみます。
決算の方については、以下の推移の通り今回も大赤字でした。
RIZAPグループ 連結損益推移
 
 
 
 
 
(単位:百万円)
決算年月
2016年3月期
2017年3月期
2018年3月期
2019年3月期
2020年3月期
売上収益
53,937
95,299
122,063
210,905
202,934
当期利益
1,587
7,678
9,075
-19,423
-6,046
(出所:有価証券報告書)
売上収益は202,934百万円と前期比3.8%減少、営業利益(損失)は-752百万円(前期は8,394百万円の損失)、当期利益(損失)は-6,046百万円(前期は19,423百万円の損失)でした。損失幅は前期比で小さくなったものの、依然大きな出血は止まっていません。

中期経営計画「commit2020」は全くコミットできず

先ほどの表の通り、ライザップは2018年3月期までしばらく増収増益を続けてまいりました。
RIZAPは、元々、「健康コーポレーション」という名前で、2003年に設立され、健康食品の通信販売を祖業としています。そして、2006年に札幌証券取引所のアンビシャスという微妙なマーケットに上場し、微妙な業績で推移していましたが、2010年に現状のライザップの事業目的とするグローバルメディカル研究株式会社を設立し、成長軌道に乗ります。そして、世間に知られるような快進撃を成し遂げます。
そして、2015年2月に「commit 2020」という中期経営計画を策定しました。
中期経営計画「COMMIT 2020」の内容
(1)経営目標 「自己投資産業グローバルNo.1ブランド」となる。
(2)個別戦略
①医療分野への進出
 ◆高度医療知識と当社ノウハウの融合による新たなサービスの創出
 ◆医療機関の患者・受診者様に向けた健康サービスの提供
 ◆健康寿命延伸
②海外への本格進出
   ◆RIZAPを軸に海外進出を加速
   ◆北米/欧州/アジア/中東での展開
   ◆進出地域ブランド認知70%超を目指す
③成長基盤の一層の強化
   ◆マーケティング戦略強化による顧客基盤の拡大
   ◆高付加価値化により、生涯にわたって顧客に利用して頂けるサービスを提供
   ◆経営基盤の継続強化
 
そして、このCOMMIT 2020を策定したあたりから、「M&A」を成長戦略の柱の一つとして推進します。
こんな会社を買収してまいりました。
RIZAPグループのM&A
(出所:RIZAPグループ決算説明資料)
買収した会社に全く統一感がありません。
無料誌のぱどを買収することがどのように本業とシナジーがあるのか、ジーンズメイトを買収することがどのように「自己投資産業グローバルNo.1ブランド」と関係あるのか、甚だ疑問です。一応、決算説明資料を見る限りRIZAPが子会社化した会社は経営改善により業績が改善するものと誇っていました。
一般に、M&Aを前面に掲げる企業にうまくいった企業が思い浮かびません。M&Aは目的ではなく手段であるはずです。
そして案の定2019年3月期には当期利益(損失)-19,423百万円の大赤字を計上します。そして、先述の通り、直近の2020年3月期決算でも-6,046百万円の当期利益(損失)を計上し、出血を続けています。湘南ベルマーレが買収されたのは2019年3月期で、その買収攻勢の末期に子会社化されました。「末期」というのは、この期から、ヤバイと思ったRIZAPは、出血を止めることと、現金化を目的に、これまで買収した会社を売り始めます。この結果が、2020年3月期の決算です。
 ここまで大赤字をブッこいてしまったRIZAPの状況をみてみたいと思います。
RIZAPグループの売上収益、現金保有、自己資本比率等
 
2016/3期
2017/3期
2018/3期
2019/3期
2020/3期
売上収益(百万円)
53,937
95,299
122,063
210,905
202,934
現金及び現金同等物(百万円)
10,483
24,643
43,630
42,245
27,047
自己資本比率(%)
19
17.8
16.2
23.5
14.1
現金が売上の何ヶ月分あるか(ヶ月分)
2.3
3.1
4.3
2.4
1.6
自己資本比率は前期の23.5%から14.1%へ低下しました。自己資本比率は結果的に業界ごとに一般的な水準が存在しますが、絶対的に必要な水準というのは特段定まっていません。また、RIZAPのようにこれだけいろんな業種の会社が混ざると業界平均との比較というのもやりにくいです。しかしながら、一般的な事業会社の水準として10%台前半は結構低い水準と言えるでしょう。また、今期も赤字を計上するようであれば10%を切ることもあり得ますが、その場合は赤に近い黄信号と言えるでしょう。なお、同業他社で上場しているルネサンスの2020年3月期末の自己資本比率は40.5%です。また、ルネサンスにおいて、「現金が売上の何ヶ月分あるかについては1.7ヶ月です。
実際、RIZAPの貸借対照表を見ても、あまりにいろんな業種がごっちゃになっていて、必要な運転資金が判断しにくいこともあり、手元の現金を中心に見ていくことにします。現金があれば債務超過になったとしても生きていけますので。

RIZAPグループの保有現金

連結貸借対照表の現金及び現金同等物を見ると、2018年3月期末が43,630百万円、2019年3月期末は42,245百万円、2020年3月期末は27,047百万円と減少しています。1年で約17,000百万円の現金が無くなりました。このペースで現金が減少すると、2年以内に現金は底を尽きます。
しかしながら、RIZAP自身もキャッシュ流出を食い止める努力をすると思いますので、現実的にはそれよりはもう少し時間があるでしょう。
RIZAPの現金は2019年3月末から2020年3月末まで、真水で17,019百万円減少しましたが、内訳は以下の通りです。
(単位:百万円)
2019/3期 2020/3期
営業活動によるキャッシュフロー        -10,429 13,920
投資活動によるキャッシュフロー     -7,708 -3,390
財務活動によるキャッシュフロー     18,684 -27,549
合計 547 -17,019

上表は2019年3月期から2020年3月期の比較ですが、2019年3月期は本業(営業活動によるキャッシュフロー)でお金は稼げなかったけれども財務活動でお金を工面し、現金残高はわずかに541百万円増えた(ほぼトントン)。2020年3月期は、項目上は本業でお金を稼いだが、財務活動で(返済をして)お金が減った。大まかにこのような構図です。

直近期の2020年3月期をもう少し細かくみると、当期は項目的に「本業(営業活動によるキャッシュフロー)。でお金を稼いだ」という形ですが、中身をみると、最大の比率を占めるのは減価償却です(14,314百万円)。このため、あくまでも項目の分類上そうなっただけで実際には事業によりキャッシュは稼げていません。そして、財務活動のキャッシュフローは長期借入金の返済による支出(-16,358百万円)、リース債務の返済による支出(-14,576百万円)となっており、長期借入れによる収入(1,474百万円)ということで、返済を余儀なくされる一方、借り換えができていません。このような状況をみると、銀行との借り入れの際に設定するような財務制限条項に抵触し、借入期間の期限を待たずに回収されてしまった可能性すらあるのではないかと思ってしまいます(「期限の利益」として後述します)。

継続企業の前提に関する疑義

と、思いながら「当社の対処すべき課題」と「事業等のリスク」の項目をサッと見るといわゆるヤバイ会社の有報に「あるある」の続企業の前提に関する疑義」の項目が設けてあり、そこには財務制限条項への抵触に関する記載を見つけました。
【対処すべき課題 ①持続的成長に向けた経営基盤の強化】
 当社グループは、2019年3月期において、過去1年以内にグループ入りした企業・事業を中心に経営再建が当初の見込みより遅れていること、在庫や不採算事業の減損等、構造改革関連費用を含む非経常的損失等を計上したことから、大きく損失を計上いたしました。そして、2020年3月期においても、主に消費税増税、暖冬、新型コロナウイルス感染拡大等の影響により、損失を計上しております。また、これにより金融機関との間で締結した金銭消費貸借契約における財務制限条項に抵触している状況にあります。これらの結果、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象等が存在する状況となっております。
 当社では、2019年3月期に開始した持続的成長に向けた経営基盤の強化のための構造改革施策を引き続き実施し、美容・ヘルスケアセグメントへの集中、グループ管理体制の強化、キャッシュ・フロー経営の強化を進めてまいります。また、新型コロナウイルス感染症についても、収益面では非対面事業の創出、費用面では在宅勤務常態化による本社家賃の低減等、対応を進めてまいります。
【事業等のリスク(3)財務に関するリスクについて ②継続企業の前提に関する重要事象について(抜粋)】
 当連結会計年度末における当社グループの総資産に占める有利子負債額(有利子負債依存度)は、主にIFRS16号の適用により、約56%となっております。
 また、当連結会計年度において、消費税増税、暖冬、新型コロナウイルス感染拡大等の影響により、2期連続となる営業損失及び多額の当期損失を計上しております。これにより、金融機関との間で締結した金銭消費貸借契約における財務制限条項に抵触している状況にあります。これらの結果、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象等が存在する状況となっております。
(中略)
 財務制限条項への抵触に関して、主な取引銀行からは、当社の事業計画を遂行していく限り、期限の利益喪失請求権の権利行使は行わないという方針について了承を得ております。具体的には、財務制限条項への抵触状況のみで判断するのではなく、当社の構造改革の一環として、短期的な収益改善が難しい事業や当初想定していたグループシナジーが見込めない事業の売却、コロナ危機克服に向けた当社グループ全体のコスト適正化、非対面事業等の新たな収益源の創出等を含めた当社グループ全体の事業計画の遂行状況を多面的・総合的に考慮する中で、当社への継続支援の具体的な内容や条件についての協議を行ってまいります。
 以上のことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
期限の利益というのは、借り入れをした側が約束した返済期限までお金を返さなくてよいということです。ここでわかるのは、RIZAPは銀行とは「財務制限条項に抵触した場合、即お金を返します」というルールで現在借り入れをしています。ちなみに財務制限条項は雲行きの怪しい会社が融資を受ける際に付されるケースが多いです。
連結財務諸表の注記に、その財務制限条項の具体的な内容についても開示されています。
【連結財務諸表の注記 (2) 財務制限条項】
 当社は、一部の借入に関して金融機関との間で締結した金銭消費貸借契約に財務制限条項が付されております。その内容の主なものは次のとおりであります。
① 各年度の決算期の末日および各四半期の末日における連結の財政状態計算書上の資本合計の金額を2018年3月決算期末日における連結の財政状態計算書上の資本合計の金額の80%以上に維持すること
② 各年度の決算期の末日および各四半期の末日時点における連結の損益計算書に示される営業損益(IFRSベース)の金額が損失とならないようにすること
 当連結会計年度末においては、13,411百万円の借入金について、これらの財務制限条項の一部に抵触いたしますが、主な取引銀行からは、当社の事業計画を遂行していく限り、期限の利益喪失請求権の権利行使は行わないという方針について了承を得ております。具体的には、財務制限条項への抵触状況のみで判断するのではなく、当社の構造改革の一環として、短期的な収益改善が難しい事業や当初想定していたグループシナジーが見込めない事業の売却、コロナ危機克服に向けた当社グループ全体のコスト適正化、非対面事業等の新たな収益源の創出などを含めた当社グループ全体の事業計画の遂行状況を多面的・総合的に考慮する中で、当社への継続支援の具体的な内容や条件についての協議を行なってまいります。
この財務制限条項について確認すると、①にも②にも抵触しています。
しかし、すでに財務制限条項に抵触しているのですが、事業計画を遂行する限りは期限の利益喪失として融資の回収は行わないことを銀行と握っているということです。裏を返せば、事業計画を遂行できない場合が問題です。

担保に入れられる関係会社株式

このような中で、有価証券報告書をパラパラっとみると、気になる記載がありました。
RIZAP単体の保有する関係会社株式ですが、2020年3月期はかなりの分が借入の担保に入っています。2019年3月期末が23,334百万円のうち7,491百万円が、2020年3月期が21,827百万円のうち16,582百万円が借入の担保に入っています。そもそも有報にこのような内容が開示される企業は多くないですが(そのような資金調達をする会社が多くない)、2020年3月期は実に保有する関係会社株式の75%以上が担保に入ってしまいました(2019年3月期末は32%)。私が考えていることはここまで読んでいただいた方と共通するのではないかと思いますが、要は湘南ベルマーレ株の保有を行うための子会社である、株式会社メルディアRIZAP 湘南スポーツパートナーズの株式も担保に入っている可能性がかなりあるのではないかということです。
銀行の立場とすると、関係会社株式の中でも現金化しやすい上場株式を優先的に担保に含めると思いますが、2020年3月期末となっては3/4もの関係会社株式が担保に入っているので、当該株式が担保に入っていてもおかしくないはずです。しかも、RIZAPは赤字の不振企業も多く買収してきたので、曲がりなりにも資産超過であり今は不振企業というわけではないの湘南ベルマーレ株を保有する会社の株であれば、担保に入れられることがあっても不思議ではありません。評価としては2,500〜4,000万円(資本金額101百万円×持分49.95×担保評価の掛け目で例えば0.5〜0.8)程度かなと思いますが、何千万円かでJ1の湘南ベルマーレが支配できるとあれば、手をあげるところは多いのではないでしょうか。

求められる「事業計画の遂行」

RIZAPは「当社の事業計画を遂行していく限り、期限の利益喪失請求権の権利行使は行わないという方針について了承を得て」いるそうですが、「事業計画の遂行」はしんどいのではないかと思っています。
事業計画の内容は以下の通りです。

 【事業等のリスク(3)財務に関するリスクについて ②継続企業の前提に関する重要事象について(抜粋)】

当社では、引き続き持続的成長に向けた経営基盤の強化のための構造改革施策を実施していくとともに、新型コロナウイルス感染症との共存を目指す「新常態」に対応していくため、非対面事業等の新たな収益源を創出してまいります。主力のRIZAPボディメイクにおいては、対個人・法人向けにオンラインサービスの提供を開始したほか、SNS等を利用したトレーニング動画の積極的な発信や、全ゲスト・トレーナーに無償で抗体検査を行っております。また、グループ横断的なコスト最適化や業務合理化、在宅勤務常態化による本社家賃の低減をはじめとする固定費の削減に注力し、収益力の向上を目指してまいります。加えて、構造改革の一環としての事業売却やグループ資金の活用等により事業活動に必要な資金を確保するための施策を講じており、当面の資金状況は安定して推移する見通しです。

上述の取り組みは、やればいいのではなく、返済に繋がることが必要であるはずです。返済条件は再設定されていると推察しますが、少しずつでも返済(最悪利払いのみ)という形で銀行にお金を納めなければなりません。現在はどこの企業も収益の創出が難しい状況のなか、主力のジムは厳しい。しかも多くのお荷物の子会社を抱えるRIZAPが実のある事業計画の遂行ができるかは不透明な気がします。このため、期限の利益喪失が発生し、担保処分のトリガーが引かれる可能性は否定できないと思います。生殺与奪はメインバンクのさじ加減次第です。

「事業計画の遂行」ができない場合は・・・

現在のRIZAPですが、普通に考えれば、自力による再建だけでなく、RIZAPに対する新規スポンサー探し(身売り)が両睨みで行われているのではないでしょうか。その中で、前者にしろ、後者にしろ担保処分をするかしないか。また、担保処分の場合でも、処分をする担保と、残すものの仕分けが行われることになるのではと思います。これは銀行が資金回収の可能性を考えながらシナリオを作っていくのだと推察します。
なお、湘南ベルマーレ株式を保有する株式会社メルディアRIZAP 湘南スポーツパートナーズ株式が処分される場合ですが、銀行は、不動産などの担保と同様、関係会社株式についても売却先を見つけ現金化し、返済に充当することになるでしょう。タブロイド紙などでこのようなニュースが報じられると、グループがバラバラになるとか、ひどい書かれようをされることもありますが、湘南ベルマーレ株式が、万が一現金化されるようなことがあった場合については、恐らく三栄建築設計に引受先としてまず声がかかることになり、引き受けることになるのではと私は思っています。銀行もレピュテーションを気にしますので、基本的に波風立てない選択肢を第一に選ぶでしょう(それがうまくいかない場合はそうでない選択肢を選ぶこともやはりあります)。
但し、もともと三栄建築設計は一度は湘南ベルマーレの親会社になったものの手放した会社です。RIZAPと分け合った、株式会社メルディアRIZAP 湘南スポーツパートナーズの株式も三栄保有株は無議決権株式であり、基本的な考え方として、主体となってにサッカークラブを運営しないとの経営判断がなされたものだと思われます。
このため、中期的、長期的にはRIZAPに代わるふさわしい株主が現れた場合、改めてそこに経営を委ねるのではないかと思っています。
 
ちょっと先の先まで想像にふけってみました。

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