コロナ禍からの回復はいかに
2022シーズンの各クラブの財務諸表が7月末にJリーグから開示されました。
今シーズンの決算も大きなポイントはコロナからの回復です。Jリーグ全体の営業収入はコロナ前の2019年度を上回っており、137十億円(1370億円のことです。読みにくくてすみません)となりました。入場料収入はまだ2019年度の水準まで戻りきってはいないものの、スポンサー収入、物販収入、アカデミー関連収入等が増加しました。
1クラブあたりの営業収益平均で比較すると、2019年度は2,409百万円、2022年度は2,372百万円と、2019年度比98.5%の水準でした。クラブの稼ぐ力は概ねコロナ前の水準に戻ったといえるでしょう。
リーグ全体 営業収益(売上高)推移
(出所:Jリーグ)
営業収益ランキング
営業収益ランキング(単位:百万円)
2022シーズンの営業収益1位は浦和です。前期比で18%増加し8,127百万円を計上しました。浦和のこれまでの最大の営業収益は2020年1月期の8,218百万円ですので、ほぼコロナ前の水準まで戻りました。このJリーグトップの81億円の営業収益がなんぼのものかという肌感覚については、弊ブログで以前取り扱っていますので、参考までにご参照ください(「欧州5大リーグとJリーグ、収益構造を比較する」、「Jリーグは健闘:欧州中堅リーグとの収益比較」)但し、為替の影響で欧米クラブとの差は現在もっと開いているはずです。2位は昨年1位の川崎Fです。前期とほぼ同金額の営業収益となりました。入場料(前期比114%増加)やスポンサー収入(前期比12%増加)が増えて好調なものの、Jリーグ配分金(前期比24%減少)、物販収入(前期比11%減少)、その他収入(前期比38%減少)が減少したことなどにより相殺されてしまいました。コロナがひと段落して客足が戻ったものの、優勝を逃したこと及び前期の移籍金収入による営業収益押上げがなくなったことによるものです。
3位が横浜FMです。営業収益は前期比24%増加しました。スポンサー収入が前期比15%減少したものの、入場料収入が同56%増加したことが主因です。
昨年3位だった鹿島は5位に後退しています。鹿島はJリーグ配分金(前期比25%)とその他収入(前期比13%減少)が減少したことが影響しました。
営業収益の割に成績の振るわなかったクラブも目立ちます。営業収益4位の神戸、G大阪、同9位の清水、同20位の大宮、同21位の千葉、同33位の松本、同38位の北九州などは、現場の奮起が求められるでしょう。
営業収益の規模のわりにリーグで健闘しているのが鳥栖です。営業収益が18位とJ1下位であるにもかかわらず、リーグでは11位で着地しました。湘南については2,477百万円とJ2並の営業収益に見えますが、別枠で411百万円の関連法人の営業収益がありますので、実質は鳥栖や福岡などと同じ規模の営業収益を稼いでいます。
昨年3位だった鹿島は5位に後退しています。鹿島はJリーグ配分金(前期比25%)とその他収入(前期比13%減少)が減少したことが影響しました。
営業収益の割に成績の振るわなかったクラブも目立ちます。営業収益4位の神戸、G大阪、同9位の清水、同20位の大宮、同21位の千葉、同33位の松本、同38位の北九州などは、現場の奮起が求められるでしょう。
営業収益の規模のわりにリーグで健闘しているのが鳥栖です。営業収益が18位とJ1下位であるにもかかわらず、リーグでは11位で着地しました。湘南については2,477百万円とJ2並の営業収益に見えますが、別枠で411百万円の関連法人の営業収益がありますので、実質は鳥栖や福岡などと同じ規模の営業収益を稼いでいます。
これを踏まえると、現時点でJ1でやっていくには目安として30億円くらいは営業収益が欲しいです。また、営業収益の規模に関しては横浜FCもJ2とJ1を行ったり来たりしながら、クラブの収益規模をJ1下位レベルに上げてきています。かつてはピークを過ぎた元代表選手を安くなんとかやりくりしてきたのが、脂の乗った選手の獲得や育成選手の活用などが機能するようになり、クラブとしての力をジワジワつけているのを感じています。
ランキング下位は全体としてやはりJ3クラブの名前が並びます。群馬や岩手がJ3並の営業収益のサイズのわりにJ2リーグで健闘していることがわかります。
ランキング下位は全体としてやはりJ3クラブの名前が並びます。群馬や岩手がJ3並の営業収益のサイズのわりにJ2リーグで健闘していることがわかります。
営業収益増加率ランキング
営業収益増加率のランキングも作成しました。
前期比149%増加の琉球は、営業収益のうち「その他収入」の項目が前期比67%増加の1,079百万円を得たことが主因です。なお、「その他収入」とは、①賞金、②移籍金収入、③サプライヤー契約収入、④ファンクラブ・後援会収入、⑤イベント出演料、⑥その他等です。
その他上位には、熊本、京都、いわき、福岡など基本的に昇格したクラブや好成績のクラブの名前が並びます。
7位の鳥取についてはこの例には当てはまりませんが、スポンサー収入(前期比25%増加)、入場料収入(同33%増加)、および物販収入(同208%増加)したことが大きな要因で、営業サイドの頑張りが見えます。
下位については、大分、大宮、徳島などは内訳の収入が満遍なく落ちており、コロナ禍からの回復は全てのクラブで継続しているわけではないことを感じさせられます。
最下位のYS横浜については入場料収入(前期比75%増加)とアカデミー関連収入(同14%増加)が増加したものの、スポンサー収入(前期比35%減少)とその他収入(同91%減少)が減少したことによるものです。どうもこのクラブの財務諸表からは不安定な感覚を拭えません。
前期比149%増加の琉球は、営業収益のうち「その他収入」の項目が前期比67%増加の1,079百万円を得たことが主因です。なお、「その他収入」とは、①賞金、②移籍金収入、③サプライヤー契約収入、④ファンクラブ・後援会収入、⑤イベント出演料、⑥その他等です。
その他上位には、熊本、京都、いわき、福岡など基本的に昇格したクラブや好成績のクラブの名前が並びます。
7位の鳥取についてはこの例には当てはまりませんが、スポンサー収入(前期比25%増加)、入場料収入(同33%増加)、および物販収入(同208%増加)したことが大きな要因で、営業サイドの頑張りが見えます。
下位については、大分、大宮、徳島などは内訳の収入が満遍なく落ちており、コロナ禍からの回復は全てのクラブで継続しているわけではないことを感じさせられます。
最下位のYS横浜については入場料収入(前期比75%増加)とアカデミー関連収入(同14%増加)が増加したものの、スポンサー収入(前期比35%減少)とその他収入(同91%減少)が減少したことによるものです。どうもこのクラブの財務諸表からは不安定な感覚を拭えません。
スポンサー収入ランキング
スポンサー収入ランキング(単位:百万円)
スポンサー収入は、2022シーズンにおいてJ1では営業収益のうち、46.9%、J2では48.9%、J3では53.6%を占め、最も大きな割合を占める収入です。
ランキングの1位は浦和です。2位は営業収益全体では6位の名古屋でした。名古屋の営業収益に占めるスポンサー収益の割合は61%でJ1平均の46.9%を大きく上回ります。このあたりからトヨタ関連の強力な支援を感じます。繰り返しになりますが、トヨタがついているのでACLに安定的に進出できるようになればまだまだスポンサー収入は引き出せそうです。
次に注目したいのは、当シーズンにJ2降格が決定したものの、5位のスポンサー収入を稼ぎ出した清水です。親会社である鈴与グループを筆頭にスポンサー料を獲得しているものと推察していますが、J2としては好調な営業収益水準である一方、経営陣交代や頻繁な監督の交代し降格してしまい、財務数値もその経営の混乱を示唆しています。
その他ではJ3ながら28位につけた松本と32位につけた今治が目立ちます。松本についてはJ2レベルの収入を獲得しながらJ3から昇格できない状況に関係者の大きなフラストレーションが発生しているものと推察します。今治については、クラブのサイトを確認するとユニ・チャーム、デロイト、三菱商事などJ3レベルを超越したスポンサー名が並んでいます。岡田会長を初めとしたブランドと経営力を感じます。53位のFC琉球はJ2レベルとしてはスポンサー収入が少ない水準ですが、まだまだポテンシャルはありそうです。
スポンサー収入増加率ランキング
スポンサー収入の増減については、各クラブの事情が反映されているように見えます。
1位は水戸でした。水戸は近年の好成績が寄与しているのか、増加率のトップとなりました。
鳥栖は前社長が獲得してきた大スポンサー離脱の穴埋め及び損益構造の転換、並びにかつての債務超過解消に向け、収益の増加と費用の圧縮の一環として順調な歩みをたどっているように見えます。
福岡や福島はリーグ戦での好成績を残したことがスポンサー収入の増加に寄与したことが推察されます。
一方、減少率の高いクラブについては、松本、徳島、岩手、大宮、YS横浜、東京Vなど降格や成績不振のクラブが目立ちます。コロナ禍を除いて年々各カテゴリの営業収益の額が上昇する中、各クラブにおいて収益の柱となるスポンサー収入が減少するのは厳しいものがあります。マイナス圏にあるチームには、磐田、琉球、岩手など降格組が目を引きます。近年成績不振の大宮も同じような理由でしょう。そして、東京Vの41%減少の理由は何なのでしょうか・・・。
今回はここまでにして、次回も他の項目を取り上げていきます。
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