欧州サッカーもう一つの激震。経営危機ボルドーが裁判所管理下へ

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裁判所管理下に

欧州サッカーでは、欧州スーパーリーグ構想が大きな話題となっていましたが、同時進行でリーグ・アンのボルドーの経営危機が話題になっています。
2021年4月29日付ブルームバーグ記事によると、2018年から経営権を持つアメリカのファンドであるキングストリート・キャピタルがチームへの投資をやめることを決定しました。クラブは新しいオーナーを探しており、現在、4/19の週にクラブは裁判所の管理下に入りました。コロナの影響で5大リーグで欧州で最初に裁判所管理下に入ったクラブとなります。ボルドーは1881年に設立。6度のタイトルを獲得し、ジダンが所属したことでも知られています。
クラブの承継希望者は、1億ユーロ(約130億円)の新規投資が求められています。これは、債務返済の為の資金とこの先2年分の損失だそうです。
ボルドーの社長であるフレデリック・ロングぺ氏は、維持可能な解決策が見つかるまでを期限とし、クラブを市の商業裁判所の管理下に置くこととしました。裁判所はアドバイザーとしてロスチャイルドを指名したと言われています。
なお、ボルドーの苦境にシャトーラトゥールというブドウ園を持ち、ケリング社オーナーであるピノー氏が気にかけているそうです。彼は5,000億円の資産を持つと言われ、その資力はあるものの、すでに同じリーグ・アンのレンヌを保有しています。このため、ボルドーの他のブドウ園のオーナー支援を促していると報じられています。
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放映権料不払い

リーグ・アンのチームはご多分に漏れず、コロナ禍による無観客試合により、財政的なダメージを受けています。これに加え、フランス国内でのリーグ・アンの放映権を獲得したメディアプロ社からの放映権支払がなされず、大問題になりました。
メディアプロ社はスペインのバルセロナに本拠を置き2020~2024年のリーグアン(1部)とリーグドゥ(2部)放映権を落札しました。しかしながら、コロナ禍などの影響で経営難に陥り、2020年10月5日に予定されていたフランスのプロフットボールリーグ機構(LFP)に対する1年目の2回目の172百万ユーロ(約224億円)の支払で躓いてしまいました。
メディアプロは、2018年2月から発行株式の53.5%を中国のオリエント・ホンタイ・キャピタルという投資ファンドが保有しています。
結局、メディアプロ社とLFPとの契約を解消し、フランス大手メディアCANAL+が残りの期間の放映権についての契約を締結しました。
この結果、当初は年間11.5億ユーロ(約1,495億円)から670百万ユーロ(約871億円)となるそうです。
なお、メディアプロはセリエAの入札にも参加しましたが、財務的な裏付けを示せず、落札者として除外されたそうです。
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雑感

裁判所について

まず、裁判所の話からさせて頂きます。
ボルドーの社長が裁判所に管理を申し出たという経緯ですが、借金が返せなくなった状況の中、チームが活動できるよう抵当権及びその他担保の行使、並びに差し押さえを免れる目的だと思います。
生きているクラブの活動は生かしつつ、借金の棒引きや承継などの整理を行い、返せる水準の現実的な返済をクラブは行う、ということが想定されているのだと思います。日本の一般論で申しますとそんな感じですが、同様でしょう。

放映権依存のビジネス拡大も無理がきている

放映権の値上げにより、これまで欧州のサッカービジネスは規模を拡大してきました。しかしながら、とうとうその限界が見えて来たのでしょう。
ヨーロッパトップ10クラブの営業収入の内訳
先日の投稿「デロイトUKが考えるフットボールビジネス 2020/21シーズンとその先」でも投稿させて頂きましたが、放映権を柱に成長してきたクラブたちは、デジタルコンテンツの収益化など新しい収益源の開拓に取り組んできました。欧州スーパーリーグもその手段の一つです。ビッグクラブは、デジタルコンテンツを国内外に販売することを成長戦略の一つとして収益化を図っています。
一方で、ビッグクラブでないクラブがその手段を取ることは現実的ではなく、かといって効果的な方策が見つかっていない現状では、ビッグクラブとそうでないクラブの間での二極化はますます強まりそうです。
ちなみにレ・プログレ紙によると、4月の初旬からサンテティエンヌも売りに出されているようです

チャイナマネーの引き潮が震源に

チャイナマネーによる荒っぽい経営と撤退・縮小の影響はまだ続きそうです。
理由の第一は、中国 の対外投資管理強化、もう一つは欧米諸国における外国企業に対する投資規制強化の影響であると思われます。原油価格も低迷しており、中東、ロシア勢にかつての勢いがありません。今後、コロナ禍でも相対的に稼いでいるアメリカ資本が主流になるのかなと考えています。偏った見方と言われるのを覚悟で申し上げると、オイルマネーだと「じゃぶじゃぶ」、中国だと「乗っ取り」のイメージがありますが、アメリカ資本が入ってくると「カネ」や「利益」の匂いを感じます(実際、投資とはそういうものですから悪い意味を持って文字にしていません)。今回のボルドーのような、イギリスではなくリーグ・アン、かつビッグクラブでないクラブまでアメリカ資本が入っていることを考慮すると、アメリカのショービジネス的な潮流が今後さらに強まりそうな気がします。

日本もダゾーンのもしもに備えなければならない

日本はコロナ禍を受け、DAZNとの契約を見直しました。減額プラス契約期間延長をしています。
仮にDAZNの契約が無くなった時の備えが必要とされます。仮にスカパーであればフランスと同じように放映権料の大幅な減額が起きそうです。リーグや文化の資源の厚みだと考えますが、欧米と比べ選択肢が少ないところが辛いです。もしくは、DAZNの日本事業に一部出資している電通によるウルトラCを期待することでしょうか。

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