水戸ホーリーホック:2023年1月期決算速報〜堅実な決算〜

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堅実な決算

水戸ホーリーホックの2022シーズンの決算です。堅実な決算でした。
クラブHPにて決算概要を開示しており、その内容を以下の通りレビューしていきます。
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営業収入(売上高)

営業収入は1,024百万円と前期比24%増加し、初めての10億円越えを達成しました。
営業収入の内訳(単位:百万円)
2022年1月期 2023年1月期 前期比
営業収入 824 1,024 24%
広告料収入 313 507 62%
入場料収入 78 90 15%
Jリーグ配分金 158 161 2%
アカデミー関連収入 29 24 -17%
物販収入 80 78 -3%
その他収入 166 164 -1%
(出所:クラブHPより当ブログ作成)
増収の要因は広告料収入が507百万円と前期比62%増加したことによるものです。この507百万円はコロナ前も含めて過去最高になります。
入場料収入は90百万円と前期比15%増加となりました。コロナ前の2020年1月期には114百万円を計上していますので、コロナ前の8割弱程度の水準です。先日決算についてコメントをまとめた鳥栖の方でもコロナ前の7割5分弱程度でしたので、こんなものなのでしょう。
Jリーグ配分金は161百万円と前期比2%増加、物販収入は78百万円と前期比3%減少、その他の収入は前期比164百万円と1%減少と前期比で概ねフラットでした。
当期決算概要では売上関連について以下のコメントを記載しています。
2022年もコロナ禍で引き続き苦しい状況でしたが、新規パートナー契約・既存パートナー増額により広告料収入が過去最高となり、売上高も10億2千万円で過去最高売上高を更新、初めて10億円を超えることができました。入場料収入や物品販売収入、ファンクラブ収入は、予想よりも入場者が戻ってこなかった影響が大きく、予算を達成することができませんでしたが、前述した広告料収入が5億円を超え、またクラウドファンディングでも多くの皆様にご支援をいただき、売上高全体で前期比約2億円増、予算比でも約5千万円増となりました。
売上に関しては予算費で50百万円超過したとのこと。堅実な予実運営のもと、クラブは運営できているのではないかと思います。余談になりますが、鳥栖はこれが欠けていたためクラブは大混乱に陥りました。
もう一つのポイントとして、クラブとしては入場者が大きなテーマとなっていることがわかります。これについては、クラブの今期の取り組みとして後述します。
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3ヵ年売上目標

なお、決算概要において水戸ホーリーホックは以下の通り3ヵ年の売上目標を開示しています。
今の水準を見ますと頑張れば達成できそうな、いい感じの目標設定だと思います。

(出所:クラブHP)
また、上述の3ヵ年のクラブの目標もありますが、クラブはJ2の平均売上高を意識しています。2021年1月期の決算概要においては、2019年度J2平均の16億円に追いつくことを目標としていました。
かつては経営危機に陥ったクラブにおいてこうした堅実かつ前向きな運営がなされるようになったことは喜ばしいことである一方、J2オリジナル10としてはもっとクラブとしての存在感を示すような規模に育っていてもいいかなという気持ちもあります。

営業費用

営業費用全体は1,019百万円となりました。営業収入とほぼ同じ金額だけ費用を投じています。
支出全体及び利益面については以下のようにコメントしています。
支出面では、コロナ禍明けに一気に加速できるような組織体制を築くべく、業務委託を増員したため、全体で予算比約5千万円増となりましたが、営業利益は約5百万円、当期純利益は約6百万円と、4期ぶりの黒字を計上することができました。
こちらもきちんとコストのコントロールができていることが伺えます。
なお、費用の個別の項目は下表の通りです。
営業費用の内訳(単位:百万円)
2022年1月期 2023年1月期 前期比
営業費用 873 1,019 17%
チーム人件費 351 396 13%
試合関連経費 87 109 25%
トップチーム運営経費 99 106 7%
アカデミーチーム関連経費 21 22 5%
物販関連費 73 74 1%
販売管理費及び一般管理費 242 312 29%
(出所:クラブHPより当ブログ作成)
最も比率が高いチーム人件費は396百万円と前期比13%増加しました。
下表は人件費とチームのリーグの成績の推移です。
水戸ホーリーホックのチーム人件費と順位の推移
(出所:クラブホームページ等から当ブログ作成)
2019年1月期までは人件費の増加と順位の上昇が結びついているのですが、ここ3シーズンは人件費の増加が成績に結びついていません。とはいえ2021シーズンの経営成績でいえば売上高が下から6番目の規模だったことを考えれば健闘しているのではないでしょうか。

当期利益と自己資本比率

前述の通り、当期の水戸ホーリーホックは営業利益は約5百万円、当期純利益は約6百万円と、4期ぶりの黒字を計上しました。
この結果、自己資本は前期末159百万円から165百万円となり、自己資本比率は前期の30%から36%となりました。
現時点で数字の揃っている前期のJ2の自己資本比率平均は22%でしたので、悪くない水準です(当期は黒字を出すクラブが増えると思いますので、その前の期の平均である22%より改善していることが見込まれます)。
かつて財務に大変苦しんだクラブとは思えない立ち位置です。

今期(2024年1月期)の予算と現状について

水戸ホーリーホックは、今走っている2024年1月期の総売上の目標を1,100百万円としています。また、事業KGI(キーゴールインディケーター)として定める11の項目について、今期は以下の通り数値を更新して目標設定しています(カッコ内は実績)。
①広告料収入:600百万円(90.4%)、②入場料収入:146百万円(30.4%)、③入場者平均:4,500名(78.6%)、④有料入場者割合:80%(96.9%)、⑤シーズンシート販売数:1,150席(83.9%)、⑥グッズ売上:90百万円(29.1%)、⑦ユニフォーム販売枚数:2,000枚(55.3%)、⑧ケーズデンキ キッズパスポート登録数:2,500名(24.0%)、⑨サポーターズクラブ会員数:2,650名(87.2%)、⑩スクール会員数:600名(82.8%)、⑪JリーグID登録者数:33,000ID(86.5%)。
なお、当期決算概要では以下のコメントも付されています。
限られたリソースで最大限の効果を出すべく、今期は「関係性」「収益性」「独自性」の3つを大事にする中で、何よりも「集客」に力を入れることとしております。今期は平均4,500人を目指し、集客重点試合を年間数試合設定、告知方法を工夫しながら、コア層だけでなくコロナ前までご来場いただいていた方々や新規の方々へのアプローチを強化し、ファンベースの底上げを図ります。部署横断的な集客重点試合への関わりは勿論のこと、昨年から拡大した自分たちのお膝元であるホームタウンでの活動を強化することで、地域の皆様に知っていただくだけでなく、応援いただき、試合に来場される方を増やす、本質的な活動をしてまいります。併せて、招待比率にもこだわり、目先の集客に寄せた招待券のバラマキは行わず、チケットを購入してご来場いただけるよう、クラブやスタジアム、試合の価値を高めてまいります。
クラブは、コメントの通り集客を注力する課題として明確に認識しています。

新スタジアム構想・アカデミー拠点整備

新スタジアム構想については、2022年1月期決算における説明では、コンセプトの策定と建設用ちの検討を行っているという説明がありましたが、当期決算概要においては以下の説明の通り大まかなスケジュールを示されています。
新スタジアム構想については、「コンセプト」「設計」「建設」「ファイナンス」と4つの軸に分けて、スタジアム建設に長けた有識者の皆様と協議を重ね、昨年10月に、コンセプトと今後の進め方について進捗を発表させていただきました。「クラブの取り組みを人、街の成長につなげる」を軸に、スポーツエンターテインメント/ウェルビーイング/教育の3つをコンセプトに計画を進めております。候補地につきましては、ホームタウン15市町村の中から複数の候補地に絞り込み、Jリーグが掲げる理想のスタジアム要件を充足する場所として検討を進めております。新スタジアム建設により、来場を増やしホームタウンの消費につなげる定量目標に加え、ホームタウンのウェルビーイングにつながる定性目標も追求してまいります。
【新スタジアム建設に向けた今後のスケジュール(予定)】
・2023年 計画を具体化し、行政との協議推進
・2024年 計画予定地の発表
・2025年 設計
・2026年 着工
・2028年 竣工
2022年1月期の決算概要では、アカデミー拠点整備に関して、2022年秋の着工、2023年夏の竣工を目指していましたが、少し遅れている模様です。現状について、当期決算概要において以下の通り説明がありました。
新しいアカデミー拠点整備事業については、水戸市並びに水戸市サッカー協会とともに、企業版ふるさと納税を活用した資金調達での建設を予定しており、賃借する用地、工事会社の選定、金額の算出、設計・開発等も進んでおります。当初の予定より進捗が遅れておりますが、今年度中の工事着工、来春の竣工を目指し、計画を進めてまいります。
堅実な経営による、クラブの更なる発展を期待しています。

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